四月十日

 

朝、目が覚めてからも昨日見た絵本の街のことが忘れられなくて

とりわけクリスマス・ヴィレッジのあの幻想的な光景が心に焼き付いている。
あれはまさしく、幸せの国…。
 

ローテンブルグに行って、本当に良かった。
人々も皆親切で、何気なく入ったパンやさんのシュガーブレッドの美味しかったこと。
乗り継ぎは結構大変だったから、決して外国人がアクセスしやすい街ではないけれど、ほっこり心が満たされて大切な誰かに紹介したくなるような、そんな素敵な街だった。

 

そして今日は…ノイシュヴァンシュタイン城を訪問しにフュッセンへ。
このお城は、ディズニーランドの見本にもなったことでも有名で、ドイツに行くからにはぜひ実際に生で見てみたかったのだ。

昨夜は、ミュンヘンのホテルでドイツが大好きな桑田圭司さんという日本人のおじさまとお会いし、夜遅くまでドイツ史の講義を聞かせていただいた。
ゲルマン民族の大移動から、ローマ帝国の滅亡、ハプスブルグ家やナチス・ドイツについて…
そういえば、歴史で聞いたことあるかも…というワードが沢山出てきて、脳が活性化され、とても分かりやすくドイツの歴史をおさらいすることができて幸運だった。


桑田さんは70歳を超えた今も、ご家族の理解のもとお一人で定期的にドイツに旅行に来ているらしく、昨日行ったばかりのローテンブルグの話や、今日まさに行くノイシュバンシュタイン城の話もたくさんのエピソードを聞かせてくれた。
旅の時間はこんな風に年齢の垣根もひょいと飛び越えさせてくれる。
わたしが敬愛する桑田圭祐さんと一文字違いなところも、なんだか嬉しい。
素敵な一期一会だった。

 

フュッセンにはミュンヘン駅前からバスが出ていて、早朝にも関わらずノイシュヴァンシュタイン城へ行くのであろう旅行者が集まっていた。
その中には日本人の方もちらほらいた。
きっと毎日こんな感じで世界中からたくさんの旅行者がお城に訪れるのだろう。
ノイシュヴァンシュタイン城の人気を、早速実感する。

 

 

 


 

ミュンヘンから二時間ほど、バスに揺られて森の奥深く聳え立つお城へ…なんだか素敵。
窓から見える景色は、いつの間にか雪山の山脈に森林、湖…まるでヨーレイヒ~♪という感じの世界に。


そして、まず到着したのは、同じ君主が建てたリンダーホーフ城という小さなお城。

 

 

 

 

 

ノイシュヴァンシュタイン城のように立派なお城ではなく、一見別荘のようなこじんまりしたお屋敷&中庭…ところがどっこい!!
中に入ったら…その装飾の豪華さに度肝を抜かれる。
金・金・金…金&ゴージャス!!
ゴージャスなものしか、許されないような世界!!
これはちょっと病的なほど。。。


中が撮影禁止だったのが残念だけど、このルートヴィヒ二世、お城をつくったという王様に私は急激に興味が沸いた。
一体どんな人物なのだろう。
昨夜の桑田さんは「美しいものを愛しすぎた故に破滅した悲劇の王」と話してくれたけど…。

 

前座のこの小さなお城がこれだけ豪華絢爛なのならば、本物のノイシュヴァンシュタイン城はどれだけすごいんだろう。
早くも胸が高鳴る。。。


 

 

ノイシュヴァンシュタイン城までは、バスを降りてから30分ほど歩くらしい。
歩きたくない人のために更に近くまで行く専用バスや、馬車などのサービスも。
馬車は5ユーロくらいだそうだけど、最近パン&チーズを食べすぎな私たちは歩くことに…。
心なしかお馬さんも、なんだか上品な顔つき(*^_^*)。

 

 

 

 

空気がひんやりと冷たくて、とっても気持ちがいい。
オーストリアとドイツとの国境をまたぐ巨大な山脈を背にするノイシュヴァンシュタイン城の付近には、ほんのり雪も残っている。

 

 

 

 

少し山を登ったところでマリエン橋という橋があり、そこはお城が綺麗に見えるスポット。
このマリエン橋は、ルートヴィヒ二世の母親のマリーから名付けられたと言われている。

 

 

 

 

いよいよ見えるのかと、どきどき…
橋を渡る最中、右手を見ると…

 

 

 

 

そこには、夢のようなノイシュヴァンシュタイン城が!!

