王である彼は、見知らぬ旅人に
自分の想いのすべてを話したことで
王である自分として生きていこうと思った。
そして、以前と変わらない毎日を過ごしていた。
そんな日々のなか、ふっとあることに気づく
以前のように、今の人生を早く終わらせたいと願わなくなったことだ
そのことに気づいたとき
いつ死んでもいいと思いながら
王としての失敗を恐れ、他国からの刺客に恐れ
本当は、死にたくないと必死に自分を抑えてことに
王は、おかしくなった。そして、思った。
どちらにしろ、死ぬのであれば、思うような国づくりをしよう
それが失敗に終わろうと、やってみようと思った。
そして、側近たちを集め、自分の願う国づくりを話す。
側近たちの誰一人として賛成する者はいなかった。
むしろ、王がおかしくなった。
何を言っているんだと反対するものばかりだった。
そんな言葉を聞いている中、王は、
「これはこの国の長である王の命令である。
その言葉を聞けぬものは、即刻この城から出ていくがよい。」
今までに聞いたことのない王のはっきりとした強い口調に
彼の決意と気迫を感じた、
側近たちは誰もその後口を開くものはいなかった。
王は今まで、恐れと不安という思いとともに
自分の思う国づくりができなくても
とにかく、自分が王である以上、今より悪くならないようにできる。
それだけでも、いいと思っていた。
でも、いま彼は、自国の民たちが今よりも笑顔で過ごせるように
自分のできることをやって行きたいと思った。
自分の命が終わるまで、できることをしてみようと思った。
そんな、彼の決意に一瞬不安がよぎった。
成し遂げることができるのだろうか?
途中でこの命が絶えたとき、民たちが混乱するのではないか?
今以上に困窮するのではないか?
そんな不安がよぎる。
けれど、その瞬間、彼ははっきりとわかった。
自分がやることは、道の最初を作ることなんだと
そして、その道を自分の手で作り上げられなくても
本当にその道を民たちが望むなら
きっと、その道を自分たちの手で作り上げてくれるだろう。
そして、彼は、自国の民の力を信じようと思った。