赤く染まったドア | おはなしてーこのお話

おはなしてーこのお話

ふっと生まれたお話や感じたことを書いてます。

何度も何度もドアを叩く

何度叩いても返事のないドアを叩き続ける

ドアの向こうにその人はいるのに…

その人のことを想い

どんなに辛くても虚しくても

その人が、ドアを開け出て来た時のことを想い

ドアを叩き続けた

たくさんの贈り物を用意して

このドアを出てて来た時に

ここから歩き出せるために

必要な物をありったけ用意した

その人の喜ぶ顔を思いながら…


けれど

ドアは開くことはなかった

その人は、もうそこには居なかった

その事に気がついた時

ドアが赤く染まっていることに気がついた

ドアを叩いていた手からは

血が流れ出していた

その流れる落ちる血と

赤く染まったドアを見ているうちに

恐ろしくなった

恐ろしい形相でドアを叩き続ける姿が

流れる血と赤く染まったドアから見えた

ドアを叩く音、気配さえも

恐ろしい姿を表していたに違いない


その人を想う気持ち

それは美しいこと…

そんな思いに一人陶酔し

ただ、想いを押し付け

その人を思い通りにしようとしていた

赤く染まったドアを見つめ

その醜さを感じた

そして、その醜さは

怒りとともにあった

悲しみとともにあった

想いが伝わらない怒りと悲しさがあった


そんな怒りと悲しみを感じ

何一つ残さず去ってしまった

その人の気持ちを感じた


そして、謝ることすら許されない

悲しみが生まれた