…幻のように、麗しい。

 

 

 

 

橋を渡り、更に進むと、想像以上に大きく立派なお城が目の前に出現。
中は一体どんな世界なのか…??
いよいよ、ルートヴィヒ二世の夢のお城へ入場。

 

 

 

 

中は先ほどのお城と同じく、撮影は禁止だったけど
そこには想像を絶する金銀宝石が散りばめられ、この世の豪華さを全てここに集めたような、そんなめくるめく世界が広がっていた…。
こんなにも煌びやかな世界が存在するのか。
どれほどの富を集めたら、こんなお城をつくれるのだろう。
隅々まで完璧に隙のない豪華な装飾は、やはり病的なほどの完璧主義者ぶりを感じさせる。


王様は人間嫌いで有名で、食事中も人を寄せ付けなかったと聞いたけれど、
500キロのシャンデリアも、豪華すぎるベッドも、煌びやかなテーブルも椅子も…まさか全部ひとりで、楽しんでいたのかな?


全てがとても美しいだけに、その大広間で華麗なインテリアに囲まれながらひとりで食事をしている姿を思い浮かべると、王様の孤独がより際立つ気がして胸が締め付けられた。
あんなに広い空間に一人でいたら、私なら寂しくてたまらなくなってしまう。
どんなに美しい世界でも、どんなに美味しい食事があっても。

一体どんな気持ちだったんだろう?
一体どんな人だったんだろう?

このルートヴィヒ二世のことが、気になって気になって、お城の中にあるお土産ショップでルートヴィヒ二世の物語の本を購入した。
始めは彼の人物像が描かれていて、その潔癖さと偏屈さが面白かったけれど、最後まで読んだらその悲運な運命には泣けてしまった。
そこには、悲しい結末が書いてあったのだ。
 

 

 

 

このお城は19世紀に建てられた。
ルートヴィヒ二世は子どもの頃、忙しい両親にかまってもらえずに本ばかり読んでいた。

美しいものが詰まった神話や騎士の物語を愛し、だんだんと現実世界よりもそうした世界に没頭するようになっていった。


自身がバイエルンの王となり、小さいころから憧れてきた中世の騎士の世界を実現すべく、多大な費用をつぎ込みこの夢のお城の建築を始める。

 

しかし当時のバイエルンは戦争に負け、財政困難に陥っていた。
そんな中、王であるルートヴィヒ二世が豪華な建築や音楽・オペラなど芸術に湯水のようにお金を注ぎ込むのを危惧した家臣たちは、ルートヴィヒ二世を精神鑑定にかけ「狂王」として退位させてしまう。
翌日、近くのシュタルンベルク湖でルートヴィヒ二世は命を落とし、…それには様々な説があり、未だにその死の原因は解明されていないという。

ルートヴィヒ二世は、このお城には選ばれた者しか入ってはいけない、というように語っていたそう。
皮肉なことに、未完のまま主のルートヴィヒ二世が他界してしまったこのお城、王座は誰も座ったことがなく空いたまま、そして今は世界中から観光客を集めるバイエルンの名物となってしまった。
 

自分が目指した完璧な美しい世界に、私たちのような観光客に土足で踏み込まれて…ルートヴィヒさん、怒っているだろうなあ。
本当にごめんなさい。
確か、タージマハルに行った時も同じようなことを思ったっけ。

きっと、激動の時代を王として生きるには、自分の欲求に正直すぎる人だったのだと思う。

でも、今王様が建てたあのお城のおかげで、このバイエルンはその名を世界に知らしめ、人が集まり経済効果が生まれ、たくさんの恩恵をバイエルンにもたらせているよ。

人間嫌いだった王様は、今の状況も怒っているに違いないけど…
今は時代が変わり、その美しさが世界中に認められていることで、
ルートヴィヒ二世の魂が少しでも安らかに眠れますようにと祈らずにいられない。

 

 

 

 

 

ディズニーランドのモデルのお城を見れる♪と楽しみにしていたけれど
こんな風にひとりの人間の美しく悲しい物語に触れるなんて、思ってもみなかった。

現代に生きる私たちには想像もできない、王様という位、王様という生活。
当時の民にとっては、良い王様ではなかったのだと思う。
でも、美を愛する人間としては自分の欲望のままにつくりたいものをつくった人だったんだろうなあ。

ワーグナーをこよなく愛したというルートヴィヒ二世。
今夜はワーグナーを聞き追悼しながら、このノイシュヴァンシュタイン城の動画を更新しよう…。