社会保険労務士 大澤明彦の情報提供ブログ(2019年8月28日より毎日更新継続中)

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町田市の社会保険労務士 大澤明彦です。

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人事担当者が押さえておきたい5つの実務ポイント

 

 近年、退職代行サービスを利用する労働者も珍しくなくなりました。

 ある日突然、

 「本人に代わって退職の意思をお伝えします」

 という連絡が会社に入ることがあります。

 しかし、退職代行から連絡があったからといって、会社が感情的になったり、一律に拒否したりすることは適切ではありません。

 重要なのは、誰が、どのような権限で連絡しているのかを確認し、退職日や年次有給休暇、貸与品、退職後の書類などを整理して、淡々と手続きを進めることです。

 今回は、退職代行から連絡が来た場合に確認しておきたい5つのポイントを解説します。

 

① 退職代行の立場と対応できる範囲を確認する

 まず確認したいのが、退職代行サービスがどのような立場で連絡しているのかという点です。

 退職代行サービスには、一般に、

 ・民間業者

 ・労働組合

 ・弁護士

 などがあります。

 同じ「退職代行」でも、法律上の立場や会社に対して対応できる範囲は同じではありません。

 

◆民間業者の場合

 民間の退職代行業者は、基本的に本人の退職意思を会社に伝えることをサービスとして行っています。

 一方で、退職日の調整や未払い賃金、退職金、年次有給休暇などについて、会社と具体的な条件交渉を行う場合には、弁護士法との関係が問題となる可能性があります。

 そのため、民間業者から連絡があった場合には、

「本人の意思を会社に伝えているだけなのか」

「会社との交渉を求めているのか」

を区別することが重要です。

 

◆労働組合の場合

 労働組合が本人のために団体交渉を申し入れる場合には、労働組合法上の団体交渉の枠組みが問題となります。

 そのため、「労働組合」と名乗っているからといって、民間業者と同じように扱うことはできません。

会社としては、

 ・どのような団体なのか

 ・本人との関係はどのようなものなのか

 ・何について団体交渉を求めているのか

 などを確認したうえで対応する必要があります。

 

◆弁護士の場合

 弁護士が本人から委任を受けている場合には、本人の代理人として、退職に関する交渉や未払い賃金、退職金などの請求について、会社とやり取りすることができます。

 例えば、

 ・退職日の調整

 ・年次有給休暇の取得

 ・未払い賃金の支払い

 ・退職金の支払い

 ・損害賠償に関する対応

 などについて、会社との交渉を行うことができます。

 弁護士から連絡があった場合には、本人から委任を受けていることを確認したうえで、以後の連絡窓口を弁護士に一本化することも考えられます。

 もっとも、弁護士から連絡があったからといって、弁護士の主張がそのまま確定するわけではありません。

 退職日や年次有給休暇、未払い賃金などについては、会社側でも事実関係や法的根拠を確認したうえで対応することが重要です。

 

◆会社が最初に確認すべきこと

 退職代行から連絡が来た場合、会社としては、まず、

 「誰が、どのような立場で、何を求めて連絡しているのか」

を確認しましょう。

 単に本人の退職意思を伝えているのか、それとも退職条件等について会社との交渉を求めているのかによって、会社側の対応も変わってきます。

 相手方の立場や権限を確認しないまま、すぐに退職条件の交渉に入るのではなく、まず連絡者の資格・立場と、対応を求められている事項を整理することが重要です。

 

② 本人の意思と退職日を確認する

 次に重要なのが、本当に本人が退職を希望しているのか、そしていつ退職するのかという点です。

 退職代行から連絡があった場合、

 「本人に確認すればよい」

 と考えてしまうかもしれません。

 しかし、退職代行が本人の代理人として対応している場合などには、会社が本人に直接連絡することが適切でない場合もあります。

 そのため、まずは、

 ・本人から依頼を受けているのか

 ・どのような権限に基づいて連絡しているのか

 ・本人が希望している退職日

 ・無期労働契約なのか、有期労働契約なのか

 などを確認します。

 必要に応じて、委任状や依頼関係を確認することも考えられます。

 ただし、会社が本人確認のために過剰な個人情報の提出を求めればよいというものではありません。

 重要なのは、本人の退職意思と、連絡している相手の権限を合理的な方法で確認することです。

 また、退職日については特に注意が必要です。

 無期労働契約と有期労働契約では、退職に関するルールが異なります。

 さらに、会社が「退職を認める・認めない」という話だけで処理するのではなく、退職の法的性質や退職日がどのように確定するのかを整理する必要があります。

 退職代行から「明日付で退職する」と一方的に連絡が来た場合などには、契約内容や退職の意思表示の内容を確認したうえで対応することが重要です。

 

