河野多恵子さんの短編で、第28回川端康成文学賞受賞作。
ある初老の夫婦。妻のお通夜で、夜伽をする夫の、短い話。
若いころに法律を勉強した夫は、妻の遺体を眺めながら、遺体の所有権というのはどうなっているのか、ふと気になって六法全書を調べます。どうやら「遺骨」については所有権は配偶者にあるものの、「遺体」についてはとくに定められていないようす。何だって!?
で、半分キレながら、いわゆる屍姦に至ります。マジか……。
私は、これを愛だとは思えなかった。自分が所有者として世間に認められていないという怒りと、妻が自分の意向を無視していなくなってしまうという焦りと、あとは所有欲とか執着とか、そういうものが先行しているような。
自分を「半」所有者だと感じてしまうところに、なんというか、ついつい世間のものさしを求めてしまう老いた男の哀れさを感じてしまう。「愛してたら法律がどうだっていいじゃん」と言ってあげたい気もするが、うーん、やっぱ同情や共感はあんましできないなぁ。
私が死んだ妻だったら、「死んだからって私をモノのように扱うな!」とキレそうである。
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●文庫出ました

