この上をいくアクション映画が、世の中に何本あるのか
1985年 監督/ ジョージ・P・コスマトス
本国アメリカでは、そこそこのヒットに留まったシリーズ第1作の『ランボー』ですが、アメリカのベトナム帰還兵からは熱烈な支持を受け、シルヴェスター・スタローンのもとには、捕虜になったアメリカ兵を題材に続編製作を望む手紙がたくさん届いたそうです。
そんな帰還兵たちの生の声を聞いたスタローンは、ベトナム帰還兵たちの鬱憤を晴らすかの如く、痛快なアクションが炸裂する娯楽映画路線に舵を取り、完成した本作はまたもや民衆の心を掴み大ヒットを記録しました。
これは類稀なる心血が注がれた本物のアクション映画。人智を超えたアクションシークエンスと新たなヒーロー像で、スタローンはアクション映画の次なるステージへの扉を開いたのです。
【この映画の好きなとこ】
◾︎タイトル
いかにも80年代らしいオープニングタイトルが最高!観るものの心に炎を焚き付ける!
この音楽!この映像!
◾︎パラシュート
パラシュートが機体に引っ掛かり、宙吊りになるランボー 。スリリングなこの映像は、後の『ミッション:インポッシブル』シリーズに影響を与えたかもしれない。
軍の戦闘服に身を包んだランボーの姿も斬新
◾︎ボート
狭く小さな船内が戦場と化す。一艘の船で考えられるアクションのすべてを詰め込んだ傑作シークエンス。
◾︎マードックへの挨拶
自分を見捨てたマードック司令官に無線連絡をするランボー 。しかし司令官に伝えたのは「命をもらいに行くぜ」の一言。絶対に生きて帰らなければならない理由が一つ増えたランボーは、これ以降更に凄みを増していく。
◾︎闇に蠢く
ゲリラ戦術を描いたシークエンス。人知れずひとりまたひとりと仕留めていく様が鮮烈。その手口も様々なバリエーションが用意されており飽きさせない。
◾︎コー・バオの仇
将来を誓い合う仲になったかもしれないコーを殺したベトナム将校を、爆薬付きの矢で木っ端微塵にする名シーン。逃がして追うランボーの性格描写は『ランボー ラスト・ブラッド』でも見られる。
◾︎戦場
『地獄の黙示録』並に地形破壊をしたのではないかと思われる程、凄まじい銃撃や爆発が繰り返される。CGでは作れない圧倒的迫力の映像が炸裂している。
◾︎空中戦
最後はロシアの大型軍用機に追われる空中戦!力で押し寄せるロシア軍に対し、頭脳戦で迎え撃つランボーのスリリングな決闘。一瞬でつく決着に興奮必至!
◾︎捕虜たちの帰還
捕虜達と帰還するランボーに湧き上がる司令室。ひとり青ざめるマードックに、無言で死刑執行を言い渡すトラウトマン大佐が痛快!
◾︎咆哮
"ランボーを助ける為の設備"とマードックが言ったコンピューターを銃撃破壊するランボー。その咆哮はシリーズ最大!
◾︎敬礼
軍病院へ搬送される帰還兵。ランボーへの敬礼には、ベトナムから帰還したアメリカ国民の思いが乗せられている。社会情勢を反映させる映画作家スタローンならではのシーン。
本作がズバ抜けて面白い理由のひとつに、シリーズ他作品には無い"私怨"が挙げられます。
ひとつめの私怨は、自分を見捨てた卑劣な軍人マードック司令官への復讐。ふたつめは、コー・バオを殺したベトナム将校への復讐。このふたつの私怨がランボーを突き動かしているのです。これがもし、捕虜を救い出すだけのアクション映画であれば、ここまで観客の心を揺さぶる事はなかったはず。
ランボーがマードック司令官に放った台詞、「殺されたくなければ、まだ大勢いる捕虜を救い出せ」を筆頭に、ランボーの怒り、そしてスタローンのメッセージが、アメリカ国民や全国の映画ファンの心にストレートに響いたのです。
そしてその言葉は、アメリカが抱える闇と対峙していく覚悟を決めたスタローンの宣誓とも取れるでしょう。
本作の大ヒットにより、これ以降のアクション映画は大きく変わりました。アクション映画のライバル俳優となるアーノルド・シュワルツェネッガーの台頭もあり、ハリウッドアクション映画界は活性し、飛躍的に進化を遂げました。
70歳を過ぎたスタローンは、現在も第一線で大ヒット作を発表し続けています。2019年に発表されたランボーシリーズの第5作『ランボー ラスト・ブラッド』を完結編として発表しましたが、本作と比較しても衰え知らずのスタローンを見ると、まだこの伝説を閉じるには早いと感じたのはボクだけではないはず。
※2019年1月13日の投稿記事をリライトしました
ランボーシリーズこちらも
戦争を考える映画こちらも