こんにちは。町田市の社会保険労務士 大澤明彦です。

 

残業規制の「緩和」提言

──人手不足を“時間”で埋める発想は、限界に近づいている

 

最近の報道によれば、自民党は

・労基署による残業削減指導の運用見直し
・現行制度の範囲内で「残業しやすくなる」環境整備

を盛り込んだ提言案をまとめたとされています(共同通信)。

 

■ この提言が示す方向性とは何か

この動きが示しているのは、

「人手不足は残業で補う」

という発想の延長線上にある政策です。

しかし、現在の日本企業を取り巻く環境は、すでにその前提が成り立たなくなっています。

 ・深刻な人手不足

 ・生産性の伸び悩み

 ・長時間労働に対する社会的規制の強化

こうした状況の中で、残業をしやすくする方向に政策が動けば、
長時間労働への回帰を招くリスクがあると言わざるを得ません。

 

■ なぜ企業は「残業」に頼らざるを得ないのか

一方で、現場の企業側にも事情があります。

 ・採用が困難で人員が確保できない

 ・業務の属人化が進み、効率化が難しい

 ・価格転嫁ができず、人件費を増やせない

このような状況では、

「人を増やす」「業務を抜本的に見直す」よりも
“残業で乗り切る”という選択が現実的になってしまう

という構造があります。

私は実務の中でも、このジレンマを抱える中小企業を数多く見てきました。

 

■ 本来求められるのは「労働時間の緩和」ではない

こうした状況だからこそ、必要なのは

 ・業務プロセスの見直し

 ・IT・DXの導入による効率化

 ・中小企業への生産性向上支援

 ・適正な人員配置

 ・長時間労働に依存しない賃金設計

といった、構造的な改善です。

つまり、

👉「時間で稼ぐ」から「生産性で稼ぐ」への転換

が不可欠です。

 

残業規制を緩める方向に進めば、企業は

「改善」ではなく「時間で埋める」

という短期的な対応に流れやすくなります。

 

■ 過労死防止の流れに逆行するリスク

日本はこれまで、

 ・過労死問題

 ・長時間労働

 ・メンタルヘルス不調

といった課題に対し、制度的な対応を積み重ねてきました。

労基署による指導は、
長時間労働を抑制する最低限の安全装置として機能してきた側面があります。

その運用が緩和されれば、

👉「働かせすぎを防ぐ仕組み」が弱まる可能性

は否定できません。

 

■ まとめ:問われているのは“時間”ではなく“構造”

今回の提言に対して、

「人が足りないから残業で回すのか」

という疑問が生じるのは自然です。

しかし本質的な課題はそこではありません。

 ・人手不足

 ・生産性の低さ

 ・長時間労働依存

 ・中小企業の構造問題

これらを放置したまま、

👉「残業しやすくする」

という方向に進むことは、問題の先送りに過ぎません。

 

本当に必要なのは、

「働く時間を増やすこと」ではなく
「働く仕組みを変えること」

です。

この視点を欠いた政策は、
長期的には日本の労働環境そのものを悪化させる可能性があります。

 

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