ウォルター・ヒルってどこまで才人なのよ?

1978年 監督/ ウォルター・ヒル

どうしても好きになれない作品でも、定期的に繰り返し観てしまう癖があります。この『ザ・ドライバー』もそのひとつ。ウォルター・ヒルの監督作品は基本大好きなんです!『ウォリアーズ』『サザン・コンフォート』『ダブルボーダー』『レッドブル』『バレット』あたりが特に好きなんですけどヒル作品でちょいちょい出てくる"寡黙な主人公"が苦手だったんですよ。なんか、暗いんですよね…見てて気が滅入ってくるというか…

先日ジャン=ピエール・メルヴィル監督の『サムライ』という衝撃的傑作に出会い、本作がその影響下にある事を知ったので3度目の鑑賞チャレンジをしましたが…

信じられない!なんでこれまで好きになれなかったんだろ!!寡黙ぜんぜんOK!!

これまでテンションだだ下がりムービーだったのに、いやいやコレは神懸かり的大傑作じゃないですか!!
2回めの鑑賞は確か一昨年だったと思うんですけど、その時には"主演のイザベル・アジャーニは、まあ可愛いかな、好きじゃないけどくらいの上から目線の感想しかなかったし、カーチェイスもべつにーって感じだったし、とにかく根暗な映画だなあ…って思ってたのにいったいコレどういうこと??



【この映画の好きなとこ】

◾︎ザ・プレイヤー(イザベル・アジャーニ)
"まあ可愛いかな"じゃないだろー!!妖艶すぎてこの世のものと思えぬ程の美しさ!『サムライ』もそうですけど、この"運命の女"役は絶対スター女優じゃないとダメ!
登場シーンは、ずっと下向いてるから目も見せてくれないのに圧巻の釘づけ!完全にロックオン!好きです!!
パトロンからの支払いが滞ってるからお金が欲しいとザ・ドライバーに接触。22歳で賭博場勤め、この美貌でこのスレ具合い!
ザ・ディテクティブ(刑事)には「あなたが嫌いだから」

◾︎ザ・ディテクティブ(ブルース・ダーン)
ザ・ドライバー逮捕に執念を燃やす刑事。執念というよりゲームを楽しむ病的な偏執狂
いやらしさが最高!この人のシーンはどれも面白い!!
ザ・ドライバーやザ・プレイヤーばかりでなく、部下からも嫌われてる!(気にしてないみたいだけど)

◾︎不意打ち
盗んだ大金を独り占めしようとする銀行強盗に銃を向けられるザ・ドライバー。
「態度は大きいのに不用心で銃すら持ってないだろ」
あるけど

◾︎列車
大金の入った鞄と共に列車に乗り込んだ洗浄係を追うザ・ディテクティブ。限られた時間と空間での攻防が超スリリング。
乗客の鞄チェックを始めるザ・ディテクティブ
逃げ場を求め席を離れる洗浄係

◾︎カーチェイス
クライマックスのシークエンスがもの凄い!カーチェイスの迫力も当然なんだけど、倉庫内での静かな攻防とかも出色!そして、やっぱりイザベル・アジャーニ!
『ターミネーター』がリスペクトしたカーチェイス!同じこのトンネルで撮影されたそうです
豪速球的迫力!!
イザベル・アジャーニが座っているだけで、別世界を漂っているような異次元映像に!ひたすら美しい!ずっと見ていたい!これもう"伝説のシーン"でしょ!
倉庫内でのかくれんぼ的な…緊張高まる音楽もいい!
もうなにもかも素晴らしい!!

とにかく登場人物が魅力的です!裏社会に生きる人たちばかりだし、刑事でさえアウトレイジ !
人物描写に重点を置き、ストーリーはシンプル!それで91分ってまさに理想の映画!ホント飽きずに最後まで観られます!アクション映画に分類されがちだけど、一番の見どころはやはり魅力的な登場人物の描写に尽きると思います!
また、詩的で美しい画も最高に魅力的です!バイオレンス描写を得意とするヒル監督作品としては異例に思える美的センスにもだいぶウットリさせられます!!どのシーンも現実的設定なんだけど、どこか夢のような、異次元空間に迷い込んだような、特別な空気感があるんですよ。
監督作二作目でこんな傑作をモノにしてしまうなんてウォルター・ヒルはホントすごい!



『ザ・ドライバー』の余波

ターミネーター
1984年  ジェームズ・キャメロン監督作品
トランスポーター
2002年  ルイ・レテリエ、コリー・ユン監督作品
ドライヴ
2011年  ニコラス・ウィンディング・レフン監督作品
ベイビー・ドライバー
2017年  エドガー・ライト監督作品

影響を受けて作った作品が新たな信者を生み、更なるリスペクト作品が生まれ映画文化の底上げをしていく
映画って素晴らしい!!

ウォルター・ヒル監督作品こちらも
『サムライ』はこちらから