私たちはみんな
イツカ
イツカイナクナル
三つの時だった。
おじいちゃんが眠っていた。
縁側からそれを見ていた。
大人たちがお話してて
おじいちゃんが『死んだ』ってわかって
死んだら『キタマクラ』にするってわかって
死んだら『ナマンダブナマンダブ』して
死んだら『ダビ』にして
そうして煙になってお空に消えて行っちゃうの。
イナクナル・・・。
いなくなるんだ。
死んだらいなくなるんだ。
・・・ワタシモイツカイナクナル・・・。
うん。
じゃあどうして生まれてくるんだろう。
いつか死ぬんだったらどうして生まれてくるのかな。
いつか死ぬんだったら何をすればいいかな。
いつか死ぬんだったらどうやったらうまく死ねるかな。
いつか死ぬんだったらどう生きればいいかな。
それからずっとそんなことを考えていた。
いつか死ぬんだったら、友達どうしのケンカなんてどうでもよくて。
いつか死ぬんだったら、勉強なんかどうでもよくて。
いつか死ぬんだったら、些細なことに執着する気にもなれなくて。
それよりもよりうまく死ぬには、どうしたらいいんだろう。
より幸せに死ぬには、どうしたらいいんだろう。
より満たされて死ぬには、何をすればいいんだろう。
生老病死の四苦はだれだって避けることができない。
おじいちゃんもおばあちゃんも
となりのおじさんもとなりのおばさんも
身をもってそれを教えてくれた。
死んでいく人たちすべてが問いかけているような気がするの。
ほら。
こうやっていつかはみんな死ぬんだよ。
おまえはどう生きるのかね。
いくつのも死を見送りながらそのたびにイツカイナクナルを感じてる。
そして、だったらどう生きようか。
そういつも考えてる。
イツカイナクナルを感じるたびに
人生がたいせつに思えるの。
イツカイナクナルまでの愛しい愛しい一瞬の積み重ね。
わたしはイマジネーションしてる。
いつもいつも。
どの一瞬も喜びを産み出すことを。
どの一瞬も愛しさで満たすことを。
宇宙時間ではあっと言う間の時だけど
そうやって創造した喜びや豊かさのエネルギーは
きっと永遠なんだと思うの。
ちいさくてあっという間のわたしだけど
そうやってちょっとずつ宇宙を満たしていくの。
おおきなことは何一つできないけど
出会う人ひとりひとりとあったかい時間を創造するの。
これは人生と約束したこと。
いつかイナクナルまでずっとわすれない。
儚いイツカイナクナル人生だけど
その一瞬一瞬が永遠を産み出すって
あなたは知ってるかしら。
永遠の輝きを紡きだすあなたのもとへ。
贈ります。
いまの会社に勤めて１０年。
１０年。
１０年。
あっという間だったよね。
きっとおばあちゃんになってあの世に行く時も
おんなじように
あっという間だったって思うんだろうね。
友達とそんな笑い話しながら
帰ってきました。
いつか。
イツカイナクナル 時。
ありがとう。
って。
そう言って。
光の粒になって
命の泉 へと還っていくんだ。
あのソラの真ん中へ。