山頭火の「其中日記」昭和8年ー7/11 | 安 明高 の 生 活

安 明高 の 生 活

御先祖の御加護に感謝し
日本各地の神仏などを参拝の後
お四国を錦札で巡拝できる喜びを感じて
種田山頭火さんと
西本願寺,門主さんの魅力を紹介してます。

四国霊場の正式なお礼参りとは
高野山又は京都の東寺なのですよ。
【これは総ての先達が知っているよ】

七月十二日

月明に起きて蛙鳴を聴く、

やがて蝉声も聴いた。


玉葱といつしよに指を切つた、

くれなゐあざやかな血があふれた、

肉体の疵には強い私だが、疵の痛みには弱い私だ。


生死一如、

物心一枚の境地――

それは眼前脚下にある、――それが解脱だ。


五時半出立、

九時から十二時まで秋穂行乞、

三時半帰庵。

 

      米 二升二合         酒 弐十銭
今日の所得          今日の買物
      銭 二十六銭         ハガキ 三銭

 

この二合の酒はとてもうまかつた、

文字通りの甘露だつた。


秋穂はさすがに八十八ヶ所の霊場だけに、

殊に今日は陰暦の二十日だけに、

お断りは殆んどなかつた。

 

朝月まうへに草鞋はかろく
・よち/\あるけるとしよりに青田風
・朝月に放たれた野羊の鳴きかはし
・田草とる汗やらん/\として照る
・木かげ涼しくて石仏おはす(改作)
・炎天の虫をとらへては命をつなぐ
・一人わたり二人わたり私もわたる涼しい水
・重荷おろすやよしきりのなく

 

小豆飯と菓子とのおせつたいをいたゞいた、

まことに久しぶりのお接待!
信心遍路さんが三々五々ちらほらと巡拝してゐる、

わるくない風景である、

近代風景ではないけれど。


女学生が二三人づゝ、

自転車に乗つて、さつさうとして走つてくる、

これは近代風景だ、

そしてこれもわるくない風景だ。


村の処女会の人々が

にぎやかに神社の境内を洒掃してゐる、

辻々には演習兵歓迎の日の丸が

へんぽんとひるがへつてゐる、

これもまたわるくない風景だ。


土手の穂すゝきがうつくしかつた、

旧家には凌宵花、野には撫子、

青田風があを/\と吹く。


徃復七里、帰途の暑さはこたえた、

しかし、

のんべんだらりと坐つてゐるよりも

歩いた方がたしかに身心をやしなふ。

 

吸はねばならない血を吸うて殺された蚊で
・とまればたたかれる蠅のとびまはり
・炎天の雲はない昼月
・草すゞし人のゆくみちをゆく
・炎天の機械と人と休んでゐる
・木かげたゝへた水もほのかに緋鯉のいろ
・茄子胡瓜胡瓜茄子ばかり食べる涼しさ

 

(青空文庫作成ファイル)より

 

(続きます)

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆  

 

今日も命を授けていただきありがとう (^-^)

二度とない人生

だから 今日が大事、今日が大切 

今日もいい日でありますように 【合掌】

 

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