屋上への“穴”
俺達の小学校は三階建てであった。
屋上には出られなかった(代わりに2階に大きな中庭があった) 。
三階の端に、屋上に通じる“穴”があったが、それは天井をくり貫かれて設置されていて、穴の横には鉄製のハシゴのような枠があったが、とても高く小学生にはとても届かない高さだった。
つまり、『生徒は立ち入り禁止』だった。
鉄枠は、点検か、避難時用だったのだろう。
それがいつも不思議だったのと、まだ見ぬ屋上の光景、さらに流行っていたドラゴンボールの“神殿”っぽくて、俺は(…いつか屋上を見てみたい)と思っていた。
そんなある日。
その屋上への穴の横に“折り畳みハシゴ”が置いてあった事がある。
点検中だったのか、何かあったのか。
たまたまそれを見つけた俺達(俺+“川ちゃん”+“ピエール”+etc←覚えてない… )が、「今、屋上行けるチャンスでは?」ということになり、俺が折り畳みハシゴを使い、穴を登る事になった。
こんな“後から叱られそうな事”は回避する性格だったが、俺は屋上への興味が抑えられなかったのだろう。
俺は、ハシゴを穴の縁に引っかけ、鉄枠を掴んだ。かなりドキドキした。
穴の奥には鉄の蓋があったが、鍵が外されていた。やはり点検中か何かだったのだろう。
俺はそこから顔だけを出してみた。潜水艦のフタ(載った事ないが…)を頭で押した。念願の屋上だ!
…そこは、殺風景な“場所”だった
排水用(?)や排煙用のパイプが通り、奥には電気設備らしきものがあった。金網がなかった。貯水タンクも見えた。
そこはひどく寂しく映った。人気も無い。テレビなんかにある『溜まり場』ではなかった…。
(…なーんだ)と俺は失望しつつ、ハシゴを降りた。その時、屋上を見たのは俺と川ちゃんだけだった。
あれから屋上へ穴が開いた事はなかった(はずだ)
何で、あの時は開いていたのか…。別におかしな事件はなかった、と思う。誰か屋上に出た?
かまいたちの“荒野”
現在、『美薗中央公園』になっている場所は俺達が子供の頃、まだ荒れた野原でそこには遠州鉄道の電車用の資材が置かれ、雑木林やあちこちで公園工場をしていて、真ん中が空いていた。
その真ん中で『自転車レース』(#49 狂犬マコト)などをした。

当時は荒野というイメージ。深い草むらがあちこちにあった。
その“荒野”の北側に道を隔てて、ミッチーの自宅がある住宅地があり、南には中学校があった(俺の出身中学ではない)
荒野には数本の通り道があり、数軒の民家もあった。“たー君”、“マーちん”はここに住んでいた。
ある日、俺がミッチーの近所で二人で遊んでいると、彼の従兄弟である“パン太”(あだ名)がこちらに飛んできた。
「母さんが大変だ!」と慌てていた。
ミッチーとパン太の自宅は近い。
俺達が彼の家の庭に向かうと、パン太の母親が自転車を停めて、何故かおののいている。
自転車(ママチャリ)の後輪にロープのようなものが、絡まっていた。
よく見ると、それは蛇🐍だった…。
かなり長い蛇が自転車の後輪に挟まり、ぐちゃぐちゃになり死んでいた。身体の皮が削げ落ちている凄惨な死体だった…。
パン太の母親によれば、買い物の帰り、“荒野”を自転車で横断していたところ、後輪が重くなり、自宅で降りて見てみたら、巨大な蛇🐍が絶命していた、という事だった。
家にいたパン太はそれを見て、慌てて俺達に報告に来たらしい。
巨大生物好きなミッチーは大興奮し、俺は蛇の生々しく、凄惨な死に方に恐くなりながらも、パン太の母親が、その蛇の亡骸を後輪から引きずり出し、道の外に捨てたのを覚えている。
…とここまでならば、単なる『蛇の死体を見た』だけの話だろう。
だが、この話には続きがある(…と俺は思っている)
それから数年後、ある日の校内でパン太が太ももに包帯を巻いて歩いていたのを見た。怪我らしい。
パン太はミッチーの従兄弟だが、俺とは仲良くなく、あまり遊ばなかった。親しくはならなかった。代わりに彼の兄貴“シンタロウさん”(仮名)には優しくしてもらった記憶がある。
そして、中学になり、理科の授業で『真空』の話を聞いた。空気と空気がぶつかると希に空気の無い“真空”が生まれ、それはあらゆるものを切ってしまう…。
