~ 子供 ~ | おはなしてーこのお話

おはなしてーこのお話

ふっと生まれたお話や感じたことを書いてます。

真っ白で、かわいい純粋で無垢な小さな子供を抱えた父親がいました。

父親は、その子を大切に周りから守るように体を丸めその子を抱えています。


父親は、周りのこの世界を汚れて理不尽な世界から

その子供を守ろうとしていました。

その子の純粋さが、この世界に触れることで汚れてしまうように思っていました。


その父は、そうした怒りや悲しみねたみや不満を押し殺し

同時に楽しむこと喜ぶことも、人を悲しませ傷つけることだと思い

そのすべてをやめて、この子を守ることだけに懸命になっていました。


そんな風にして、子供を守りながら生活していたある日


彼の大きなに体に覆い隠されている子供に気づく人に出会います。

そして、その子供を見て、なんて「かわいらしいんでしょう」と微笑みます。

本当にうれしそうに、その子に微笑みかけます。


そして、その子に手を伸ばし抱きしめようとします。

彼は、驚いてしまいます。

こんなに必死になって隠しているのに、どうして気づいたんだろう

そして、なんでこんなにうれしそうに微笑んでいるんだろうと思いました。

そして、その人が差し出した手を拒もうとしました。


でも、そんな彼の気持ちに反して

手の中の子供は、その人の差し出された両手に抱かれようと身を乗り出して

するっと、彼の手を抜けてその人に抱かれていました。


もう、彼にはどうすることもできません。

もう、二度とその子が自分のもとに帰ってこないような絶望感を感じていました。


そして、ひとしきり子供を抱いたその人は、「ありがとう。」と言って

本当にうれしそうにして、その子を彼の腕に返してくれました。

彼は、本当にホッとしました。


彼は、この子を最後の砦のように思っていました。

何もない自分にとって、たった一つ与えられたものだと思っていました。


それから、何度も、同じようにその子を抱かせてほしいという人に出会います。

そして、そのたびに子供はその人に手を差し出します。

そして、「ありがとう」という言葉と一緒に

子供は彼の腕の中に帰ってきます。


そんな、子供を抱く人たちのうれしそうな顔を見るたびに

彼は、もしかして、この世界は汚れていないのかもと知れないと

そんなことを思い始めていました。


そして、そんなことが繰り返される中

本当は、彼が自分のことをけがれていると思っていたんだと気がつきます。