③ 貸与品の回収とシステム上の対応を決める

 退職手続きで問題になりやすいのが、会社から貸与している物品の回収です。

 例えば、

 ・パソコン

 ・スマートフォン

 ・ICカード

 ・制服

 ・鍵

 ・社用車

 ・名刺

 ・その他の会社備品

 などがあります。

 

 退職代行を利用する場合、本人が会社に出社することを希望しないケースもあります。

 そのため、

 ・郵送で返却するのか

 ・宅配便を利用するのか

 ・会社側が回収するのか

 など、具体的な返却方法を決めておく必要があります。

 また、貸与品の返却だけでなく、情報セキュリティ上の対応も重要です。

 例えば、

 ・メールアカウントの停止

 ・社内システムのアカウント停止

 ・VPN等のアクセス権限の停止

 ・パスワードの変更

 ・クラウドサービスの利用権限の削除

 などです。

 退職者が会社の情報システムにアクセスできる状態を放置すると、情報漏えい等のリスクにつながる可能性があります。

 貸与品管理台帳やアカウント管理表などが整備されていれば、退職時の確認漏れを防ぎやすくなります。

 

④ 未消化の年次有給休暇を確認する

 退職代行を利用した場合、

 「残っている年次有給休暇をすべて取得して退職したい」

という申し出が行われることがあります。

 年次有給休暇は労働者の権利であり、会社としては慎重な対応が必要です。

 特に重要なのが、退職日との関係です。

 厚生労働省も、退職間近の労働者が残存年休をすべて取得して退職したいと申し出た場合、退職日を越えて時季を変更することができないため、使用者は時季変更権を行使できないと説明しています。

 したがって、会社としては、

 ・現在の年休残日数

 ・年休の取得希望日

 ・退職予定日

 ・最終出勤日

 ・年休取得後の在籍期間

 を整理する必要があります。

 例えば、退職日までに残っている年休をすべて取得することが可能な場合、最終出勤日が退職日よりかなり前になることもあります。

 この場合、会社としては業務の引継ぎ等を考えて、

 「退職日を後ろに変更してもらえないか」

と本人に打診することは考えられます。

 ただし、退職日を変更するかどうかは、最終的には労働者との合意の問題です。会社が一方的に変更できるものではありません。

 なお、退職代行業者が年休取得を主張している場合でも、会社としては、本人の年休残日数や退職日などの事実関係を確認したうえで対応することが重要です。

 

⑤ 退職後の書類・手続きを漏れなく行う

 退職代行を利用された場合でも、会社が行うべき退職手続きがなくなるわけではありません。

 例えば、

 ・雇用保険の資格喪失手続き

 ・離職票に関する手続き

 ・源泉徴収票の交付

 ・退職証明書の交付

 ・その他、本人から請求された書類の交付

 などがあります。

 雇用保険については、労働者が離職した場合、原則として事業主は資格喪失届に離職証明書を添えて、離職日の翌日から10日以内にハローワークへ提出する必要があります。

 ただし、離職者が離職票の交付を希望しない場合には、離職証明書の提出を省略することができます。

 つまり、離職票については、

 「本人が希望した場合だけ会社が手続きをする」

 という整理ではなく、

 「原則として離職証明書を提出し、離職票の交付につなげる。本人が離職票を希望しない場合には、一定の手続きを省略できる」

というのが基本的な考え方です。

 源泉徴収票については、年の途中で退職した場合、退職の日以後1か月以内に交付する必要があります。

 また、労働者から退職証明書の請求があった場合には、使用者は遅滞なく交付しなければなりません。

 したがって、

 「退職代行を利用したから書類を出さない」

 という対応は適切ではありません。

 退職代行から連絡があった場合でも、通常の退職と同様に、必要な手続きを整理して進めることが重要です。

まとめ

 退職代行から突然連絡が来ると、会社としては戸惑うかもしれません。

 しかし、感情的に対応したり、

 「退職代行からの連絡だから一切対応しない」

としたりすることは、かえって問題を複雑にする可能性があります。

 

 まずは、次の5点を確認しましょう。

 ① 退職代行の立場と権限

 ② 本人の退職意思と退職日の確認

 ③ 貸与品の回収とシステム上の対応

 ④ 未消化年休の取り扱い

 ⑤ 離職票・源泉徴収票・退職証明書等の手続き

 

 退職代行が介在していても、会社と労働者との雇用関係が終了するという基本的な構造は変わりません。

 重要なのは、退職代行そのものに感情的に反応することではなく、

 「誰が、どのような権限で連絡しているのか」

 「退職日をいつとするのか」

 「退職までに何を処理しなければならないのか」

を一つずつ整理することです。

 会社としては、法律上の論点と実務上の手続きを切り分け、冷静に対応することが求められます。

 

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