廃炉時代が始まった この原発はいらない
舘野淳
朝日新聞社
2000.01
ひとこと感想
原発を一緒くたにせず、それぞれの実情をふまえて廃炉にすべき原発をピックアップしている。当然、福島第一も含まれているが、そのさいの決め手は旧式の原発だということ。この点については、今後ももう少し探求しておきたい。
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廃炉にすべき条件として舘野は、以下の4点を挙げている。
1)大地震発生の可能性が高い地域
2)第一世代
3)事故歴からみて問題のある
4)事故隠しなどによって住民に信頼されていない会社の所有
この4点に該当するのは、以下の原発である。
BWR
・福島第一1,2,3,4,5
・浜岡1,2,3,4
・女川1
・島根1
・敦賀1
PWR
・美浜1,2,3
・大飯1,2
・高浜1,2
・伊方1
・玄海1
原発においては、科学よりも、政治や経済が優先されてことが運んでいるが、これを科学有線に引き戻さなければならないと舘野は考えている。
そのうえで、長期的展望にたてば、安全な次世代炉開発の道を提言している。
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舘野の主張については、これまでも何度かとりあげているので、以下を参照。
シビアアクシデントの脅威 科学的脱原発のすすめ(舘野淳)を読む
http://ameblo.jp/ohjing/entry-12050243170.html
福島事故と原子力開発史(舘野淳)――福島事故に至る原子力開発史 、より
http://ameblo.jp/ohjing/entry-12038645369.html
現在進行形の福島事故――終わりのない追及と追求
http://ameblo.jp/ohjing/entry-12055477018.html
地球をまわる放射能 核燃料サイクルと原発 市川富士夫、舘野淳 大月書店 1986.07
http://ameblo.jp/ohjing/entry-12088476172.html
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ここでは特に、福島第一原発についての舘野の評価をみておこう。
「もし集中立地と行うのならば、事故のさいの防災対策を考えれば、少なくとも半径30キロ程度の中では特別な人口抑制策がとられるべきだろう。」(88ページ)
万が一の事故に備えるために「人口」も制限されるべきという考えである。
また、「さらに問題なのは、こうして部品を次々に交換することによって原子炉の寿命がのびたとする考え方」(91ページ)とある。
逆に言えば、40年以上使用してきても廃炉にしない理由は、こうした部品交換にあるということなのだろうか。
いや、そうではないようだ。舘野は、元々の原発の寿命は20年ほどと書いている。それがいつのまにか30年、40年といわれるようになり、さらには60年を主張する人もいるようである。
舘野の目から見れば、当時(1997年において)福島第一は、17-25年の運転年数で「使い古しの原発」(91ページ)と呼んでいる。
「使い古しというだけでなく、タイプや材料が古い、設備利用率が低いという点を合わせると、言葉は悪いが「ポンコツ」原発群といってもよいだろう。」(91ページ)
これは「福島第一」6機全体に対して述べられていることである。
以下は、各号機に対するコメントである。
1号機
事故や故障は68件(以下、すべて1997年までのデータ)、年平均2.5回で、BWR中敦賀1についで2位。
以下、時系列で事故についてふれられているが、まとめると多いのは、以下のものである。
・応力腐食割れによる配管類の破損
・弁類の不良
・燃料破損
・電気回路の故障
2号機
事故・故障は42件。
聞き捨てならない文章がある。
「この原発では給水ポンプや復水ポンプが故障して原子炉圧力容器の水位が低下し、原子炉は自動停止、ある場合にはECCSが働くという似たパターンの事故を繰り返している。」(100ページ)
ECCSについては原発事故においてはむしろ、2号機はなぜかもっとも作動していたといわれているが、どうしてであろうか。1997年から2011年のあいだに何か起こったのであろうか。
3号機
事故・故障は24件。
4号機
事故・故障は10件。
5号機
事故・故障は18件。
6号機
事故・故障は14件。
明らかに1号機と2号機の事故の回数が多い。
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なお、舘野は最も止めるべき原発は、地震問題からして浜岡を第一に挙げている。そしてその次に、旧式の原発として、福島第一などが挙げられている。
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目次
第1章 ハイリスク=テクノロジーとしての原子力発電
・茨城県東海村核燃料製造施設ジェー・シー・オー(JCO)臨界事故の恐怖
・なぜ日本の原発は増えるのか
・原子力発電をどう評価するか
・原子力発電をどう評価するか
・「軽水炉」だけが原発ではない
第2章 原発を点検する
・原発の安全性は
・欠陥と老朽化が目立つ初期原発―東京電力福島第一原子力発電所
・再循環ポンプの大破損―東京電力福島第二原子力発電所
(以下略)
第3章 動燃事故で崩壊した日本の核燃料サイクル政策
・再処理工事=「放射能化学工場」の困難さ
・プルトニウムは天与の資源か邪魔者か
・「夢の原子炉」高速増殖炉の失敗
・「プルトニウム=リサイクル」は「紙上」の楼閣
・プルトニウムの愚かな利用法「プルサーマル」
・頭の痛い放射性廃棄物の処理・処分
・「当面再処理をしないこと」が最上
第4章 非民主的体質を生んだ原子力開発史
・原子力導入のいきさつ
・激しい論争と拡大路線
・二つの巨大事故
・見直しが始まった?
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