ども、ニラの値段が下がってきたことがうれしい岡田達也です。
冒頭から謝っておく。
昨日に引き続き、我が父・隆夫さん(土曜日に89歳を迎える)の話だ。
今「昨日に引き続き」と書いたが、ここのところ登場回数が多い気がする。
私が生まれてからもう56年の付き合いになる。
が、未だに驚かされるのだから、親子といえどもまだまだ油断できない。
それぐらい私の心を揺さぶってくるキャラなのだ。
さて、今から書く昨日の話を読んでいただこう。
*
現在デイサービスを利用している隆夫さん
週に2日、我が家にいらっしゃる理学療法士さんと一緒に、40分間のリハビリをやっている。
内容はそのときどきだが、杖をついて歩いたり、自転車こぎしたり、ストレッチしたり。
先週の土曜日
担当のYさんがいらした。
まず最初に脈拍を測りながらYさんが言った。
「いつもよりちょっと脈がはやいですね」
「そうですか」
続いて聴診器をあてながら
「心音も暴れ気味です」
「そうですか、暴れてますか」
「もしかして、私が来る前に何か運動をされてましたか?」
「風呂に入ってました」
「あぁ、なるほど。どれくらい?」
「20分くらい浸かってますかね」
「長湯ですね」
「いつもゆっくり入ります」
「脈がはやいのも、心音が暴れ気味なのも、おそらくそれが原因ですね」
「はぁ」
「今日は動くリハビリはやめておきましょうね」
「?」
「今の状態で体を動かすと、岡田さんの場合100%呼吸の乱れに繋がりますし、脈拍もさらに上昇します」
「はぁ」
「なので今日はソファに横になってもらって、私が脚を動かしたりしますので。軽めのストレッチにしておきましょう」
「はいっ!」
……気のせいだろうか?
そのとき、隆夫さんがほくそ笑んだように見えた。
*
昨日
もう一人の理学療法士Kさんが我が家にやってきた。
Kさんが来る前に、隆夫さんはしっかり風呂に入っていた。
いつもより長めに。
「じゃ、岡田さん、脈を測りましょう」
「はいはい、お願いします」
「……」
「あ、そうだ! 私ね、さっきまで風呂に入っておったんですよ!」
「そうですか」
「長い時間、浸かっておりました!」
「そうですか」
「だから脈がはやいかもしれません!」
「あぁ、たしかに。いつもよりはやいかも」
「Yさんに言われたんですが、お風呂に入ると脈がはやくなるんですよね?」
「そうですね」
「心臓もバクバクしますしね!」
「えぇ、血流が良くなりますから」
「私、さっき風呂に入ったばかりでして!」
「はぁ」
「ついさっきです!」
「はぁ」
「やっぱり脈がはやいでしょ?」
「そうですね」
「さっきまで入ってましたからね!」
ここまで読み進めて、あなたはどう思うだろう?
もちろん、みなさんはその場にいたわけじゃない。
オマケに私の拙い文章だけでは想像力が働かないとは思う。
私は
少なくとも私は
こんなふうに思ったのだ
「……クソじじぃ、土曜日のことがあったから、わざとこのタイミングで風呂に入りやがったな」と。
もちろん、リハビリを楽な方向に進めるための作戦として。
この人、それくらいの知能はある。
「達也さん、ひどい。自分の親のことをそんなふうにしか見れないんですか?」
と思った全国3千人の中の隆夫ファンのあなた
ハッキリ申し上げる。
「あなたの目は節穴だ」
*
「そうですね。確かにいつもより脈がはやいですし、心音も安定していません」
「そうでしょ!」
「ですが、多少の負荷も必要なので、少し時間を置いてから歩くことにしましょう」
「……え?」
「楽ばかりしていたら良くなりませんから」
「……はぁ」
このときの心底ガッカリした隆夫さんの表情は最高だった。
89歳にもなって、まだまだサボることに執着する男
それが我が父親の真の姿だ。
良い子のみなさんはけっしてマネしないように。
今日も負荷をかけていきましょう。
では、また。
追伸
オンライントークショー『東京砂漠』
次回は5月19日(日)19時スタートです!