『そこのこと』の稽古中、中島さんがたまに『スラムダンク』の話をしていた。
聞けば、とても大好きらしい。
言わずと知れた、漫画史に残る名作・『スラムダンク』。
多くの若者が、この漫画を通った。
が、僕は『スラムダンク』を通ってこなかった。
別に漫画を読まなかったわけではない。
小中学生くらいの頃は少年ジャンプも読んでいたし、『ドラゴンボール』に関しては、それぞれのキャラクターの戦闘力まで暗記していたくらいだ。
でも、『スラムダンク』は通ってこなかった。
理由は、ただ一つ。
僕が肥満児だったからだ。
………。
話が読めませんか??
例えば、テスト用紙。
夏場はどうしても用紙に汗が垂れる。
そして、忘れた頃に返ってくる僕のテスト用紙は、汗が垂れたところが油ジミになっているのだ。
フライドポテトの下に敷いた紙ナプキンのように。
それほどにデブまっしぐらだった僕には、当然色恋沙汰など無縁の存在だった。
叶うならば。
君が好きだと叫びたかった。
(アニメ『スラムダンク』オープニングテーマより)
でも、実際のところは、
股ずれが痛いと叫びたかった。
おぉ。
書いていて、目から汗が零れ落ちる。
そんな男が、カッコいい男子が油分のない汗を流しながら熱くバスケットボールをして、少しの色恋までも絡むような漫画を読む。
これは、現実の自分とのギャップに悶え苦しむこと必至だった。
それ故に、『スラムダンク』を通ってこなかったという訳だ。
そんな中、中島さんの口から出た『スラムダンク』。
中島さんの好きなものに興味があった、ということもあり、読んでみたくなった。
高校時代が遥か昔の今なら、なんだか読める気がした。
かくして、僕は劇場入りしてから、『スラムダンク』を貪り読む日々が始まった。
つづく。