もうすぐ四月。
そろそろと展示の支度を。
明かりの温かみが感じられるように和紙印刷を施し、
大理石のフレーム仕立てに。
久しぶりに展示の準備というものをしています。
やっぱり楽しいな。
作品の展示をすることもあるのですが、
むしろ企画の方がだいすき。
世の中にはたくさん素敵なものがあって、
だれもが素敵をもっていて、
みんなで分かち合えたら幸せだろうなぁと。
今回はなんと1ヶ月間も銀座のギャラリーを「どうぞ〜」とお貸しいただいたので、
銀座でしょ?
もっと豊かになるにはどうしらいいだろう〜と。
楽しいだけじゃなく、
感性から感性へと、伝えられるものがあるといいなぁと。
ふと、見えたのは、伊豆蔵先生の作品でした。
一万匹の蚕がつくる、糸の大球体。
自然染織家・伊豆蔵明彦の思想と世界観に触れる記録映画
はじめて、伊豆蔵先生の世界観に出会った時、
あぁ、早い方だったのだなぁと感じました。
きっとその時代には理解されないことが多かったのだろうなぁと。
でも、今、必要だし、今でしょう。
西陣織という伝統の中で、長きにわたり絹織物に関わってこられた伊豆蔵氏。
正倉院に伝わる古来の布の製法を読み解き、そこから独自の技法を開発。
伝えられた伝統を基に、インスピレーションと新しい技術で、数々の芸術作品を生み出し、
国内はもとより、海外からも高い評価を受け、ますます将来を嘱望されたという。
けれど、人の歩む道はまさにそういったものなのだろう。
あるとき、伊豆蔵氏は自然への回帰をはじめる。
やがて、『自然のまま、ありのまま』の境地へと。
だから、氏の作品は、
自然に近づき、自然の懐へと還るための「扉」となってくれる。
私たちの着るものも、私たちの食べるものも、自然に依るもの。
おびただしい生命に支えられてこそ、毎日の生活が維持されている。
そうして、支えられ続けている、私たちもまた。
いつか、還る。
一枚の絹織物から、
一本の絹糸から、
命の鼓動が感じられますように。
-絡帛にこめられた伊豆蔵明彦氏のことば-
私はこれまで時代を遡って歴史的な布帛(ふはく)づくりにたずさわって参りました。
織物から始まり、組物へと変化して網物へと進み、最後に絡むにたどりつき、そこで蚕のとりこになり、現在は自然の原理とか美しさにおどろく毎日です。
織る、組む、網む、絡む、に加えて自然の雨水と太陽光と時間を加えた太陽染めをほどこして自然のすべてをムダにしない方法で自然染織を創作しています。
むかし昔、森の中でまゆ玉を見つけた人類の祖先は、このまるいまゆ玉から細い糸をほどき、ながいながい絹糸をたいらにのばし続けただろう。
わたしのこんな想像を現実にした絡帛が人と蚕の最初の出会いだったであろうと。
絡む蚕のぬくもりに包まれてください。
伊豆蔵明彦
生前、伊豆蔵先生は、
「どうして蚕は死なないといけないの?」という小学生の言葉から、
蚕を殺さずに糸を紡ぐ新たな手法を作り上げられたのだそう。
染織を通して自然への畏敬を表現し、自然との共生をはかる数々の作品の中に、
そっと絵を置かせていただき、その中に包まれる喜びを感じています。
久しぶりの繪の展示を、
「織る」、 「組む」、 「編む」、 「絡む」という素晴らしい手仕事とともにお楽しみください。
ギャラリーの一角には、絹真綿のメディテーションルーム(一人用茶室)「絹庵」の展示があります。
ぜひ、「絹庵」の中に入って、その心地よさと静けさを体感してみてください。
これとってもおすすめです
*
「時を重ね色を重ねた絹と繪の展示」
場 所:銀座ショールーム
期 間:4/5(金)〜4/27(土)
時 間:10時〜17時(最終入場受付16時)
-展示内容-
・色を重ねた布の展示
・絹のメディテーションルーム(一人用茶室)を展示・体験
・自然から命をもらった素材と色彩に触れ、五感で楽しむ
・オープニングに着られる絹の衣ウェアブルアートショー
・クロージングに絹真綿で飾って使えるアートシート絡帛を制作
・時と層を重ねた繪の展示
伊豆藏明彦 Instagram
https://www.instagram.com/izukura_akihiko/
一万匹の蚕がつくる、糸の大球体。
自然染織家・伊豆藏明彦の思想と世界観に触れる記録映画
https://www.youtube.com/watch?v=Z-f4JCSY-1I&t=11s
Remnant Japan Instagram
https://www.instagram.com/remnant_japan/
清原真紀 Instagram
https://www.instagram.com/lalala.cosmos/