~ 走りつづける ~彼は走り続ける。 彼の足を止めようと草木や蛇や想いに囚われないように 走り続ける。 彼の足を止めようと 目が開けられないほどの風や 焼け焦げるほどの太陽、 前が見えなくなるほどの雨のなか ひと時も足を止めず走り続ける。 愛された記憶のない自分を、 愛した記憶のない自分を せめて自分だけは愛してやろうと 彼は走り続ける。 何もない、何もできない自分をわかってやろうと ただ、走り続ける。 こうすることしできない自分を抱えながら ただ、走り続ける。