シャロン・テートへの鎮魂歌とすべての映画人への賛美歌
愛に溢れたタランティーノ作品でまさかの涙!!
2019年 監督/ クエンティン・タランティーノ
10本撮ったら引退すると公言している(絶対信じないけど)クエンティン・タランティーノ監督の第9作。
映画オタクでレンタルビデオ店員だった青年が『レザボア・ドッグス』(1992年)で衝撃の監督デビューを果たし、続く『パルプ・フィクション』(1994年)でカンヌ映画祭グランプリを受賞。一躍時代の寵児として大旋風を巻き起こしたあの頃から現在まで、リアルタイムでタランティーノ作品を追いかけられる事を幸せに思います!
B級映画をこよなく愛してきた彼の作品は、どの映画作家も真似することの出来ない唯一無二の存在であり、誰にも脅かされることのない確固たる地位を築いておりましたが、とうとう作品がアカデミー最優秀作品賞にノミネートされるまでになるとは…え!?タランティーノ作品がアカデミー賞!?んー、アカデミー最優秀作品賞ノミネートの冠が逆にらしくない違和感を覚えたのか、どうも気乗りせず劇場鑑賞を見送りDVDにて鑑賞…した事を後悔しました!!

まさかタランティーノがこんな愛に溢れた作品を撮るなんて!!
まさかタランティーノ作品で涙を流す日が来るなんて!!

タランティーノが愛した時代、1969年のハリウッド映画界で奔走する落ち目の俳優と、その付き人兼スタントマンをそれはもう愛おしく描いています。
そして、史実サイドストーリーとして映画監督ロマン・ポランスキー夫人で女優のシャロン・テートをもうひとりの主役に据えこちらも愛おしく…いや、これはもう"愛"を注いで描いています!

1969年は、闇に潜むカルト集団"チャールズ・マンソンファミリー"が暗躍した時代でもあります。シャロン・テートの、その短い生涯を語る時、不本意ながら引き合いに出さない訳にはいかない邪教集団です。
※マンソンファミリーがおこした事件について、ご存知ない方はすみませんがご自身でお調べください。凄惨な事件なのですが、それを知らないとこの作品が作られた意味、そしてなにより"タランティーノの愛"を知る事が出来ません。

なぜこの時代のこの人たちをタランティーノが作品題材として選んだのか?

それを知った時、その慈悲深き愛にきっと涙しますよ!


【この映画の好きなとこ】

◾︎当時のハリウッドスターたち
当時ハリウッドで活躍していた俳優らが登場するんですけど、その再現度レベルが高くて笑っちゃいます!

スティーブ・マックイーン(ダミアン・ルイス)
照明効果も抜群でマジ笑っちゃう!少し誇張気味なとこがツボ!

ブルース・リー(マイク・モー)
甲高い声、喋り方共にそっくり!ハリウッドでギラギラしてるブルースもいい!サングラスは外さない方がよかったけど…

◾︎映画館のシャロン・テート
自身の出演作品を映画館で観るシャロン。観客の反応がいちいち嬉しくときめくシャロンにときめきます!

タラの脚フェチはもはやトレードマーク

◾︎ブチ切れるリック
撮影本番でセリフが出て来ず、人知れず怒りを爆発させるシーンに爆笑!ディカプリオは素晴らしい俳優ですね!

癖でウィスキーボトルを口にしちゃうとこなんか爆笑!

◾︎マンソンコミュニティ
チャールズ・マンソンのファミリーが暮らすコミュニティに立ち寄ったクリフ(ブラッド・ピット)。その不穏に満ちた演出は『悪魔のいけにえ』レベルの恐怖!
住人の制止を振り切りドアに手をかけるクリフ
無言の威嚇…こわい
嫌な予感しかしない…ここでも脚フェチタラちゃん

作品未見の方、及びこれから観ようと思っている方は、以下の記事は絶対絶対読まないでください!衝撃的なネタバレあります!!
-----------------------------------------------------

◾︎1969年8月9日 ※ネタバレ
シャロン・テート邸襲撃をリック・ダルトン邸に変更するも、クリフとリックの凄惨な返り討ちに遭うマンソンファミリー。タランティーノらしく容赦無い最悪な死に方で次々と葬られる3人に超スッキリ!史実を塗り替えた結末は『イングロリアス・バスターズ』に続く快挙!タランティーノは愛と正義の人だ!
リックの飼い犬が股間に噛みつく!!
ぎゃーっ!!
返り討ちに遭い半狂乱の女メンバー
リックの火炎放射器で丸焼きに!!

◾︎隣人シャロン・テート ※ネタバレ
マンソンファミリーの襲撃を逃れたシャロン・テート邸を俯瞰で捉えたラストシーンは、シャロンを見守るタランティーノの目線なのか。史実と異なるハッピーエンドに、本作がシャロンの魂を鎮める為のレクイエムである事に気付かされます…もう涙、涙。
161分という長尺でありながらも、まったく退屈する事なく魅力的な描写にグイグイ引きつけられ、あっという間にフィニッシュでした!長尺観賞の疲労感もなく、むしろもう一度観たくなるほど素晴らしい作品でした!これはまごう事なきタランティーノの最高傑作です!
タランティーノは本作の完成後に"この作品で引退してもいい"と言ったそうです。それほど確かな手応えを感じ取ったんでしょうね。そして映画に対する愛、思いを語り尽くす事ができたんでしょう!まさにその通りでボクも監督最終作品に相応しい名画だと思います!もしこれがタランティーノの最終作になったとしても完全に納得です!
でもこんな素晴らしい作品を観せられたら…やっぱりもう一本観たくなりますよね。

タランティーノは人気監督から名匠へ!


クエンティン・タランティーノ監督作品こちらも