ども、ミスター鳥取こと岡田達也です。

 

 

 

母・秀子さんの葬儀の翌日のこと。

 

良く言えば

「年老いた父親一人にやらせるのはかわいそうだなぁ」

という理由で

本音をさらせば

「この人、放っておいたら絶対に何もやらないだろう」

という確信で

僕は父・隆夫さんを無理やり引きずり回し

市役所やら、年金事務所やら、郵便局を廻った。

必要なものが多すぎてなかなか終わる気配はなかったが

それでも秀子さんの生きていた証を一つずつ片付けていった。

 

夕方。

「晩ごはん、どうする?」

父が聞いてきた。

 

このセリフは隆夫さんの常套句だ。

朝ごはんを食べた後、昼ご飯を食べた後にでも口にする。

「食べた直後に晩ごはんの話?」と、母はいつも呆れていた。

たぶん隆夫さんは

ミサイルのことでも、貴乃花親方のことでも、バカ息子のことでもなく

いつだって晩ごはんのことが最優先の心配事項なのだ。

 

母が亡くなって3日目だぞ。

「ちょっと食欲が無くて……」

身内を失ったばかりなら、そんな人だって多いだろう。

ほんの少しだけ隆夫さんにもそんなセリフを期待してみたが、この人は大丈夫だった。

ま、ある意味、これくらいの方が安心ではある。

 

「どこかに食べに行く?家で何か作ろうか?でも、今から買い物してたら遅くなるかも」

 

「実はちょっと行きたいお店があってな」

 

「どこ?」

 

「『吉鳥』っていう焼き鳥屋さん」

 

「美味しいの?」

 

「いや、行ったことはないだが。でも、流行っとるらしいで」

 

「どこにあるの?」

 

「『なつめ』の跡地」

 

「……」

 

僕は言葉を無くした。

 

 

時間があればこちらを読んでいただきたい。

2013年12月3日の日記

『なつめ』

https://ameblo.jp/okada-tatsuya/entry-11717297852.html

 

早い話、『なつめ』とは

その昔、競馬のノミ行為をやっている喫茶店だった。

オマケに2階は雀荘。

もちろん隆夫さんはその両方にお世話になっていた人だ。

 

「どうしてもそこに行ってみたくてな」

 

お母さん、バカ亭主とバカ息子をお許しください。

僕たちはお店に向かった。

 

 

 

つづく