~庄屋~ | おはなしてーこのお話

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ふっと生まれたお話や感じたことを書いてます。

自分のたくさん持っている田畑を

たくさんの小作人に米や野菜を作らせている庄屋の男がいた。


その村は小さかったが、

その村の大半の人がその庄屋の田畑を耕し

そこの農作物の一割を賃金代わりにもらいながら

自分たちの持っている小さな田畑を耕し生活をしていた。

大半の村人が、やっと生活できるほどの貧しさだった。


その庄屋は、そうして、得た米を

自分の屋敷の敷地の中にある大きな蔵に収めていた。


ある時、庄屋は田んぼの様子を見に行っていた。

今年の米のでき具合を確認しに行っていた。

小作人が、ごまかしはしないかと思っていたので

毎年、米が実る頃そうやって見回っていた。


そんな時、その田んぼを任せている村人の子供が

そこの米の穂に触っている姿を見かけて

米の取ろうとしていると思い、その子供に向けて大きな声をあげた。


子供は、その声と庄屋の怒っている顔にびっくりして

何も答えずに逃げ出した。

それを見て庄屋はすぐさま追いかけた

子供の握っている手に米があると思って追いかけた。


そして、その子に追いついて、その子の肩を力任せにつかんだ。

その拍子に、田んぼの用水路に一緒に落ちてしまった。

そして、自分の下敷きになって落ちた子供がぐったりしていた。


大きな声を出し、助けを求めた。

そして、近くにいた村人の手をかり

その子をその子の家に送り届けた。


その時、庄屋は「この子が米を取ろうとしていたからこの子が悪いんだ」

そう言って、その時あったことを話し、そのまま、その家を出た。


そんな出来事があった数年後

天候の悪い日が続き、農作物が取れない年が続いた。

村の人たちは、今まで以上に生活に困窮した

そんなことが分かっていながら、庄屋は小作人の賃金を上げようともしない。

自分の蔵にはたくさんの米を蓄えたまま…


そして、ついに村人たちがそのことに怒り、庄屋の家を、蔵を襲撃した。

庄屋はそれを見て、止めようと村人たちの前に姿を見せた。


でも、村人たちの気迫が怖くなり逃げ出した。

それを追いかける村人たち、そして、一人の男が庄屋の右肩を後ろから鎌で切りつけた。

庄屋はその痛みに前に倒れこんだ。

鎌はさび、切れにくくなっていて、

それを力任せに体に切りつけようとするから余計に痛みがひどかった。


庄屋は、なんでこんな目に逢うんだと思っていた。

そして、切りつけた男は、数年前に庄屋が米を盗んだと言って追いかけた子供の父親だった。

その顔を見た時、その父親のその時の怒りが伝わってきた。


庄屋は、人を信じていなかった。

村人の貧しさも分かっていた。

皆に同じように蔵の米を少しでも分ければ

その貧しさも少し楽になることも分かっていた。

でも、人を信じられない庄屋は、同じように分けても

ずるいものは、たくさん取ろうとする。

だったら、分けないほうがいいと思っていた。

それに、そんなことをするのは偽善だと思っていた。


そんなことを思っていた私が間違っていたのか

もっと分けていたらよかったのか

ずるいことを考える奴がいることがいけないんだ!!

そんなことを痛みを感じながら思っていた。