説明や解釈を求めない
これは"人間"が考える映画ではない!
1968年 監督/ スタンリー・キューブリック
ブログ内でも公言している通りボクはSF映画が苦手で、この手の作品を事あるごとに避けて来ました。しかし映画史に燦然と輝く本作、映画ファンを名乗る者としての変な義務感から一度鑑賞にチャレンジした事があります。冒頭の"猿のシーン"は非常に興味深く観れたのですが、続く宇宙シーンから鑑賞をスパッとやめてしまいました(意気地なし!)…。つまり全編鑑賞は今回が初めてなのです!最近スタンリー・キューブリック監督作品が気になり出し、『博士の異常な愛情』『時計じかけのオレンジ』を再鑑賞、非常に楽しめたのですが、正直コレだけはムリだろうと思っていました
それが…なんとムチャクチャおもしろかったです!!いや、これまでこんな映画観たことない!人類初の衝撃映画じゃないですか!?

難解SF映画としての評判はそれとなく耳にしていたのですが、コレSF映画じゃありません!神の映画ですよ!!もう、人間が理解する必要なんてないんですよ!もう見たまんま!!見たまんまの事が起こっているわけであって、見たまんまの未来に人間は向かっていくんですよ!もう見たまんま受け入れるしかないのです!生まれてきた理由、死ぬ理由なんかを理屈付ける事なんか無意味なんですよ、神々が住まう宇宙においては!
キューブリック監督は、"宇宙における人間の位置を描きたかった"とも言っています。まさにその言葉通り!人間置いてけぼりの宇宙世界が展開されます!

さすがに最後の"光の波"がサッパリわからなかったのでググってみたのですが"スターゲイト"??…よくわかんないけどまあいいや!しかし、あとはもう神々しさやら、森羅万象やら凄かったですよ!!とにかく"人知を超える"なんてものじゃなく、"ここで人知は無力、無意味"です!
凄い体験ですよコレ。この作品を観ることで、宇宙に行かずして宇宙体験をしてしまったのですよ人類は!

原作者で脚本も書いたアーサー・C・クラーク曰く、"生物は水中から陸という高次元に移動したことで劇的な進化を遂げた。では我々人類も地球から宇宙という高次元に到達した時、そして再び宇宙の神秘に触れた時、更なる進化を遂げる可能性があるのではないか?"

キューブリックとクラークの思想、構想を全編極端なまでにセリフを削ぎ落としつつも雄弁なるその手腕に脱帽!!そしていつもながらの音楽センスに脱帽!!

宇宙旅行…いやこの映画を観るだけで宇宙体験ができるのだから…観るしかないですよね


【この映画の好きなとこ】

◾︎ジャンプカット
もう伝説ですよね!映画史上最も鮮やかなジャンプカット!その鮮やかな手法に思わず声があがりました!
霊長類最古の道具は動物死骸の骨
未見の方のためにネタをバラしません!ぜひ見て驚いてくださいね

◾︎月面クラビウス基地
月面に現れたモノリスの静かで厳かなその姿は『エイリアン』も霞む程の神々しさと恐怖に満ちています!
ボクここ怖いです!

◾︎HAL9000  
宇宙船ディスカバリー号に搭載された人工知能コンピューターHAL9000に不審を抱いたボーマンとプール両船長が、HAL9000に気づかれることなくコンピューター機能停止を目論むシークエンス。かなりスリリングで大きな見せ場のひとつ!
HAL9000に声が届かない場所で計画をたてるんだけど、唇の動きを読み取られていたという恐怖!
2人を冷ややかに見つめるモニターアイが怖い!!

◾︎HAL9000の反乱
計画を見抜いたHAL9000が乗組員全員抹殺という恐ろしい手段に出ます!1968年の作品ですが、この時代でコンピューターに支配される未来を既に予見しており、現代社会で活躍するAIを見ると恐ろしい時代に突入しているのだなと震えます
船外に出たプール船長は宇宙の闇に葬られ…
人工冬眠中だった3人の博士の生命維持装置は切られる

船外に締め出されゲキオコのボーマン船長は、サーバー電源を落とす為コンピューターの心臓部に侵入!

◾︎次の進化
モノリスと接触したボーマン船長は、(よくわかんないんだけど)未知の世界へと招かれる。そこで人間としての一生を終えるんだけど、このシークエンスも最高!同じセットや美術で別の監督が撮っても絶対こんな説得力のある異次元空間は創り出せないはず!キューブリック凄い!!
スターゲイトを抜けたボーマン船長ひと回り老けた!
テーブルで食事する男は、なんと更にひと回り老けた自分!
ひと回り老けた自分の目線の先には更にひと回り老けた自分が(ややこしい)!
その指が差すものは…
モノリス!!この先は…観てね

全編を貫く静けさも神がかり的で、ホントに広大で未知なる宇宙を感じますね。いやあホントに凄い演出力!!

『博士の異常な愛情』『時計じかけのオレンジ』そして『2001年宇宙の旅』の三作を、キューブリックファンはSF三部作と呼んでいるそうです。ムリと決めつけていた作家の、ムリと決めつけていた作品を鑑賞し、まさかの三部作制覇!しかもハマってしまうとは!しかしこれは長い旅の始まりですね。繰り返し観る三部作ですよコレは。いやあ、キューブリック凄いわ…ホントそれしか出て来ないなあ。

この作品に関しては、多くのファンの様々な考察があり、ボクのレビューはもしかしたら少しズレているかもしれません。しかし、"映画は観た人の感性で自由に解釈していいもの"というボク独自のポリシーから、あえて他の人のレビューや考察は見ず、とりあえず勢いで書いてみました。まだまだこれから先何度も観ることになる作品だと思います。その時にまた何か思う事があれば、再び書いてみようと思います。

キューブリックはスゴい!

スタンリー・キューブリック監督作品こちらも