2021年9月11日

 

中高年の転職 外資企業へ

 

延川和治

 

積み重ねてこられたご自分の実績や能力をさらに発揮すべく、またそれらに見合う報酬を得るべく日本企業から外資企業への転職を思う方も少なからずおられると思います。
とくに日本企業在籍中に、海外との取引になんらか関わられた方は、相手のビジネスに対するエネルギーを強く感じられ、ご自分の生ぬるさからの脱却やご自分の将来への挑戦を強く思われておられるかもしれません。 

さらに、取引を通じ、外国の方々と強い友好関係を築かれた方々は、なおさら海外・外資でのキャリアアップを思われることと思います。

外資企業へ転職のきっかけの例;


取引のあった相手のトップから声をかけられる。 「一緒にやって頂けませんか」と。
最善のチャンス。
自分の実力を認められ、将来を共にできる相手と見なされた瞬間。
テイクチャンスできますか?

ヘッドハンターから声が掛かる。 「とてもふさわしいポジションがあります」と。
一人の候補として選ばれた瞬間。
この実力、実績があれば、お願いできるかもしれないと思われた瞬間。
ただ、他にも候補はいる。
競争に勝てますか?

日頃の準備の一例;

自分を売りにだすとき、絶対の信頼感を相手に植え付ける必要があると思えます。
この人(自分)なら大丈夫と。

「あなたは年収いくら欲しいですか?」
相手の企業、面接相手の目をみて、ビシッと回答できますか?
ご自分の実力・実績はいくらなのか?
その回答で採用されますか?

「あなたが日頃考えていることは何ですか?」
質問者の目を見て、しっかり回答できますか?
そして、その答えは、相手や相手企業に、絶対の信頼感を創造するものでしょうか?

是非御自身の中に、揺るぎない自信を確立されてください。
そしてそれは御自身の過信ではなく、いままでの限られた世界のなかで通用してきたものでもなく、これからの広く大きな世間・世界で通用するものであって欲しいと思います。
世界はあなたを待っています。

応援します。
 

再就職セミナー

 

2021年8月25日

鈴木 友之

 

今月から、中高年を対象にした「再就職セミナー」の講師を務めている。その実際のセミナーに限らず、自己理解・仕事理解を中心に据えたカリキュラムを計画するうえで、中高年ならではと感じる特徴をポイントに整理する。

 

一番には、自分の「専門性」への「自負心」と「とまどい」だ。この道一筋に続けてきた仕事で培った「専門性」は、ゆるぎない「自負心」となっている。しかし再就職を考える場では、その専門性にどのような応用の効く汎用性や柔軟性があるのか、想像を広げられずに「とまどう」人がいる。時には通用しないのではと、悲観的になる人さえいる。

 

その思考の壁を乗り越えるには、まず自己理解の深掘りとして、それまでの経験を書き出して専門性を自分なりに特定すること。その内容を能力やパーソナリティといった視点から分析し、自分の強みや課題を明確にする。一方で、仕事理解として新しい時代に活躍する機会の多い仕事を例にして、そこで求められる能力やパーソナリティを分析して、自己理解で得た専門性の応用編を考えることとなる。これを一人で考えるのはタコツボ状態になるので、数人一組のグループワークショップで、多様な経験と視点を切り口に自由に話し合うのがお勧めだ。ワイガヤを通して、自分の専門性の汎用性と柔軟性に気づけるようになる。チームで再就職に取り組むことにもなり、モチベーションと行動化の促進につながる。

 

このように、再就職は一人で取り組むのではなく、仲間と一緒に自己を客観的に分析して、お互い自分をオープンにして語り合い励まし合って気づきを増やすことが効果的だ。加えて、人に自己PRする練習にもなる。しかし、そうは言ってもプライバシーにかかわる内容をオープンに話すことに抵抗感を感じる人もいる。そのあたりの機微をファシリテーター役のキャリアコンサルタントがバランスを取るよう努めていく。公共機関で経験する場には、ハローワークなどがジョブクラブとして提供しているので利用をお勧めしたい。

若者の転職について

大圖健弘

 

 筆者は採用関係の業務を行っているので、採用エージェントからいろいろ情報が入る。この中で、結構若者の転職希望者の情報に接することがある。こうした若者の転職希望者の情報を見ると、気になるところが見えてくる。

 転職を希望する理由について考えてみると、例えば会社に入ってある分野でスキルを磨き、それをもってスキルアップを目指す、だとか、中高年になり、会社での居場所が少なくなってきたのでこれまでの経験を活かし新たな場所で再起を図るといった転職がよく見られている。

