こんにちは。旦那の方です。
もう8月も、お盆前になってしまいました。
今月は一番畑作業がない月ですが、2か月経てばさつま掘りが始まります。
今が色々準備する、タイミングです。頑張ります。
という事で、この記事も、その準備の1つになります。
この記事を本気で読んで欲しいのは、
「干しいも作りに、興味あり!」
「農業に興味あり!」
「将来、自営の家業を継ぐことになりそう」
という方です。
先にお断りしておきます。
身も蓋もない話です。でもこれが現実です。
そして、長文です><
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6月で丸1年、実家にて農作業を行いました。その中で、思うことが多々あります。
それはやってみる前には、分からなかったことです。
準備不足、下調べ不足が、沢山ありました。
あとは、その地域に入らないと、分からないことも多くありました。
こう言うのって、ネットで調べても出てこないと思います。
なので参考にしてもらいたくて、書くことにしました。
まずは、前提になります。
- 実家は、さつまいもの生産と干しいも加工だけを行っています。
- 持っている畑は、他の農家さんが聞いたら、「たったそれだけ?」と驚かれるくらい、面積が少ないです。
- 両親は自営業なので、賃金出ません。純利益で、生活しています。
- 私と妻は、時間給の賃金を貰っています。また、実家の仕事がない時は、他の仕事をしています。
- うちの実家、またひたちなか市内のことが、ベースです。
干しいも農家の1年間は、下記の記事のようになっています。
4月から10月が、さつまいもの生産。
始める前は、3月から9月一杯くらいまでは結構暇だなと思ってたのですが、実際作業量が少ないのは、4,7,8,9月くらいです。
いきなり核心ですが、一番の問題と感じていることは、
収入がある月が、干しいもを販売している12,1,2,3月しかありません。
そしてその4か月の収入で、全ての経費と両親の1年間の生活費を稼がなければなりません。
と言う点です。
うちの場合、干しいもしか販売していないので、販売してる月しか収入がありません。
さつまいもを生産している期間は、一切収入がなく、経費ばかり出ていきます。
元会社員からすれば、毎月収入がないのは、怖く感じます。
また私たち夫婦は、農作業と干しいも加工での収入だけでは1年間生活できないので、他の仕事をしています。
という事で
ポイント1
確定申告が複雑で大変だけど、月一で収支をまとめて(一般的な月次決算)どうなっているか、ちゃんと見ましょう。
私は会社員だったので、確定申告について詳しくありませんでしたが、「農業」と「事業」で確定申告の書類が別々に必要とい事実に、とても驚きました。
「農業」とはさつまいも生産、「事業」とは干しいも加工、のことになります。
そしてさらに驚いたことに、同じ家計なのに、「農業」の方からさつまいもを「事業」に売ったことにすることです。なので書類上では「農業」にはさつまいもの売上げがたち、「事業」の方にはさつまいもを買った経費がかかったことになります。これはどちらも同一金額なので、最終的に相殺されるのですが、不思議でなりません。そしてその金額の元となるさつまいもの単価は、税務署から指定されるそうです。
両親は、干しいも加工が終わった2月にまとめはじめて、白色申告をしています。青色申告は、難しくて出来ないという事で、やっていません。これは、年配者には無理だと思います。
2023年分の確定申告から青色申告に切り替えたくて、私がいま会計処理をやってますが、事業用の会計ソフトと農業用の会計ソフト、両方を使っています。
それで毎月収支を出して、どれくらいお金を使っているか、あとどれくらいの余裕があるのかくらいは、把握しておくことが必要です。
ポイント2
さつまいも生産期間中の経費も、干しいもの売上げでカバーしなければなりません。
普通に考えれば分かるんじゃない?と思われるかもしれません。
私も、始める前から思ってはいました。
ですが、予想以上にシビアに考えなければならない事でした。
例えば、干しいもの販売価格を考える時、1日の加工にかかる経費と利益(両親の年間の生活費や資金のプールなど)を、1日の加工で出来上がる収穫量で割ればいいのかというと、それではダメなんです。
1日の加工にかかる経費と利益、それに「農業」でかかった経費を乗せて考えなければなりません。これが抜けがちな気がします。
ポイント3
