父を知る。
1989年 監督/ シドニー・ルメット
初めて観たのはテレビ放映の『12人の怒れる男』。モノクロの室内劇にもかかわらず、卓越したストーリテリング、個性的な登場人物、緊迫の演出力にテレビ画面に釘付けになりました。その作品監督はシドニー・ルメット。以降、彼の作品を追いかける事になったボクは、代表作である『狼たちの午後』『セルピコ』などの社会派作品の虜になったものです。もちろん今でも大好きな映画作家のひとりです。
初めて意識したのは昨年初鑑賞した『クレイマー、クレイマー』。もともと俳優の演技を意識して見ることはない(と言うより"出来ない"ですね)のですが、その演技に圧倒されました。次に観た『マラソンマン』『わらの犬』で、その自在な変幻ぶりに驚愕し、今更ながらお気に入り俳優となってしまったダスティン・ホフマン。
元祖ジェームズ・ボンド俳優としてカリスマ的人気を誇り、その後『アンタッチャブル』で新境地を開拓しオスカー俳優にまで上り詰めたショーン・コネリー。2006年に俳優業を引退してもなお、作品中で輝き続ける唯一無二の存在は映画界の宝でした。
この三者が組んだ作品ですから観ないとですよね!ただこの作品、シドニー・ルメット作品群ではあまり評価されていない作品のようなので、正直なところ期待しすぎずに軽い気持ちで観始めたのですが…なんと傑作じゃないですか!コレ絶対に観るべき作品です!
親子三代に渡り泥棒稼業に手を染めるその性がちょっと理解し難いけど、それさえ飲み込めばあとは重厚なドラマに打ちのめされます。
描かれているのは父としての在り方。家族の微妙な距離感やしがらみがリアルに描かれていて、かなりグサグサくる作品です!
公開当時残念ながら興行収入は伸び悩み、映画ファンの記憶に残る作品とはならなかったようですが、これは再評価すべき作品です!再評価お願いします!
【この映画の好きなとこ】
◾︎ジェシー(ショーン・コネリー)
本作の魅力はもう完全にこの人!コネリー本人のカッコよさと、キャラクターの妙!映画史に残る名キャラクターです!
◾︎逮捕
初仕事で初逮捕となるアダム。暗闇から見届けることしか出来ないジェシーとヴィトを捉えた息詰まるシーン。焦燥感スゴい!
◾︎アダム逮捕後の帰宅
妻に「親子三人で泥棒に入り息子のアダムだけ逮捕された」などと言えるはずもなく苦悩するヴィト。演じるダスティン・ホフマンの演技にしびれます!
◾︎塀の中のアダム
逮捕されるも仲間である父と祖父を売らずに一人戦うアダム。「これくらい平気だよ。出所したら三人で山分けしよう」と、筋の良さをみせてくれます!
◾︎息子アダムの釈放を巡る対立
息子逮捕に狼狽える父ヴィト。次第に冷静さを失い自首を思案、何かとジェシーと対立する緊張場面が素晴らしい!
◾︎終わりの始まり
ジェシーが裏切ったと勘違いしたヴィトが遂に警察へのタレ込み、自首を決意する。ここでホフマン、コネリー迫真の演技が堪能できます!
◾︎裁判所の親子三代
もうこの絵面がとにかく好きです!もうホント親子だなあと変に微笑ましいんですよ。
◾︎ジェシーの死
ジェシーの獄死を知り駆けつけるも、ストレッチャーに乗せられたジェシーとの面会にすら間に合わないヴィト。父ヴィトを憎むアダムの思いが天に通じたかのような、徹底的にヴィトを突き放すドS演出!
◾︎ヴィトvs アダム
祖父ジェシーを警察に売ったヴィトを許さず実家に戻らなくなったアダム。ジェシーの死後「いつ交通事故に遭うかもわからないから和解しないか」と持ちかける父ヴィトを激しく罵るアダム。
◾︎ジェシーの葬儀
ジェシーが住んだアパート屋上で行われる葬儀。大勢の参列者の中に制服警官が目立つあたりが微笑ましくも泣けてきます!ジェシーの人柄、人徳が窺える名演出!これズルい!
◾︎続く確執
葬儀会場で再会したアダムとヴィト。互いに詫び合い関係は修復…していませんね。一貫してアダムの顔に笑みの無い事が形式の謝罪であってわだかまりが解けていない事を示しています。実にリアルで心に残る甘くない演出、好きです。
アダムは父ヴィトを嫌い、ヴィトは父ジェシーを嫌う。これは反面教師を軸にした家族愛の物語です。
家族って嫌な事があっても簡単には離れられないからおもしろいですね!綺麗事でまとめないシドニー・ルメットの名演出に思わず拍手ですよ!素晴らしい!
この作品を観ると、誰もが家族の事を考えると思います。ボクの父親も反面教師だったんですけど、割と早く他界した父の葬儀会場には驚く程大勢の参列があり、大勢の方が涙を流してくれました。その時「自分の葬儀にはこれほどの人は集まらないだろうし、これほどの人が涙を流してはくれないだろうなあ」と思った事をはっきり記憶しています。この作品のジェシーの葬儀シーンで、ふとその事を思い出しました。そんな心に刺さるリアルで繊細、鮮やかな名演出、名シーンが盛りだくさんです!重厚なテーマを持つ作品だけど、作風はライトでなんとも言えない愛しさが沸沸と湧き上がる一級品!気軽に観られ、清々しささえ感じる、観るものを選ばない作品です!
ルメット監督作品、コネリー出演作品では未見作がまだまだあるのでこれから漁り始めます!
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