 これに対し、若者の転職は、1~2年で今の会社を辞めて転職を例が結構あり、当然ながら、スキルが磨かれているわけでもなく、中には2~3社経験があるが、いずれも1年程度の経験といった例も結構多い。当然、次に選ぶ会社の給与レベル等も元の会社より低いことも多く、かと言って希望職種は元の会社と変わらないということも多い。

 こういう状況を見ると、今の若者が転職する理由は、ステップアップや前向き思考ではなく、むしろ、会社が肌に合わないとか職場が合わないとかということでの転職が多いのではないかと思う。特に、2~3社の経験を持っている若者は、どの会社に行っても思っていたのと違ったという認識を持ったのかもしれない。

 こうした若者の行動を、辛抱が足りない等の一言で片づけることは簡単だが、転職を希望するに至った本人にしてみれば、せっかく確保した職を捨てることになることは、大きな痛手であることは間違いない。

 こうしたある意味悲劇をなるべく防ぐため、若者を受け入れた、職場では、少なくとも一定の期間、その若者がうまく離陸できるよう、十分にケアをしていくこと重要と考える。企業としても、あるコストと労力をかけて採用した人材が短期間に流出することは大きな痛手である。人材、企業双方にとっていい結果を残すためにも若者のケアを欠かさないことが必要だ。

新規事業を推進する力

2021年7月2日

鈴木 友之

 

最近のビジネス関連記事で目にすることが多くなったものに、AIの活用がある。中でもAIを活用して新規事業を創出するといった取り組みにメディアは注目しているようだ。敢えて言えば、人々のライフスタイルの多様化というよりも、投資家が事業投資先を探す視点に合わせた取材が多いとも感じる。

 

記事の多くは勿論、AIを活用して発想の幅を広げ、生活をより便利に、より早く、より豊かに広げてくれる取り組みがポイントだ。しかし、時には本当に良くなるのだろうかと思うものもある。最近目にした記事に「地図の位置情報から旅行者の観光ルートをAIで分析して、旅程の提案や特産品の販促に生かす」とあった。或いは宣伝で「AIを使って学習の進捗を管理し習熟度を分析して学習計画を提案する」。コンサルティングビジネスでは「事業企画の情報収集から分析・企画提案までAI活用してワンストップでサポート」。本当に新しい事業創造になるのだろうかと首を傾げている。

 

いままでの事業化の成功事例では、人が目の前の現実を否定せずに多面的に観察してポジティブに考える視点、アイデアの事業化では一直線にではなく押したり引いたり曲がりくねったりしながらも地道に、時に周りの協力を得ながら、主体的に取り組む努力が語られている。特に、引越し事業や産業廃棄物処理事業、最近では鮮魚販売事業など、過去のやり方に捉われない女性の発想力が光っている。もちろん伝説化しつつある運送業の変革のように男性の取り組みも数多くあるが。

 

これらの事例から読み取れることは、アイデアを引き出す視点とひらめきは重要だが、それにも増して重要なのは事業化に取り組む姿勢。特に、地道に取り組む熱意、やる気、本気度を支える主体性ではなかろうか。いままでキャリアコンサルタントとして、またコーチとして人々の就職活動、起業、事業計画などの取り組みに接するときには、常にその人の主体性を一番大事にしてきた。これはAIによる支援で特に難しい課題と思っている。これからも大事にしていこうと思う。

中高年の転職、採用面接から

大圖健弘

 

 小生の所属する会社は基本的には新卒採用はなく、中途採用で社員を確保している。これは小さな会社で人材育成等を行うことが難しく、ある程度経験を積んだ人材に入社いただき即戦力として活躍いただくことを考えているためであるが、面接にあたってどこを評価すればよいかなかなか基準が難しい。

 小生の会社は土木業を行っており、現在土木管理を長年行ってきた人材を採用しようと活動をしている。この中で、今回、2名の応募者があった。

一人は同じ会社で長い間土木関係の業務に携わってきた方で、土木関係の知識も豊富、押し出しもよく、面接者の質問にも的確に答える応募者。同じ会社の中でいろいろ異動を経験し、その中で多くの人と交わって人間関係を築いてきた人で、まさに非の打ちどころの無い人材。しいて言うなら、肩ひじを張るところがあるのかなという感じがある方だった。

今一人は、7~8社を転職している方で、土木の知識もそこそこ、ただ、仕事自体は必ずしも土木を専門に行っていない人。しかし、面接官の質問には無難に答えており、その答え方が非常に低姿勢であり、素直そうな人物だった。またこの方は転職といっても元々在籍していた会社に再度誘われて転職するという経験も持たれていた。

