~ ふたり ~ | おはなしてーこのお話

おはなしてーこのお話

ふっと生まれたお話や感じたことを書いてます。

ふつうの男の子がいた。


周りのすべてが、楽しみで詰まっているように彼には見え

男の子は何をしようか、何が一番楽しいのか

いろんなものの前で、わくわくしながら考えていた。


そんな男の子の後ろから

「一人になるんだ。」「一人きりになんだよ。」という声が聞こえてきた。


後ろを振りかえると

その男の子と同じくらいの、

どこか大人びた感じの不機嫌そうな顔をした男の子が立っていた。


男の子が「何のこと?」「僕はひとりじゃないよ。」と言い返した。


不機嫌そうな男の子が

「お前が、楽しくしていたって誰も喜びはしないよ。」

「楽しくしてるお前のことが、うっとしいと思うくらいだ。」

「お前なんて、いてもいなくてもおんなじなんだよ。」

少し意地悪な笑いを浮かべながら、男の子に言った。


男の子は、頬を膨らませ怒ったように

「そんなことないもん。」

「僕は、僕が楽しいと思えることができたらいいんだもん。」と

怒ったように言い返した。


そんな言葉を聞いて、不機嫌そうな男の子が

「だからだよ、自分さえ楽しければいいなんて言ってるやつ

 そんな能天気な、自分勝手な奴なんて迷惑なだけなんだよ。」

「そんな奴だから一人きりになってくんだよ。 誰もお前のことなんか気にも止めないんだ。」


そんな言葉を聞いて男の子は、今にも泣き出しそうに目に涙が浮かんでくる。


そんな、男の子を見て不機嫌そうな男の子は、まだ、続ける。

「お前みたいなやつは、ずっとひとりなんだよ。

 人は、自分の大切な人や大事な人だけと幸せにやっていられたらいいんだよ。

 だから、お前みたいなやつが幸せであろうとなかろうと関係ないんだ。」

「お前が楽しめば楽しむほど、一人になっていくんだよ。はははっ」と

かれたような笑いを見せながら言う、不機嫌そうな男の子。


ついに、男の子は泣き出してしまった。

その涙を右手の袖で一生懸命ぬぐっていた。

何度も何度もぬぐっては、とまらない涙を拭き続けていた。


少し、涙が落ち着いたころ

男の子は、不機嫌そうな男の子のほうに顔をあげる。


その時、男の子には、不機嫌そうな男の子の顔が、ひどく悲しそうに見えた。

そして、不機嫌そうな男の子の姿を見た。

たくさんの傷跡のある体、いまにも血がにじみだしそうな傷

何度も何度も、それをふさいだ後がある。


男の子はその姿を見て、今迄に感じたことない痛みを感じていた。