山頭火の「行乞記」昭和5年ー9/7 | 安 明高 の 生 活

安 明高 の 生 活

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【南無大師遍照金剛】 * 7

九月廿五日 雨、宮崎市、京屋(三五・上)
宇佐-25
たいして降りさうもないので朝の汽車に乗つたが、

とう/\本降りになつた、

途中の田野行乞もやめて一路宮崎まで、

そして杉田さんを訪ねたが旅行中で会へない、

更に黒木さんを訪ねて会ふ、それからこゝへ泊る。


けふは雨で散々だつた、

合羽を着けれど、

草鞋のハネが脚絆と法衣をメチヤクチヤにした、

宿の盥を借りて早速洗濯する、

泣いても笑つても、

降つても照つても独り者はやつぱり独り者だ。


こゝは水が悪いので困る、便所の汚ないのにも閉口する、

座敷は悪くない、都城でのはれ/″\しさはないけれど。


列車内で乗越切符書換してくれた専務車掌さんには

好感が持てた、

どこといつていひどころのないよさがあつた、

禅の話は好きで得るところが多いなどゝも語つた。
宮崎県の文化はたしかに後れてゐる、

そして道を訊ねても教へ方の下手、

或は不深切さが早敢旅人を寂しがらせる、

たゞ町名標だけは間違ひなく深切だつたが。


隣室の若夫婦、逢うて直ぐ身の上話を初める、

失敗つゞきの不運をかこつ、

彼等は襤褸を着て故郷に帰つたところだ、

まあ、あまり悲観しないで

運のめぐつてくるをお待ちなさい、などゝ、

月並の文句を云つて慰める。


雨そのものは悪くないけれど、

雨の窓でしんみりと読んだり考へたりすることは

好きだけれど、雨は世間師を経済的に苦しめる、

私としては行乞が出来ない、

今日も汽車賃八十銭、宿料五十銭、

小遣二三十銭は食ひ込みである、

幸にして二三日前からの行乞で、

それだけの余裕はあつたけれど。


子供が泣く、ほんたうに嫌だ、

私は最も嫌ひなものとしては、

赤子の泣声を或る人の問に答へたことがある。


夜になつて、紅足馬、闘牛児の二氏来訪、

いつしよに笑楽といふ、

何だか固くるしい料理屋へゆく、

私ひとりで飲んでしやべる、

初対面からこんなに打ち解けることが出来るのも

層雲のおかげだ、

いや俳句のおかげだ、

いや/\、お互の人間性のおかげだ! 

 

だいぶおそくなつて、紅足馬さんに送られて帰つて来た、

そしてぐつすり寝た。
旅のヱピソードの一つとして、

庄内町に於ける小さい娘の児の事を書き添へておかう、

彼女はそこのブルの秘蔵娘らしかつた、

まだ学齢には達しないらしいけれど

愛嬌のある茶目子だつた、

私が家の前に立つと、

奥へとんでいつて一銭持つてきてくれた、

そして私に先立つて歩いて家々のおくさんを探し出しては

一銭を貰つてきてくれた、

附添の女中も何ともすることが出来ない、

私はありがたいやら、おかしいやらで、

微苦笑しつゝ行乞をつゞけた。


草鞋の時代錯誤的価値、――

草鞋を探し求める時にはいつもこんな事を考へる、

けふも同様だつた。
此宿でも都城でも小林でも晩飯にきつとお汁を添へる、

山家、或は田舎では

さういふやり方らしい(朝は無論どこでも味噌汁だ)。

 

(青空文庫作成ファイル)より

 

(続きます)

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆  

 

今日も命を授けていただきありがとう (^-^)

二度とない人生

だから 今日が大事、今日が大切 

今日もいい日でありますように 【合掌】

 

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