閑散期中に収入を得る手段を、始めから「考えておく」ではなく「用意しておく」ことが必要です。
現在私は、元の会社から業務委託で仕事を頂いています。それは会社を辞める前に相談させてもらって、「実家の仕事がない時だけ」というこちらの都合も聞き入れてもらえた上で、仕事を頂けることが出来ました。とてもありがたい話です。
妻も元の仕事を続けるはずだったのですが、その仕事の話が滞ってしまい、地元でアルバイトを探して働いています。
普通のアルバイトの場合、大きな問題が起こります。
干しいも加工期間も、バイトを休めないことです。
普通の感覚だったら「家の干しいも作業が始まるので、4か月間休ませてください。」と言ったら、解雇でしょうね。
父は気軽に「近くでバイトしろ」と言うのですが、雇う側としては「秋までしか出来ません」と言う人を普通は雇わないと思います。
本当は夏の短期間のバイト、阿字ヶ浦なら海の観光関係とかでバイトがあるといいのかもしれませんが、それは多分、1か月もないです。
Uターンする前、両親が夏野菜を沢山作っているのを知っていたので、「夏野菜を作って売ろう!」と考え、東京でお世話になってた飲食店さんに「野菜作ったら、売りに来るから!」と言ってたのですが、実際やってみて思ったのは販売するには毎日それなりの量の収穫が必要で、そうするためには畑が必要で・・・・畑はすでに、さつまいもが植わっています。
じゃ、夏野菜を作るための畑を持つか、というとまたなんだか違う気がします。さつまいも畑は、収穫後から3月くらいまで使われずに放置されててもったいない、とも考えてしまって、なんかうまくかみ合わないなと。
農業以外の仕事と兼業しようと考えると、「自分の都合の良い時だけ」働ける仕事でないと、無理だと思います。
閑散期も、まったくすることがない訳ではありません。畑の状態を見て回り、草取りしたり、防除作業もあります。「仕事の次の休みの日まで、待って」が出来ない場合もあるかもしれません。
また専業農家になるなら、下準備がとても重要になります。
個人的に率直に思っていることは、今の収入では専業では生活できないな、という事です。
私たち夫婦は今も、干しいも生産以外に何をやっていくか、模索を続けています。
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ここからは、家業を継ぐ人、ゼロから農業をやることを考えている人向けに、先に調べておいた方がいい事を、書いておきます。
ポイント4
家業を「生活の糧」としてやっているのか、そうでないのか、確認する必要があります。
次のポイント5にも関わってくるのですが、例えば私たち夫婦は干しいも生産と販売を「生活の糧」としたい訳で、そうできるように考えて、変えていこうとしています。
ですが両親は、言葉が悪いのですが、「昔からやってるから続けている」「お金(売上げ)は、あまり気にしていない」状態です。
私たちと両親の間のこのギャップは、簡単には埋まりません。摩擦ばかりです。
ポイント5
生活の原資は何かを、しっかりと調べてみてください。
「え? 干しいもの売上げじゃないと?」と思われるかと思うのですが、それだけではなかったのです。
65歳をとっくに超えている両親には、「年金」という物が入ってきます。
貰っていない私は、これを見落としていました。
Uターンする1年前に、数年間の確定申告の書類を見せてもらいました。
正直「この売上げで、生活できてるんだ」とちょっと不思議に思いつつも、両親は趣味もほぼなく何かにお金を使う事もないので、それならやっていけるのか、と思いました。
ポイント4に書きましたが、「お金(売上げ)は、あまり気にしていない」要因は、「年金があるから」でした。
これは農業だけでなく、他業種で最近メディアで取り上げられている問題です。
特に飲食業界の話をよく目にしますが、いわゆる親が「爆盛」「採算度外視」でやってきて、子が継ぐときにそれではやっていけなくて、廃業になってしまう。という内容です。
テレビで見た時、やっぱり「年金」の言葉が出ていました。
話を戻しますね。
うちの両親も、はっきり「年金があるから大丈夫」と言います。
両親はそれでいいのですが、結局干しいもの売上げでは、両親の賃金分にあたる生活費は足らないという事になります。
両親にはっきりと、「もし父さん、母さんが完全引退して、新しい人を雇うことになっら、今の売上げでは賃金を払うことが出来なくて、結局人が減った状態で、生産量を減らすしかなくなる」と言いました。
