愛はワンコに学ぶ。

2019年 監督/ ゲイル・マンキューソ

前作『僕のワンダフル・ライフ』を超える事は絶対に無いと確信していました。重圧禍で製作をしなければならないのは、ヒット作続編の宿命です。前作越えが無いと確信していたボクは「ガッカリするくらいなら…」と、本作の鑑賞を公開から本日まで3年もの間見送っていました。

しかし、今回その続編『僕のワンダフル・ジャーニー』を鑑賞し終えた今、前作と比較する事は無意味であったと分かりました!


前作同様に、本作でもワンコの転生が描かれる為、言ってしまえば新味にも驚きにも欠けます。脚本や設定の粗を指摘することもいくらでも出来ます。

しかし、本作の見どころは、前作以上に強く、且つストレートに響く、ワンコから人間に送られた愛のメッセージに他なりません。ここに続編製作を決めた意義があります!前作では描き切れなかった愛のメッセージが迸る名画です!

ワンコ好きなら共鳴、そうでない映画ファンもきっと涙するに違いありません!


前作の主人公イーサンと、愛犬ベイリーの後日談を物語の導入部としつつも、今回ベイリーが寄り添うのはイーサンの孫娘CJです。様々な犬種に転生を繰り返しながら、CJの恋と夢、そして成長を見守るべく、ベイリーは寄り添い続けます。

そして、本作はベイリーとCJのドラマを主軸にしたドラマでありながら、イーサンとベイリーの物語の完結編でもあります。CJの家族とイーサンの家族がひとつになり、始まる物語と終わる物語が交錯する時、受け継がれていく大きな愛を、我々観客は見届ける事になるのです。



【この映画の好きなとこ】


◾︎イーサン (デニス・クエイド)

前作に続くデニス・クエイドの続投に歓喜。今回のクエイドは、初老から晩年までを演じているが、その演技力にも脱帽。ベイリーと強く結ばれた絆は、もはや全人類のお手本。

この人の顔が好きです


◾︎ベイリー

転生を繰り返す愛に溢れたワンコ。今回ベイリーは、モリー、ビッグ・ドッグ、マックスへと3度の転生を繰り返す。

ベイリー(グレートピレニーズとバーニーズマウンテン・ドッグのミックス犬)
モリー(キャバグル)
ビッグ・ドッグ(アフリカン・ボーアボール)
マックス(ヨークシャーテリア)


◾︎ファーストシーン

イーサンが運転するトラクターの荷台に乗ったベイリーの独白と、素晴らしいカットに本編開始早々に心鷲掴み!ザ・幸せの画。

ベイリー曰く世界一幸せなワンコだと感じる瞬間
こんな広い農場で放し飼い出来たら最高だよね


◾︎イーサンとの再会

孫娘CJに飼われている犬のモリーが、転生したベイリーである事に気づくイーサン。モリーに「CJを頼んだぞ」と、人知れずやり取りをする様がファンの心を擽る。

まさか…ベイリー??
そうだワン!
「CJを頼んだぞ」世界一強い絆が再び


◾︎アニマルシェルター

保護動物譲渡会に出されたマックスが、来場したCJに気づく。自分に関心を示す他の飼い主候補に気に入られないよう、噛みつき作戦を決行するマックス。犬が噛み付くのは、他ならぬ理由があるんだなと妙に納得。

CJ僕を選んでくれ!
僕は君のモノじゃない!ガブー!


◾︎追い出し作戦

同棲中の恋人バリーに愛想を尽かしたCJが、荷物を纏め出て行く。マックスとバリーの飼い犬デュークからも「僕たちは君が好きじゃない」と睨まれる。犬心わかってるなあ。

バリーに愛想を尽かし出て行くCJ
バリーの愛犬デュークにまで唸り立てられる。ワンコは繊細で敏感。嫌な人間はすぐにわかるのだ。


◾︎グロリア

絶縁状態だったCJの母グロリアを見たマックスが「犬が欲しいのはグロリアだ。愛が欲しいんだね」と悟す場面に、慈しみ深き心の広さを感じずにいられない。

グロリアに歩み寄るマックス

助けが必要と思う人には分け隔てなく寄り添う優しさ


◾︎CJの初ステージ

舞台恐怖症のCJが、母グロリアの「やってみなければ何も分からない」という言葉に奮い立たされ、曲を書きステージに立つ。ここから運命の歯車が音を立てて回り始める!

歌詞をチェックするマックス(うそ)
自身のドラマを歌うCJ

舞台の成功を祝う幼馴染みのトレント


◾︎守られていたCJ

イーサンの告白で、これまでベイリーに守られていた事を知るCJ。トレントの癌を探知し、宝くじを当て、CJとトレントを再会させ、イーサンの農場に連れて来たのはベイリーなのだ。ずっと側で見守っていたんだ!

