朽ちた木で出来た十字架を
縄で背負わされた女の子がいました。
それを背負わせていたのは、大人になった女子自身でした。
女の子は、寂しさとうらやましさで
花ちゃんにひどいことを言ってしまったことを
ずっと悔やみ、新しいお母さんが来て
うまくいっていないと聞いて、それを自分のせいだと思い
そのお母さんが病気になったのも、自分のせいだと思い
その時に感じた、妬みという感情を
戒めのように、朽ちた木で十字を作り背負わされていたのです。
そして、女の子は自分の人生を封じ込めました。
花ちゃんにしたことを、周りにしてきたことを
すべて自分が悪いんだと思い、その贖罪のために
自分として生きることをあきらめたのです。
どんどん大きくなるたびに、
いろんなことを自分に科し、自分を責めては、
木の十字架に乗せ、
その十字架で感情も押さえ込むようにしたのです。
でも、もう女の子は限界でした。
6歳の女の子には、あまりに荷が重すぎたのです。
生きていくことすら、苦しくて仕方なくなっていました。
そして、いつの頃からか
生きていくことに早く終わりが来ることしか、
願えなくなっていました。
あるとき、そんな女の子に花ちゃんに「ごめん」ってだけ
謝ることだけしてみたらと言ってくれる、
お友達と出会いました。
女の子は、躊躇しました。
今さら、どう謝ったらいいのか、
すごく傷ついていると言われたら
どうしようと思ってしまったのです。
また、背負うものが大きくなると思ったのです。
女の子は悩みました。勇気が出ないのです。
悩み続けました。
そして、ようやく、とにかく謝ろうと思えました。
女の子は、花ちゃんに謝りました。
花ちゃんは何も言いません。
ただ、新しいお母さんが来て、うまくいってないかったのは、
おばあちゃんとお母さんの間だったということ
おばあちゃんが、花ちゃん達にかけていた不憫だという気持ちと愛情が
新しいお母さんとの間を拗らせてしまい、
花ちゃんたちを巻き込んでしまったということがわかったのです。
花ちゃんは、何も言わず女の子を抱きしめてくれました。
本当の友達を迎え入れてくれるような感じでした。
女の子は、何かが溶けていく感じがしました。
そして、その女の子の背から十字架が緩んで落ちました。
そして、花ちゃんと別れた女の子に
大人になった、女の子が尋ねます。
「何かしたいことはある?」と
そうすると、女の子は
「たこさんウィンナーときれいな玉子焼きと
俵のおにぎりのかわいいお弁当が食べたい。」と言いました。
そして、それを丸いピンクのかわいいお弁当箱に作ってもらいました。
女の子は、それを開けると、目を輝かせてとてもうれしそうにして
「全部、一人で食べてもいいの?」と聞きます。
大人の女の子が、「いいよ」と言うと
素手で、おにぎりを取って、ちょっと考えて
そのおにぎりを大人の女の子に差し出しました。
大人の女の子は、「全部一人で食べてもいいんよ」と女の子に言います。
女の子は、「一緒に食べたほうがおいしいよ」と言って
そのおにぎりを大人の女の子の手に渡します。
そして、お弁当を食べながら、女の子はいろんなことを話しました。
お母さんは、かわいいお弁当は作れないけど、
甘い玉子焼きもおにぎりもすごくおいしくて、大好きで、
お母さんの漬けた沢庵も大好きだということを
とても楽しそうに話します。
そして、女の子は食べ終わると、立ち上がり
解けた十字架をまた、背負い始めました。
大人の女の子は、どうして?と思いました。
そんな大人の女の子を見て、女の子は言います。
「今までずっと一緒だったし、今度は、いつでも降ろすことが出来るから」と
前より緩んだ縄で、十字架を背負って笑っていました。
その姿を見て、大人の女の子は、
大人になった花ちゃんにも謝ろうと思いました。
そう思ったとたん、何かが溶けていきました。