まるで、アニメや漫画、ゲームの話だが、実際にあり、それを昔の人は“かまいたち”(鎌鼬)という化け物だと、思っていたと、先生が説明し、さらには「…誰とは言わないが、別のクラスでその“かまいたち”で太ももを切られたっていう子がいたぞ」と付け加えた。
俺はすぐにパン太の事を思い出した。
彼とはクラスが違っていて、小学生以上に交流が途絶えていた。
俺は確かめたくなった。
なので、俺は数年ぶりに小学校卒業以来、話をしていなかった隣のクラスのミッチーを捕まえて、「パン太のあの傷は“かまいたち”か?」と尋ねた、
ミッチーは「…本人はそう言っているけどなー」と(ついにお前も気付いたか)と言った風に言った。
パン太が小学生の頃、あの“荒野”を自転車で走っていたら、太ももが“切られて”いたらしい。まるで刃物で切られたように。
あの、荒野で…。
俺は久しぶりに話す“旧友”のことより、あのパン太の傷が“蛇🐍の呪い”に思えていた。
その頃、荒野は公園工場が本格的に始まり、周囲の家が引っ越しし始めた時期だった。
あの蛇のヒドい死に方がかなり衝撃だったから、そう思えたのか。
パン太の母親が蛇の亡骸をまるでゴミのように投げ捨てた光景を、俺が妙に禍々しく覚えていただけだったのか…。
事故
そのミッチーの自宅付近での出来事だ。
その時、俺はミッチーの近所のグループと仲良く遊んでいた。“オオカミ🐺軍団”を離脱した頃(小32学期末?)だ。
その時、ミッチーとその近所の仲間は自転車🚲️の改造にハマっていた。
誰かのいらなくなった自転車のパーツを外し、どんどん軽量化。泥除けを取り外し、前ブレーキも外してしまった(違法!)
で、タイヤも変えたりした。
見た目はオートレースのバイクっぽくなった。
こうした改造はこの後、“てるグループ”でもやったりしたなあ。
ここまで改造すると、当然、競いたくなる。
自然と自転車レース(好きだなあ)になる。
ミッチーの自宅の近くには、例の“荒野”があったりしたが、住宅街の真ん中にアスファルトの駐車場があり、そこでよくレースした。
“荒野”がオフロードなら、ここは“クレー”だった(?)
ある日、5、6人で「近所を回るレースをしよう」という流れになった。
ミッチーが「ラリー形式」などと言っていたから、そんな映像をどこかで見たのだろう。
俺達はいつもの駐車場を飛び出し、ミッチーの自宅近辺を一周する「ラリーロード」で競う事になった。
“超”軽量化された改造自転車🚲️は歳上の誰かが乗ることになった。この自転車は異様に軽く、ブレーキが一つ(後輪)しかないので、俺は乗りたくなかった。
俺がこのレースを覚えているのは、事前にミッチーがレースコースをみんなに“執拗”に確認させた事だ。レース前自転車で一周したのを覚えている。
駐車場→板金屋→大通り(荒野北側)→食べ物屋→小学校への道→“ベン”(あだ名=女の子)の家→雑木林→踏切(赤電)→本屋の駐車場→草むら→駐車場
というコースを今も覚えている。
そして、ラストの草むらのカーブで俺は何者かに蹴られて、“コースアウト”したのだ。
ここまで俺は二位につけていた。
後は、草むらを抜け、いつもの駐車場に付けばゴール…というところで後ろから迫ってきた何者かに身体ごと蹴られ、俺は道の脇の林に突っ込んだ。
…俺は笑い転げた🤣🤣🤣
というのも、俺はこのレース前から異様にテンションが高く、レース中も周りの人間を笑い飛ばしていたのだ。
…今から思い出しても理由が不明。
結局ビリになった俺は、ゴールした駐車場で、「誰だよー、俺を蹴ったやつは?(笑)」と問い詰めた。
皆、不思議な顔をした。
「お前が1人で林に突っ込んたんだろ(笑)」と逆に笑われた。
そんなはずがない。
俺は確かに誰かに蹴られた感触があった。
その後、何度か、「誰だ(笑)」と訊いても、「おまえだ(笑)」と返されるだけ。結局俺の“自損事故”とされた。
俺も気にせず、そのまま遊んだ。
しかし、今になって思う。
確かに誰かに蹴られたはずだ。
ミッチー?
ミッチー弟?
シンタロウさん?
他の仲間?
…まさか、全員?
このグループは俺以外は皆、近所の連中で、俺のみが“部外者”だった…。
まさか、な…。
…後、一つ。どうしても書きたい“人”がいる(続く)