~ある国の王さま。~ | おはなしてーこのお話

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ふっと生まれたお話や感じたことを書いてます。

ある国の王さまは、国の民に愛され尊敬されていると自負していました。

それは、自分がいい国を作っている証拠だと思っていました。

愛されて当然、尊敬されて当然だと思っていました。

だから、王さまはとても誇らしく思っていました。

 

ある日、会議が終わり新しい政策を決め

何事もなく、自分ではいい政策を掲げたと満足して席を立ち

いつものように側近と近しい世話係を従えて

お城の大きな廊下を歩いていました。

とても気分良く歩いていたのです。

 

突然、背中に熱く鈍いドスンとした衝撃を感じました。

そして、周りが騒ぎ出しました。

そして、何が起こったかわからないまま、

強い痛みと立っていられないほどの足の痛みと急速に力が抜けていく感じと

意識があるのか夢の中にいるのかわからない感覚に襲われていました。

 

何があったのわかないまま、王さまはベットの上に横たわっていました。

どのくらいの時間が経ったのか

いい政策を立てたと思っていたのは、夢だったのではないかと

それともこれが夢なのか、よくわからないまま、目を開いた。

 

そばにいた側近がそんな王さまに気が付き

「王さまが気がついた。お妃さまにお知らせしろ」いうと

誰かあわてて出て行く足音と声を聞いていた。

 

そして、妃がやってきて、心配した安堵したような顔で、王さまに声をかけた。

そして、王さまは聞く。「何があったんだ?」と

妃がびっくりしながら、王さまに世話係の若者に背中を刺されたことを告げた。

 

王さまは、妃の言うことも理解できないでいた。

ただ、それで背中の痛みを感じ、横に寝かされていたのかと思った。

 

それから、毎日医者の治療を受け、

側近たちの報告を受けるだけのベットの上の生活になった。

王さまは、医者や側近たちの話すことをただ聴くだけという状態で

言葉に出すことは「ああ、そうしてくれ」という言葉だけだった。

 

そんな王さまを見ていて、

側近が妃に息子に実際の仕事を任せるよう王に進言してほしいと言います。

それを妃が王さまに話すと、あっさりと王さまはその提案を聞き入れた。

 

そうして、国のすべてのことは、

息子の王子が王の代わりをし、決まった後に王さまに報告されるだけになった。

ある日、王さまを刺した世話係の刑の執行されたことが王さま報告された。

 

それを聞いた時、初めて王さまは聞いた。

「なぜ、どんな理由があって私を刺したのだ?それを聞いているか?」と

その言葉に報告をしていた側近が、一瞬、口ごもった。

王さまはそんな側近に刺されてから初めて強く「いいから、言え!」言った。

 

その迫力に側近は言いにくそうにしながらも言った。

「あの世話係は病気の母親を持ち、その母親を食べさせることはできても

 医者にも掛かれず、薬も高く手に入れることができずにいたらしく

 そんなことも知らずに、王さまが毎日ぜいたくな生活をし

 本当に弱い者の苦しみを知らず、よい国を作っているいい

 皆が幸せだと言い続け、誇らしげにしている王様を恨んでのことだそうです。」と言った。

 

その言葉に「もういい」と答えた王さまを見て、側近は、すぐさま部屋を出て行った。

 

それから王さまは、何も話さず、前にもまして喋らなくなってしまった。

 

王さまは、毎日同じことを考えていた。

「私は、間違っていたのか皆にとって良いことをしている

 だから尊敬されていたのだと思っていた。自分だけがそう思っていたのか。

 私はそんな王じゃなかったのか!?」と

失望と自分の馬鹿さ加減を恥じ、何もかも信じられなくなっていた。

 

そんな毎日を過ごしていた王さま。

傷はよくなったものの刺された場所が悪く、足に思うように力が入らなくなり

前のように自分の足で歩くことができなくなっていた。

そんな姿を見せることも恥じ、国の民に姿を見せるのは

国の大事な記念日だけだった。

国の民の前に出たくなかった。

愛されもせず、尊敬もされていない王の自分が嫌でならなかった。

 

そして、王さまがそんな状態が続き、城の中が不安定になり始める。

王がいながら、王でない息子が国を作っていくことを不安に感じ

息子を軽んじるものまで出始めていた。

 

この国は、王が亡くなるまで王の交代はない。

どんな王であろうと、その王が亡くなるまで、王は国の絶対決定権を持っていた。

 

それも王にとっては苦しみだった。

国の民にも愛されず、国を不安定にしている存在の自分がいることが

自分を邪魔もののように思わせた。

 

そんな風に思い、どんどん生きていく力をなくしていく王さま。

そんな王を見ていた妃がある日、

今、息子は大変困っています。懸命に国のためにと頑張っていますが

 それを軽んじる者がいて、彼は、悩んでいます。

 どうか、息子のために王の称号を渡してください。」

 

その言葉を聞いていた王さまは、驚き口ごもりながら

「しかし、代々続いた国の習わしがある・・・」と言った。

そんなことを言いながら、王は、王の称号がなくなったとき

自分は本当に誰にも見向きもされなくなるのではないかと怖かった。

 

そんな王さまに妃は

「王さまは、この国すべての決定権を持っているのでしょ!?

 だったら、それを変える決定権もあるのではないのですか!?

 王さま、どうか王として仕事ができないなら、父親としての役目を果たしてください。

 お願いします。」ととても強い意志で王さまに語りかけます。

 

その妃の想いに押されるように王さまは、「うん…よかろう」と言ってしまった。

その返事に妃は、泣いて喜びます。

王さまにありがとうと何度も言い、すぐさま側近を呼び、そのことを聞かせます。

 

その姿に、どんどん王さまは自分の心が一人になっていくように感じます。

 

それから数日後、そのことが、国中に通達され、入念な準備が進められ

新王の即位式が執り行われる日がやってきます。

 

王さまは、自分の部屋でその日がやってくるまで孤独な気もちを抱えたままでいました。

 

王さまは、即位式で息子に王冠を渡し、王の称号引き渡しの書類にサインをした。

もう、あきらめの気持ちと生きる気力も自分そのものをも失ったようだった。

 

そんな気持ちで、即位式の宴にも出ず、自分の部屋にこもった王さま。

宴が始まりずいぶんの時間が経ったとき、妃が入って来た。

 

妃に「もう終わったのか?」と聞く王さま。

妃はいつものように

「まだですが、だいぶ落ち着いてきたので私は一息入れようと思って出てきました。」と言った。

 

そして、少し間が空いて妃が

「王さま、息子にも妃を迎えなくてはいけませんね。

 そうしたら、本当に何もかも息子に任せられますね。

 その後は、二人でのんびりやっていきましょうね。」といつもの口調で言う。

 

王さまは、びっくりした。

もうこれからずっとひとりで、

ひっそりと暮らしていかないといけないと思っていたのに

妃がそんなことを言ってくれると思いもしなかった。

 

王さまは、うれしかった。

そして、「ずっと一緒にいてくれるのか?」と言っていた。

妃はそんなこと言う王さまに

「ずっと一緒ですよ。だって、私はあなたの妻なんですよ。忘れてしまったんですか?」と

少し笑いながら答えた。

 

その言葉を聞いた王さまは、大きな声で泣いてしまいそうになるくらい安堵した。