ここはどこ?
忘れていた懐かしい場所
たくさんの緑が茂った木々に囲まれるように
静かなに水面を波立たせる湖
木々の間からさす日差しが
湖を時折りきらきらと輝かせる。
ほっとする場所。
そんな風景をずっとたたずんで見ていた。
ふっと、なぜここに来たんだろうと思う。
「待っていたよフフッ」
「お帰りフフフッ」
次々にそんな声がいろんなところから聞こえる。
その声がどこから聞こえているのか分からないけれど
不思議に思いながら、どこかで聞いたことのある気がしていた。
「私を知っているの?」と聞いてみた。
「知っているよ。」
「あたりまえじゃないか~」
「何言ってるの~」
そんな優しい笑いのこもった言葉が返ってくる。
その後に
「これを取りに戻ったんだろう?」という声がした。
その声を聞いて、ふと自分の両手を見ると
ふたの上にガラスが一枚貼ってある小さな木箱があった。
「これを取りに来た?」そう思ったとたんに
「そう、それはあなたがここに置いていったもの」
そう答える声が聞こえた。
「あなたがここに最後のお別れに来た時に置いていったもの。
そして、暗いグレーの重そうな分厚いマントを頭からすっぽりと着て
ここから離れて行ったのよ。
その時のあなたは、とても神妙で怖い顔をしてた。
その時、私たちは、何があったのか分からなかった。
ただ、あなたが何かを決めたんだということだけは分ったわ
だから、あなたの置いて行ったこの箱は
あなたにとってなにかとても大切なものだとも思った。
そして、きっとあなたが取りに戻ってくる気がしたから
それまで大切に預かっていたのよ。」
その話を聞き、右腕に分厚いコートがかかっていることに気がつく。
そして、ゆっくりと木の箱を開けた。
ぱぁっと、たくさんの色とりどりの無数の鳥が
その箱から解き放たれたように飛び立っていき
木々の枝や湖のほとりに舞い降りた。
今まで、緑だけの静かな場所がかわいい華やかさな風景に変わった。
鳥たちが飛び立った後の箱には
小さな鍵が一つあった。
金色の少し古ぼけた形の鍵
その鍵を見たとき
心の扉を開ける鍵だと思った。
きっと、自分を守るため、傷つかないために
心に鍵をかけ二度と開けないと決めここを離れたんだと思った。
そして、また、この鍵を使おうと決め
ここに戻ってきたんだと分かった。