通常なかなかこうした転職回数の多い応募者は書類選考で落とされ、また、面接してもいい結果を残せないのであるが今回は面接者の印象もよかった。

今回、お二人とも内定をさせていただいたが、こうした採用面接で重要なことは、そもそも経験者を採用するのであるから、募集している分野の知識経験が一定以上あることは重要だが、これ以外に自分をきっちり表現するということが大きなファクターであることが

よくわかった。自分を飾ってもいけないし、必要以上に自分を押し出してもいけない。ましてや知ったかぶりすることなどやっても意味がない。

ありのままの自分を見ていただくということが面接に臨む重要なポイントになるのではないかと感じた。その中で面接者がこの人となら一緒に仕事ができると思う人と感じたら採用内定となるということではないか。よく、こういう人柄がいいとか、悪いということをいうが、それよりもその時の相性というべきものがあり、あそれはその時の運かもしれない。

結局、お二人とも内定し、給与条件等をお伝えし入社の意思の確認を行ったところ、それぞれの年収希望を若干下回った条件になってしまったのだが、一番目の方は自分が希望した年収条件は絶対条件であり、これを下回る条件では納得できないと辞退、2番目の方は、若干少ないがしようがないかなといって入社が決定した。

ここでは、会社を渡り歩いた経験の少ない応募者の頑なさと、何度も転職していろいろな経験をした応募者の柔軟性の違いが出たような気がしてならない。

こうした柔軟性も転職に当たっては必要になってくると思う。

ライフキャリア

鈴木 友之

 

 あるセミナー主催者から大学生向けに、新型コロナ禍の現状を踏まえた就活ガイダンスを依頼された。昨年来、直接会う機会を避けたオンラインベースの採用活動が急速に広がっている。もう一つ、大きく影響されたのがK字経済下での元気な企業と苦戦する企業の二極化だ。この2点を中心に、ここ2年で大きく変化した就活のリアルを話したい。まず、新型コロナ禍だけでなく、現在進展する社会環境や産業構造の大きな変革ポイントを挙げてみた。①DX、②脱炭素社会、③新型コロナ禍、④サプライチェーンと物流、⑤グローバル化と国内回帰。

 

 そのうち、①から③の認識は、どの人も大きな差はないと思う。では、④サプライチェーンと物流についてはどうだろうか。生産のグローバルな分業体制を支える要には、情報の共有連携とともに現物を運ぶ物流が上げられる。例えば半導体不足は、米国テキサス州大寒波、日本の生産工場火災、米国の中国製品輸入停止といった複合的問題から大規模な供給不足が発生。一方で、コロナ禍での巣ごもり生活を支える家電品やPC、車の需要増加が不足に追い打ちをかけた。さらにはスエズ運河での座礁といった自然災害と人的回避能力の複合問題や新疆綿の使用停止などと、グローバルなグローバルなサプライチェーンの脆弱性が浮き彫りになっている。また⑤の問題は、かつての生産の海外移転が見直しされ始めた。例えばミャンマー国内紛争から日本のメーカが製品や部品の生産停止し国内で代替えといった問題もある。セキュリティーの観点からサーバーを国内に戻す対策も出てきている。要は国際的な紛争やトラブルの影響を最小限にするために国内回帰がこれからも出てくるだろう。

 

 このような社会環境や産業構造の変革を念頭に長期的な視点で就職先の選択は限界がある。「会社の寿命30年」説が登場したのは40年近く前のこと、企業のライフサイクルも短くなる一方だ。定年まで同じ会社で働き続けることはもうない。加えて人生100年時代、「定年」という概念には別れを告げる時ではないだろうか。

 

 以前、大学の就活ガイダンスでは「正社員で長く勤められる安定した企業に就職して充実した人生を」といったイメージで話すよう求められた。今回は大学内のセミナーではないので自由に構成したい。大事なことは「自分のキャリアは自分で決める」をモットーに、起業も含め「ライフキャリアの視点から、時代の変化とともに主体性をもって柔軟にしなやかな働き方」。そのためには「自身の能力の現状を常に客観的に認識し、興味と価値観の変化も確認して目標を見定め、戦略的に学び行動していく」、このような話をしようと考えている。

延川和治

専門性を重要視してミドルを中途採用した会社が、採用後もっと評価しておけば良かったと思うことのトップは「人柄」だそうだ。

せっかく専門性をもった人材を採用しても、周囲とうまくあわない、面接の時にもっと探っておけば良かったと。

ミドルが新しい環境に適応する難しさを表す一つの指標かとも思う。

 

採用された方から言えば、いままでは、社内でポジションもあり、実績に基づいた信頼感も有り、つうと言えばかあの周囲との関係もあり、一体感をもって仕事を進められていた。

それが、転職をすると、ポジションだけ与えられ、他は全てが無の環境に落とし込められることになる。 また有ると思うポジションも、そのポジションの意味理解が自分と周囲とで大きくことなることが多い。 

指示を出すタイミング、指示の内容、指示の説明、その他コミュニケーションがうまくいかない。 何故? いままでは問題なかったのに。

 

相手の納得はどうしたら得られるのか?