ジャンピングノック!ココめっちゃかわいいから!
ベイリー引き寄せの法則
こういうのホントにあると思うな。多分誰もが気づいていないだけで、きっと愛する誰かに守られている


◾︎マックスの独白

"僕はいとしい人たちにずっと大好きだよって伝えてきた" "僕の究極の目的は人を愛すること。いま僕がここで、彼らを永遠に愛せることが自分へのご褒美だ"

CJが"いい群れ"の中にいられるように見守って来た
お別れの時いつも側にいてくれたね。今度は僕がいるよ
老衰したマックスに歌を聴かせながら見送るCJ


◾︎虹の橋

天命を全うしたマックスが雲の上を駆ける。そして、虹の橋の先に見たものは…。ワンコ好きが夢見る究極の理想に涙腺は完全崩壊!

ありがとうマックス、ビッグドッグ、モリー、ベイリー
君たちの愛を決して忘れないよ!
人に足りないものは全て君たちが教えてくれたね
世のすべてのワンコが幸せでありますように


◾︎エンドロール

一般公募と思しきたくさんのワンコ写真が映し出される。"ずっと友達だよ"のメッセージと共に映し出されるエンドロールは、本編同様にドラマティック!ここでまた涙のおかわりをします。゚(゚´Д`゚)゚。

どのワンコもかわいいな
どのワンコにもきっと愛のドラマがある


『僕のワンダフル・ライフ』と『僕のワンダフル・ジャーニー』は、もはや聖書の上下巻であり愛の名言集です!

『僕のワンダフル・ジャーニー』は、前作の監督ラッセ・ハルストレムが製作総指揮を務め、ゲイル・マンキューソが映画監督デビュー作品として手がけた作品です。

愛に包まれた完璧な世界観を築いた女性監督マンキューソも、ハルストレム同様に愛犬家のようです。本編にCJがマックスを歌で見送るシーンがありますが、なんとこれは監督のマンキューソが愛犬を看取る時に行っている儀式なんですって!本物の愛犬家たちによって作られた、本物のワンコ映画なんですね!


ワンコは慈しみ深き愛に溢れた生き物です。人間と違い、私利私欲で人を裏切ったり、騙したりする事が無い生き方には、本当に見習うべきところが多いと思います。


今回ネット検索で、"犬の十戒"と呼ばれる愛犬家なら誰でも知っているワンコを飼うにあたっての10か条がある事を知りました。これは、ワンコから飼い主になる人への10のお願いです。その愛の言葉の数々にも、本編同様に涙が止まりませんでしたので紹介したいと思います。ご存じない方は是非読んでみてください!



犬の十戒

※独自の解釈で一部要約・意訳してあります


1. 私の生涯は10〜15年です。だから、あなたと離れる時間が何より辛いのです。私を飼う前に、どうかその事を覚えておいてください。


2. 私はあなたが何を求めているのか、理解するまでに少し時間がかかります。だから理解するまで待ってほしいのです。


3. 私を信頼してください。それが私にとって、あなたと生きる幸せなのですから。


4. 長い間叱ったり、罰として閉じ込めたりしないでください。あなたには他に仕事や趣味もあり、友達もいるかもしれない。でも、私には、あなたしかいないのです。


5. 時々私に話しかけてください。言葉の意味は分からなくても、私はあなたの言葉を聞けば、あなたが何を思っているのか分かるのです。


6. あなたがいつも私にどんな風に接しているか、思い起こしてみてください。あなたがくれた愛を、私は決して忘れません。


7. 私を叩いたり、いじめたりする前に知って欲しいのです。私は鋭い歯であなたを傷つけることも出来ますが、決してそれをしないようにしていることを。


8. 私がいう事を聞かない時は、何か理由があります。食事や環境かもしれないし、体が老いて弱って来ているのかもしれません。


9. 年が老いても、どうか世話をしてください。誰もが平等に、同じように年を取るのですから。


10. お別れのその時まで側にいてください。「つらくて見ていられない」などと言わないでください。あなたが側にいてくれることで、私は安らかに逝けるのですから。そして、どうか忘れないでください。私がいつまでもあなたを愛していることを。


どうですか、この愛に溢れた言葉の数々。

飼い主へのお願いでありながら、人の生き方を説いた言葉にすら思えます。

そう考えると、やっぱりワンコに学ぶことは多いなと思わずにはいられないのです。

そんな尊敬の念と、ありったけの愛を、今日で3歳になる大好きなボクのワンコに捧げます。たくさん食べて、たくさん遊んで長生きしてね!

そして、世のワンコがみな同様に幸せでありますように!



前作はこちら

僕のワンダフル・ライフ