あ、これは両親の問題ではなく、私たちの問題です。
私たちがどうしていくか、私たちが考えて行動していくことになります。
ポイント6
事業資金のプールがあるか、確認が必要です。
農業の場合、軽トラックやトラクターの購入や大きなビニールハウスを建てようとすると、高額な経費が必要になります。
そしてこれらは、1回購入すれば済むものではなく、当たり前に寿命があります。いつの日か、買い替え、建て替えの必要が出ます。
また、買い替えではなくても、機械類は定期的なメンテナンスが必要です。自分で出来なければ、農機具屋さんなどに依頼しなければなりません。
故障が見つかれば、それなりの修理費がかかります。
思わぬ数十万、数百万の出費が、いつの日か出ます。
その為に、事業資金をプール(資金の積立)が必要です。
事業資金がなければ、続けるために「私財」で対応しなければなりません。「私財」もなかったら、どうなることか・・・
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ここからは、農業は始める場合に、「場所」「地域」を探す際のポイントです。
地域の農家さん同士の繋がりはあるか、団体はあるか。
私の地域で、個人の干しいも農家さん同士の繋がり、もしくは団体のようなものは、ありません。
見てる限り、個人の力だけで、なんとかやっている感じです。
「ひたちなか・東海・那珂 ほししいも協議会」と言うのがあるので、Uターンする前はそこがそういう団体なのかと思っていたのですが、聞いてみたら農家さんのための協議会ではないと。COVID-19感染が始まる前は勉強会的なものをあったらしいのですが、農家さんが困ってることをみんなで考えたり、助け合ったりするものではないと。
困った時に頼れるのは、個人的な繋がりのある人だけ。
これじゃ、新規参入しにくいですね。相談できる人も居ない。
個人的意見ですが、ぶっちゃけて言うと、助け合いや技術の共有などがなければ、生き残れない、もっと言ってしまえば、その地域でのその産業は、大企業だけが生き残って、他は遠からず無くなると思います。
ポイント8
畑を借りれるのか、借りれる手段はあるのか。もし拡大しようとしたときに、手配できるのか。
私は、所謂親元就農になります。
なので元から畑はあり、自分で探す必要はありませんでした。
Twitterを見ていると、畑を借りること、借りた後の事の難しさを知ることが出来ます。
私の地域でも、やはり使われていない畑はほぼなく、
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いや、自動車で走っていると、それなりに使われていなさそうな畑はある気がするんですが、その持ち主を探す手段が分からないのと、うちはトラクターを運ぶトレーラーを持っていないので、トラクターで走って15分くらいの範囲内でないときついらしい。
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今は新たに畑を手に入れる手段が、思いつきません。
公的なもので「農地中間管理機構」と言うのがあります。農地を貸したい売りたい、農地を借りたい買いたい人をマッチングさせるサービスのようです。
あと「eMAFF農地ナビ」と言うのもあります。
どちらも、ちゃんと機能しているのか、分かりません。
「借りたい・買いたい」リストはあっても、「貸したい・売りたい」リストがないんですよね。
取り合えず、こう言う所に登録するのも1つの手段ですね。
ポイント9
人を雇うことになった時に、当てはあるか。どう雇用するか。
うちの地域のお話になりますが。
個人農家の干しいも加工で、人を雇いたい時と言うのは、12月から翌年2月くらいまでです。
期間限定になるので、大体ご近所さんとか、知り合いや、またその知り合いとかに声をかけて、お手伝いしてもらいます。
年間通して人を雇用してするほどの仕事がないので、そういう形しかできません。
とある大きな会社さんに「アルバイト募集して、応募ってありますか?」と聞いたことがあるのですが、「いくらでも(応募が)ある。」と言われました。
そうなのかな?ただ申し訳ないけど、周りを見ても、大体それなりの年齢の方々だと思います。うちも、50手前の私たち夫婦が、一番若いです。
さつまいもの収穫などは、とても力が必要です。そうすると、若い人の力を借りたくなります。
若い人を雇うにはどうしたらいいか?
