尖閣諸島の帰属 - 外務省ホームページはこれで良いのか | kohtaroのブログ

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米国政府がヒューストンにある中国総領事館の閉鎖を要請すると、間を置かず次は中国政府が成都の米国総領事館の72時間以内での閉鎖を命じた。米中間の覇権争いがいよいよ本格化し、あたかも新冷戦の時代に突入した感がある。世界の歴史が巻き戻されて今回は米ソから米中に主役が交代したものの、また世界は2つか3つに分断され、政治にも経済にも各国政府は勿論のこと個々の企業にも難しいかじ取りが要求される激動期に入ってきた。こんな時代を迎えて、早急に措置しなければならないと思われるひとつ気がかりなことが出てきた。わが外務省の尖閣諸島についてのホームページの書きぶりである。日本人の愛国心を煽ってはいないか心配になる。

(外務省ホームページの記載ぶり)

「尖閣諸島について」と題して次の通り書かれている。「尖閣諸島が日本固有の領土であることは歴史的にも国際法上も明らかであり、現にわが国はこれを有効に支配しています。したがって、尖閣諸島をめぐって解決しなければならない領有権の問題はそもそも存在しません。」

次で、「領有権の根拠とは?」と題して、「日本政府は、1895年1月、他の国の支配が及ぶ痕跡がないことを慎重に検討した上で、国際法上正当な手段で尖閣諸島を日本の領土に編入しました。第二次世界大戦後、サンフランシスコ平和条約においても、尖閣諸島は日本の領土として扱われた上で、沖縄の一部として米国の施政下に置かれました。また、1972年の沖縄返還協定によって、日本に施政権を返還する対象地域にも含まれているなど、尖閣諸島は戦後秩序と国際法の体系の中で一貫して日本の領土として扱われてきました。」

(日本固有の領土)

日本政府は言う。尖閣諸島は1895年に無主地であることを充分に調査したうえで閣議決定をもって日本の領土とした。その後、長い間どこの国からも異議を申し立てられたことはなく、従って当該地は日本固有の領土であって領土問題は存在しない、とする。確かに領土として編入した手段は国際法に則ったもので正当なものと思われる。しかし、わが国がポツダム宣言を受託した時点(1945年9月2日署名)で「わが国固有の領土」も消滅したと解するのが妥当ではないだろうか。ポツダム宣言第8項は尖閣諸島の帰属は「われらの決定」に委ねられているとしており、したがって、「領土問題が存在しない」とは言えないだろう。また「サンフランシスコ平和条約で尖閣諸島が日本の領土として扱われた」としているが、同条約を採択した会議に中国は参加しておらず、条文にも、下記の通り、それに違背する規定が盛り込まれている。

サンフランシスコ平和条約の中には、わが国が第二次大戦の無条件降伏を受託したポツダム宣言が有効である旨記されています。すなわち、同宣言第8項は、「日本国の主権は本州、北海道、九州及び四国並びにわれらの決定する諸島嶼に極限せらるべし」としている。ここでいう「われらの決定する」が誰を意味するかは同宣言を出した連合国ないしは米、英、中と読むのが一般ではないでしょうか。因みに、1943年に出されたカイロ宣言には、同盟国の目的は日本より、、、、満州、台湾及びぼう湖諸島のごとき日本国が清国人より盗取したる一切の地域を中華民国に返還することに在り、と記されている。これらを勘案すると、同上ホームページに言うサンフランシスコ平和会議で「尖閣諸島が日本の領土として扱われた」とは言えないのではないでしょうか。

(日中友好平和条約)

同ホームページで日中共同声明に言及しないのも国民をミスリードしかねません。日本と中国との戦争状態を終結させ、日中国交正常化を実現させた共同声明が1972年9月29日に調印されました。その第3項で「日本はポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」とあり、この共同声明は、1978年8月12日に調印された日中友好平和条約に引き継がれました。同条約の前文で「共同声明が両国間の平和友好関係の基礎となるものであること及び前記の共同声明に示された諸原則が厳格に遵守されるべきことを確認し」と明示された。また、日中平和条約署名者の間で口頭で尖閣の帰属について「棚上げ」することが合意されたとの証言もあるようだ。

(日米安全保障条約)

最期に、日米安全保障条約では、尖閣諸島は第5条に基づく米国の対日防衛義務の適用対象とされ、マティス元国防長官も「尖閣は日本の施政の下にある領域であり、日米安保条約5条の適用範囲だ」と発言した経緯がある。とはいうものの、米国は、尖閣諸島の施政権が現在は日本にあることを認めるも領有権についてはこれまで一度も明確に態度を示したことがない。日本の実効支配が無くなれば施政権を失ったものとみなされ、米国の防衛義務も無くなるのだろう。「尖閣諸島の戦後秩序と国際法の体系の中で一貫して日本の領土として扱われてきた」とは言えないのではないだろうか。勿論、ポツダム宣言がいう「われら」の中に入るであろう米・英が日本の尖閣領有権を支持してくれることを期待してはいるが、実態は誰が領有権を持つことになるかは未だ決まっていないと言えでしょう。

以上が私の理解する尖閣諸島帰属に関する条約解釈ですが、たったひとつの願いは国民の意見集約が誤った方向に向かってもらいたくない、ということです。勿論、「自分の国は自分で守らなくて誰が守ってくれるか」というのが私の基本的な国防意識ですが、尖閣については、孫・子が命を懸けて守る価値があるかについて疑問を抱いており、戦わないという選択肢もあるのではないかと思うからです。その点、中国が言い出した「棚上げ」方式はこの領土問題を解決する上で素晴らしい知恵ではないでしょうか。民主党政権時代に尖閣を国有化してしまった今となって、果たして中国がこの方式を受け入れるか否か定かではありません。しかし、政府が先ずやるべきは、漁業や地下資源の共同開発でウイン、ウインの関係を築く方策を模索すべきではないだろうか。それゆえに外交を掌り、政府に英知を進言する立場にある外務省にあっても、ホームページの作成には慎重を期してもらいたいものです。