岩井志麻子さんの連作短篇集で、第124回直木賞候補作。

霊感商売女・タミエのもとにやってくるのは、迷える死霊、生霊、そして生きた人間たち。相談されたタミエが、彼らの謎解きに繰り出すオカルトミステリー的なエンタメ要素もあり。

もしもタミエが最強霊媒師だったら、微動だにせずチョチョイのチョイで解決するところですが、霊感が大したことないっていうのがミソ。だから読み手は事件の真相が最後までわからないんです。タミエは両親の探偵調査と合わせて、なんとかかんとか真相を暴き出す。するとドロンと立ち現れる、哀しい人間の性…。

そこへ志麻子先生得意の、明治・貧困・岡山弁が加わり、癖になりそうな唯一無二の世界観!ああこれが岩井志麻子作品を読むことのよろこび…。

●岩井志麻子さんの本(隠居の本棚より)