ガン=カタだけではない!! 

2002年 監督/ カート・ウィマー


アクション映画である事を承知の上で鑑賞したのですが、それをすっかり忘れるほど胸に迫る重厚なドラマが展開される作品でした。中盤までアクション皆無ながらも、すっかり心を鷲掴みにされたボクは「アクション来なくていい!もうこのまま重厚なドラマを見せてくれ!」とすら思ったのです。それほど『リベリオン』の脚本と演出は素晴らしく、戦争映画並みに胸を締め付けられ、募る政治不信から暴動を起こしたくなる程に激しく揺さぶられましたよ。

だって映画、音楽、美術など一切の芸術や娯楽、そして動物を愛でることすら禁止された世界ですよ!一切の感情を持つことが禁止された世界なんて想像出来ますか!?

そんな不条理な世界に放り込まれながら、本作の主人公ジョン・プレストンと共に観る側も爆発覚醒する参加型作品です!

だからマジ最高!


『リベリオン』は、誰もが声と拳を突き上げたくなる107分だ!


舞台は第三次対戦後の近未来。独裁政権が第四次世界大戦回避を大義名分に、"怒りや妬みなどのネガティブな感情を持つこと"を違法とし、感情抑制薬の服用を全市民に義務付けているという設定です。"そのおかげで殺人事件や戦争を回避出来ているが、薬の副作用により、喜びや楽しみ、人や動物を愛でる気持ちも失ってしまうが仕方ないだろう"ですって。おいおい!

もしかすると我々日本人も、闇の独裁者に洗脳・コントロールされているのではないかとすら思わせる程の絶妙な演出で、観るものを完全に巻き込みます!




【この映画の好きなとこ】


◼︎ジョン・プレストン (クリスチャン・ベール)

無機質で冷酷な捜査官役に、ベールのルックスは見事にハマっている。衣装もさることながら未来の神秘的なヒーロー像として鮮烈な印象を残す。

あまり好きな俳優じゃなかったけどコレはいい



◼︎映像美

光と影のコントラストやアングル、画角、編集まで完璧な美しさ。アート写真集のような雰囲気を醸し出している『リベリオン』は、まさに芸術と呼ぶに相応しい作品だ。

特に光と影の演出は素晴らしいね
繊細かつ大胆


◼︎突入

暗闇で標的を次々に仕留める驚愕のシークエンス。真っ暗な室内での囁き声が息を詰まらせる程の劇的効果を生み、閃光に浮かび上がるアクションは眩い程の魅力を纏っている。

ジャジャーン!
暗闇で正確に敵を次々と仕留める



◼︎パートリッジ捜査官

感情抑制薬服用を拒絶した違反者である同僚のパートリッジに銃を向けるプレストンは、馬鹿げた社会に洗脳された愚か者の象徴であり、観客はその姿に最初の絶望を味わう。

イェーツの詩集に心奪われる006…いやパートリッジ
容赦なく銃を向けるこの頃のプレストンはダメなヤツ
どこを切っても絵になるなあ



◼︎プレストンの目覚め

感情抑制薬の服用をやめたプレストンは徐々に人間の心と感性を取り戻していく。芸術や娯楽作品に触れ、ベートーヴェンで涙を流す心は現代人にも通ずる何かがあるはず。

マザーグースじゃん!読んだことないけど
人間が作り上げた娯楽作品の数々に触れるプレストン
極め付けのベートーベンで涙する!



◼︎命の重さを知る

感情違反者により密かに飼われていた犬の集団を駆除する光景に耐えられず、残された一匹の子犬を抱き抱えるプレストン。初めて観客が安堵出来る瞬間。

お前マジ地獄に堕ちろよ

そう!それでいいんだ!わんこはいいぞぉ



◼︎謀反

絶体絶命のピンチ!トランクに隠した子犬のサスペンス劇も重厚。感情違反者であることを見抜かれたプレストンの瞬殺アクションが炸裂する、最初の大きな見せ場。

目にも止まらぬ早技にシビれるー
映像美も堪能しちゃう

キマッた!ここに"型"の美学がある!



◼︎反乱軍の処刑

反乱軍を逃すも裏目に出てしまい、要らぬ"処刑の名誉"を授かるプレストン。反撃に出ようとするプレストンを目で制止する反乱軍リーダー。束の間に芽生えた友情がアツい!

プレストン君に処刑の名誉を与えよう
どうした?早く撃てよ
(瞬殺してやろうか…)
(やめるんだ。かまわずオレを撃て…)



◼︎女性死刑囚 ※ネタバレ

かつての相棒パトリッジ捜査官の恋人も違反感情者として処刑場ヘ。食い止めようと走るプレストンだが、待ち受けていたのは再び強烈なトラウマを抱えさせる残酷な結果。

全速力で駆けつけるも間に合わず
閉まる火葬炉のドア
プレストンの目に焼き付けられる最悪のシナリオ



◼︎ガン=カタ

独裁政党の党首ファーザーを追うプレストンの前に立ちはだかる無数の警備隊を、怒涛の百人斬りで仕留める圧巻シークエンス。型のキメポーズがいちいちカッコいい!!

強く美しい!カコイイ!
百発百中!で、敵の弾は当たらない!
もしかしたらセガールより強いかもしれない!
キマッたー!!カコイイ!!



◾️最後の対決

党首ファーザーの前に立ちはだかる側近警備隊やブラント、そして副総裁デュポン。ステージ毎に変わる敵との決戦には、ブルース・リーの『死亡遊戯』を思わせる興奮が!

座頭市も登場(ウソ)
憎まれ役のブラントに相応しい結末が
こいつマジ嫌い、副総裁デュポン



◾️エンディング

希望の光が差し込む穏やかで厳かなエンディング。プレストンの子供に加え、件のわんこも登場させる抜かりのなさがうれしい。子供たちの薄い微笑みがリアルで胸に刺さる。

どかーん!最後は爆発
わんこ無事でよかた!名前つけてあげたい
何気にこのプレストンJr.は作品の要だったりするね




脚本も手がけたカート・ウィマー監督は本作で愚かな独裁政治への批判と、眠らされているような現代人に警鐘を鳴らしていますが、あくまでエンタメ作品としてまとめている所が流石ですね!

しかも、最後には清々しく爽やかな風さえ吹いているという。


同様のテーマを描いた作品として、スタンリー・キューブリック監督不朽の名作『時計じかけのオレンジ』を筆頭に、『カッコーの巣の上で』『ゼイリブ』などが挙げられますが、本作は銃(ガン)と日本武術の型(カタ)を取り入れた斬新なアクション、ガン=カタを考案し、新しいアクション映画としてのアプローチを試みていることから、"『リベリオン』はどの映画にも似ていない"という差別化に成功しているのです。


カート・ウィマー監督はこの後、2006年に新たな傑作『ウルトラヴァィオレット』を監督作品として発表するも、それ以降は脚本家としての仕事しかしていませんが…この才能をこのまま眠らせていいのかハリウッド!!

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本作をお薦めくださった丸顔海賊団さんに感謝申し上げます!!「観る」と言ってから4年もの月日が流れていました事お許しください(*゚∀゚*)