やはり通年仕事があって、社員で雇用するのが、妥当だと思います。地域の大きな会社さんは他の作物を作って、頑張ってそうしようとしています。
あと以前に農業系の展示会で、人材マッチングサービスみたいな会社?さんで話を聞いたのですが、季節労働希望者は沢山いらっしゃるので、期間限定でも雇用できるという話を聞きました。ただし、「住み込みできる所を用意する必要がある」と言われました・・・
ポイント10
昔からの慣習に、縛られたままではないか。
その家、またその地域で、昔からの慣習は、必ずあります。
良いこともあれば、良くないことあります。
その慣習に縛られたままで、新しいことにチャレンジしたくても出来ない場合があります。
無理やりこじ開けてやったとしても、周りの理解や協力が得られなくなり、辛いかもしれません。
慣習を踏まえつつも、新しいことに柔軟に受け入れてもらえる空気があるかかどうか。
知っておいて、損はないと思います。
またお金の話に戻りますが、
ポイント11
開業資金はあるのか。借りるにしても、返済できる目途があるのか。
とても初期費用が掛かります。
何もないところから始めるとなると
- 畑。
- トラクターなのどの大きなものから小さな農機具までの、必要な道具。
- 作業場や納屋などの建物。
- 作業者を雇った場合の人件費。
1千万円では、足らないでしょうね。2千万円くらいは、必要な気がします。
で書きましたが、トラクターとアタッチメントなどは、地域によるでしょうが中古で手に入れるのは、難しいです。
みんな大きな声では言わないですが、中古で手に入れたいなら離農した農家さんから譲り受ける方法しかないようです。
だからと言って、「離農されますか?」なんて直接聞けるわけもなく。
一応私、ジモティーで「離農される方で、農機具を譲っていただける方は、いらっしゃいませんか」の投稿をしています。反応は、ないですけど。
新規就農であれば、地域によって助成制度や補助金制度があります。
そういうのを活用出来れば、また変わってくるかもしれません。
昨年人伝えで「干しいも生産を始めたいと言っている人がいる」という話を、2件聞きました。
みんな口をそろえて、「止めとけ」と言います。
2件のうち1件は、元々家で昔作っていて、畑も道具もあるとのことなので、その人は頑張れば出来るかなと思います。
もう1件は、まったくの新規参入だったようで、ゼロから始めたいという人だったようです。
個人的な見解ですが、干しいもに限らず農業を始めてみたい場合は、何を作りたいかを目標を決めて、それを作ってる大きな農家さんや法人さんで、1,2年働いてみるのがいいんじゃないかなと思います。
- 年間の作業の流れ
- 何が必要か
- そこの地域が、どういう所なのか
- 他とのパイプ作り
などなど、見えてくると思います。
ちょっと酷い話をしますが、失敗する確率を低くするため、言っておきます。
家族だけで生産してる農家さんで働くのは、もちろんその農家さん次第ですが、止めておいた方がいいです。
「人に教える」行為が、出来ない可能性が高いです。
全てが経験と感覚だけによる場合があり、人に具体的に「こうする」と言う表現が出来ません。
下手したら機械の取り扱いも自己流で、基本が出来ていない場合もあります。
ちゃんと「人を雇用」してる所で働くのが、よいです。
茨城県の農業法人の求人が、下記に掲載されているので、参考になると思います。
(今見つけました。こんないいsiteがあるなんて、知らなかったです。)
かなり長い文章になってしまいました。
ここまでお読みいただきました皆様、ありがとうございました。
これから農業をやってみたいと思われている方の参考になれば、幸いです。
またお買い求めくださってる皆様には、「裏側はこんなことになっているんだ」と知っていただければ、幸いです。