納得は相手の腑に落ちたときに得られる。 相手の、現状背景、問題の内容理解度、解決方向意識、などに対して、腑に落ちる言い方、順番、内容、があって始めて腑に落ちる、納得される。 逆に言えば、相手を知らずして、納得させることなど、至難の業になる。

また、その前に、自分の発言を受け入れる心が相手にあることが前提になる。

心開かれずして、耳に入る言葉も心に響かない、腑にも落ちない。

 

転職後、まずやることがある。

心開いてもらえる信頼感を得ること。 そのためには、まず相手を全て受け入れること、相手に自分がよく理解されていると感じさせること。

まずはこの1点と思う。

様々な文化が会社にあり、いろいろな個性の従業員がいる。 同じ言葉に対しても理解している内容は、いままで在籍していた会社とは違う。それら全てを含めて、全てを受け入れる。これが原点になる。 赤字会社であっても、そこに外からきた自分、ではなくその赤字の中に自分がいる感覚(実際には外から来ているが)、これがスタートと思う。

自分を理解してくれている人からの発言、自分と同じ環境にいる人からの発言、これであれば聞いてもらえる。

 

転職、第二の人生。 専門性等受け入れてくれた能力の発揮に加え、置かれる環境も、周囲と一緒になって自分達で作りあげていく、これが転職と思う。

 

延川和治

米大リーグ、ベーブルースから100年ぶりの快挙を成し遂げたShohei Otani、先日左翼手として守備につき、ついに“三刀流”が実現、快足をとばして盗塁も重ねるその躍動の姿に、連日拍手を送り続けている。

 

キャリアの世界でも、テレワーク・在宅勤務からすきま時間の活用、マルチタレントの発揮の場としてギグ、 ご自分のスキルを思う存分、ご自分の思う時間に提供でき、スキルによっては国内に限らず、海外への提供も可能。 同様に海外の人も、ギグに入り込んでくる。 マルチな能力を活用する、そんな時代に我々はいる。

 

台湾では、1つの職業だけでなく、マルチなタレントを発揮し、2つ以上の職業/肩書きを持ち活躍することをスラッシュ(“ / ”)と呼ぶそうだ。 

“司会者 / 女優 / バンドボーカル / イラストレーター / コラム二スト”とか。

“イラストレーター / グラフィックデザイナー / DJ / フォトグラファー”とか

 

身に付いたスキルは全て肩書きにしたいという「想い」の実現、

いろいろと知りたいと常に思っていたお陰で、結果的に役割も複数になっていく「楽しさ」、

勇気を出して挑戦をして、一つ一つの肩書きを自分のものにした「自信」

などの喜びも伝え聞こえるが、果たして日本社会ではどうだろうか。

 

オープンイノベーション、副業等、スタートアップ等の支援も受けて、いまの仕事の枠にとらわれず、視野を広げて複数の可能性に挑戦することが始まったが、本当に「想い」を新規事業で立ち上げておられるのは、約10%にすぎないと聞く。

 

高齢化社会、定年後の時間が長くなる100年時代人生、一方AIの活躍・技術革新の加速がさらに進み、いままでの経験ではもうプロフェッショナルと呼べない環境、リカレント教育の必要性は感じるも、時間を見いだせずの現実。 

 

この現実のままで良いとは思えない。 これからの自分の豊かなキャリアを創るには、この現実を破る必要がある。 真の自己理解をベースに、自身への覚悟をもって、一歩前に踏み出したい。 

「第二の人生模索」の「第二」とは?

