~修道女になった少女~ | おはなしてーこのお話

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ふっと生まれたお話や感じたことを書いてます。

小さな田舎町に16歳になる少女がいました。

その少女は、神を信じ、いつも神のことを語っていました。


ほとんどの人が毎日祈りを捧げ、神の存在を当たり前のように受け入れている

そんな、人々の中で育ってきました。


神の教えを行えば世界は必ず良くなると思っていました。

でも、彼女がそのことを話し出すと

周りの人は、めんどくさそうにして彼女の話を聞こうとしません。


少女は、だれも耳を傾けてくれない。誰もわかってくれない。

独りぼっちになったように思えました。

そして、だんだんと腹が立って来て、私だけ分かっていればいい

神にだけ分かってもらえばいいと

もっと神のことを知って、神に近付きたいと修道女になることを決めました。


町を出、大きな町の有名な大きな教会の修道女になりました。

修道院での初日の朝、聡明そうなシスターが、

教会の中を案内をすると少女の部屋へやってきてました


少女は、わくわくしていました。

自分の知りたいこと学びたいことが、やっと学べるのだと思い


教会の中は、とても広くすべての見て歩くのに半日かかりました。

自給自足のための大きな畑。大きな聖堂。大きなホール。

少女は、何を見ても何を聞いてもわくわくしてしまいます。


たくさんのシスターとすれ違う長く静かな廊下も

彼女の胸を膨らませるには十分でした。


やっとわかってくれる人の中で暮らせる。

一緒に学べる仲間ができると喜んでいました。


ところが、教会での仕事は、町の貧しい人たちに

ホールを開放し、一杯のスープをたbてもらうための給仕の仕事でした。


毎日、のほとんどがその仕事で終わります。

少女は、いやになっていました。

そんなことをするためにここに来たんじゃないのに

もっと、神のことをたくさん知りたくてやって来たのに

神に愛されたくて、愛される人間になりたくてやってきたのに・・・


そして、彼女は、シスターに言いました。

「どうして、神について学ばせいてくれないのですか?

 私はこんなことをするために、修道女になったのではありません。」


そんな彼女にシスターは

「これが学びなのですよ。

 ここに来る人たちの姿を見、言葉に耳を傾けなさい。」と言いました。


少女は、何をすればいいのか、何を言っているのかその時はわかりませんでした。


そして、相変わらず、ホールを開放し、

そこに来る人々を迎えスープを運ぶ仕事をしていました。

毎日たくさんの人がやってきます。大半が貧しい人々です。

でも、中には貧しい人を装って様な人もやってきます。

それでも、スープを運びます。


ある時、スープを前にスプーンを手にしようとせず、

じっとスープを見つめている青年の姿が目にはいりました。


少女は、どうしたんだろうと思い声を掛けます。

「暖かいうちに食べてくださいね。」と

その青年は、はっと気が付き少しずつスープを口に運びます。

少女には、その姿があまりに力がない感じに見えました。

そして、その青年は何も言わず、スープを飲みホールを出て行ってしまいました。


そんな人もいれば、スープを前に涙ぐむ人も

ここでスープを飲めるのは当たり前のように横柄な態度を見せる人もいます。


そんな人もいるのに、そんな人から何を学べというのだろうと少女は思っていました。


そんなある日、あの青年がスープを飲みながら泣いています。

その青年は毎日のようにホールに来ていましたが、

いつも一言も言葉をしゃべらず、スープを飲んでいくだけでした。

そんな青年が泣いていました。

少女にはその姿が、スープを飲むということで、何かを忘れようとしてるように見えました。


そんな姿を見て、少女は、自然と彼のそばに行き何も言わず

彼の背中に手を当てて、彼が席を立つまでじっとそばに座っていました。

そして、青年はスープを飲み終わると涙を拭き何も言わず出ていきました。


その後ろ姿を見送っていて少女は、愛おしいと思いました。

彼の悲しみがこのスープで少しでも癒されるなら

温かいスープを心をこめて運びたい思ったのです。

彼に対して、自分に出来ることはそれだけなんだと思いました。


そして、思いました。

ここに来る人たちは自分の中にある自分なのではないかと。

貧しさを悲しむ人。スープを味わえることに感謝する人。

悲しみのあまり何も言えず、助けを請うこともできない人。

社会が悪いからスープくらい飲ませてもらって当たり前だと怒っている人。

そんな様々な人の思いが自分の中にもあるように思えたのです。


そして、修道女になった自分の思い。

誰もわかってくれないと周りの人の怒り

周りの人は何もわかっていない、わかっているのは私だけだ。

自分の考えが正しい。皆が間違っている。

自分が特別なもののように思い、

そんな自分の思いと違う世界を見ていたくなくて、

この修道院に、本当は逃げ込んできただけなんだと


そして、貧しい人、不幸な人だけが苦しんでいたり、

そういう人たちだけを神は救おうとしていると思って

区別していたことに気が付きました。


これからは、心をこめてスープを運ぼうと思いました。

それが、神の愛を伝えることなんだと思いました。