ランボーの痛みを知る。
シルヴェスター・スタローンという映画人が大好きです。人の求めるものが何かを知っており、それを具現化する能力に長けた映画作家です。そうでなければ毎回彼の作品に、こんなにも心躍らされる筈がありません(スタローンのいいなりですね)!
本作の敵は、娘同様に育てた少女ガブリエルを拐ったメキシコの人身売買組織であり、ランボーの自宅が戦場になる超私的抗争。それまでのランボーとは明らかに毛色の違う作品であり、言うなれば番外編的作品です。ようやく里帰りを果たし、平穏な日々に暮らす73歳のジョン・ランボーが犯罪組織に狙われたらどんな戦いを繰り広げるのか?そしてそれが家族の復讐だとしたら?
いやコレ凄い!はっきり言って大問題作!そして大傑作!老いたランボーを愛おしく描きつつも、"蓋をして生きているだけ"の本能をシリーズ最大のパワーで爆発させています!
今回のランボーは、それまですべてのランボーを凌駕する凄惨なる復讐鬼!戦う理由、大義名分がそれまでのランボーにはありましたが、今作の原動力は己の怒り!
『ランボー3 怒りのアフガン』でトラウトマン大佐が言った、"神なら慈悲もあるが彼にはない"を、ついに我々は目の当たりにするのです!!
【この映画の好きなとこ】
◾︎アリゾナでの暮らし
娘同様に育てたガブリエルと乗馬を楽しむランボーの姿を見て、やっと戦場から帰ってこれたんだなと実感。感慨深く涙がこみ上げてきました。
◾︎メキシコシティ
戦場よりもリアルな恐ろしさを感じます。治安の悪さが都会人には何よりも怖い。つまり怖いのはやっぱり人間ですね。
◾︎ジゼル
なんかこいつが一番の悪って感じが拭えないんですよね。笑ってない目、ふてぶてしさ、喋り方。リアルな邪悪さを纏ってます。
◾︎ランボー覚醒
ガブリエルの実父宅を訪れたランボーが覚醒するシーン。突如ざわつきます。
◾︎聴き込み② ※ネタバレ
組織メンバーにガブリエルの居所を聞き出すその手法に戦慄!時間の無さからか対面早々脚にナイフを突き立て、素手で鎖骨を引き抜くなんて!これは喋るよ!!その現場を除き見てしまったカルメン同様に、観客も同じ目撃者として戦慄の現場に震えます!
◾︎ガブリエルの帰宅 ※ネタバレ
無言の帰宅を果たしたガブリエル。祖母が車に駆け寄る姿、泣き崩れる姿を引きで撮る事で生まれるリアルな情景。もらい泣き必須!
◾︎ヴィクトルの首 ※ネタバレ
再びメキシコ入りしたランボーが、組織のツートップ、マルティネス兄弟の弟ヴィクトルの首を斬り、自宅に誘導するかのように道路にポイ捨て!
◾︎スカイフォール戦術
トラップだらけの自宅地下壕でゲリラ戦を展開させるその様は、007シリーズ第23作『スカイフォール』のクライマックスを彷彿!死体にダメ押しの銃弾を撃ち込むなどかなり過激!マルティネス兄弟のラスボス、ウーゴを暗闇に捉えるも恐怖を最大限まで引き伸ばす為、敢えて見過ごすシーンが出色!
◾︎ランボーの痛み ※ネタバレ
ウーゴをコンパウンドボウの矢で磔にするなんて最高!ナイフ片手に迫るランボーの姿に思わず「やれー!」と(心で)叫びましたよ!
シリーズ完結編を謳った本作。異色な作風に戸惑ったファンもいそうですが、ボクは完全に好きです!
戦場や暴力から逃れたいと思っていても、世に蔓延る暴力のスパイラルから逃れられない宿命を描いた傑作。同じテーマを描いた作品としては、サム・ペキンパー監督作品『わらの犬』以来の名作じゃないですか!?
あまりに凄惨な暴力シーンの連続に辟易したファンもいると思いますが、極悪非道のマルティネス兄弟、そして、そのおこぼれで囚われの女性に群がる警察官連中を見るとボクは完全に割り切れました。
人間の本性を剥き出しに描いた作品であり、暴力を綺麗事で否定する"戦争を知らない人たち"を黙らせる事の出来るパワーに溢れた作品です。
ただ"完結編"として用意されたこの作品に敢えて言わせてもらうと、73歳のランボーは無敵の戦闘能力を誇っており、引退すべき理由が見当りませんでした。つまり幕引きには早いと感じたのです。酷な事を言いますが、ズタボロになって散るまでの姿を見たいんですよ!あと10年は戦えるでしょう?70歳でここまでやれるなら80歳のランボーも見たいんですよ!
つまりは次回作を!あと一本お願いします!
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