2021.5.2 鈴木 友之

 

  日本経済新聞4月の「Women@Work」に「均等法第1世代、第二の人生模索」という記事で21世紀職業財団の調査結果を紹介していた。総合職の50代男女に聞いたところ、「職業生活の中で最もモチベーションが高かった時に比べ『現在の方が高い・同程度』と回答したのは男性27.6%に対して女性は43.3%にのぼった」とあり、「女性は(中略)何歳でもやる気のある人に活躍の場を提供することで、もっと人材を活用できる」と指摘。なるほど、だが待てよ、男性のモチベーションが女性よりも3割以上も低いのは何故だ。これからの時代、モチベーションが低いまま65歳定年という環境に突入するのを放置することも問題、と思った。

  早速、調査報告を検索してさらに見た。上記の「モチベーション」に加えて「キャリアのつながり意識」も聞いていた。「大いに感じる」+「やや感じる」の回答は男性47.0%、女性60.6%。なぜ男性は低い。男性は先輩たちの定年時に「ハッピーリタイアメント」とお祝いの言葉を言って送り出してきた長い体験の刷り込みがありそう。女性総合職第一世代にはそのような女性の先輩がいない分、モチベーションが高いのだろうと「ガッテン」した。ならば、男性には「定年=リタイアメント」という固定概念、「第二の人生」という意識の払拭、即ち「キャリアのつながり意識」の確立がまず必要ではと思った。

  一昔前の映画でデニーロ主演70歳初老男性を主人公にした「インターン」があった。既に観られた人も多いと思うがストーリーはこうだ。70歳の主人公は定年後に妻と海外旅行などで余暇を謳歌していたが、妻に先立たれてからは時間を持て余していた。偶々目にしたベンチャー企業の年配者インターン募集を目にして応募し採用された。過去の経験で鍛えた「結晶性知能」を発揮して周りを立てながら貢献し自身も活性化する。素晴らしい。だが待てよ、定年後に悠々自適の生活の後に改めて職業キャリアの再構築は、もう時代遅れに思えてきた。

  現在、中高年期や定年前の研修や雑誌等で強調するのは、一に「地位や権限意識」を捨て去り、二に「趣味や交友」を見直し、そして何よりも「資産計画」の見直しだ。実はそれ以前に大事なことは、逃げ水のような年金に期待できず、もう「リタイアメント」はないことへの抜本的な意識転換だ。先の調査結果で男性の5割以上で不足するという「キャリアのつながり意識」を喚起し、年齢とともに変化する能力も織り込んだ「マルチキャリアの構築」支援に取り組んでいこうと思った。

人生マルチステージ時代での中高年期の生き方

鈴木 友之

日本経済新聞のコラム「人生後半初めまして」に、エッセイストの岸本葉子さんが「コロナ禍で声が老化?」と題した体験談を書いていた。コロナ禍でステイホームの結果、声を出して話す機会が激減した。そんな中、リモートインタビューがあって挨拶のお辞儀をした後に口を開いたが、一瞬声が出ない。オンライン講演の依頼に備えて、声を出す練習をしても捗々しくない。医者に診てもらったら、声帯が委縮している、日ごろ声帯を使わないことから来る老化と診断された、とある。

 

 この体験は私自身も「ある、ある」だ。先日も友人から電話があった時、声がすんなりと出ない。「エッ!?」と思いつつ、ステイホームのなか話し込み、終盤には漸くスムーズになった。日ごろは妻と二人だけの生活で、話しは、良く言えば阿吽の呼吸で2,3の言葉を交わせば間に合う。しかも森山良子さんの歌にもある「アレ、アレ、アレ」といった類いだ。単に声が出にくいだけでなく、伝えたいことをうまく言葉にできないもどかしさ。声帯だけでなく神経伝達など、いろいろな機能の連携が、コロナ禍もあって一層使われなくなり老化してきたようだ。

 

 心理学者キャッテルの理論「知能の発達モデル」に「流動性知能」と「結晶性知能」がある。流動性知能は、新しい情報を知能として定着させ、新しい環境に適応する問題解決能力。20代の青年期をピークに発達し、その後は次第に低下する。一方の結晶性知能は、人生や職業の多様な経験を通して形成される知能。青年期・成人期を経て中年期にピークとなり、その後の低下は緩やかなのが特徴。しかし、声帯の委縮と同様に、結晶性知能といえども使わなければ脳の奥底にこびりつき委縮して、いざ必要な時に出てこないと想像される。

 

 人生マルチステージ時代での中年期から老年期の生き方を考えるとき、「昔取った杵柄」の自信で青年期・成人期と同様に流動性知能を発揮して活躍するには限界がある。むしろ結晶性知能の発揮に比重を置くことが肝要に思う。特に老年期に向かう転機では、流動性知能の低下を少しでも遅らせ維持するとともに、結晶性知能に比重を移した視点から、仕事はもとよりいろいろな分野での活動に目を向けていくことが肝要に思った。