~ 黒人の青年 ~ | おはなしてーこのお話

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ふっと生まれたお話や感じたことを書いてます。

白人の家で使用人として働く黒人の青年。

青年は自分がとても価値のない人間だと思っていた。
そして、必要がなくなったら
夕食のスープに毒を入れられ殺されると思っていた。

それは、小さいころ祖父母から聞いた
黒人が奴隷だったころに、黒人達の間で噂のように広がった話だ。
それが、今も、もしかしてあるのではと思っていた。

そして、彼にとって白人家族の姿が一番辛かった。

彼らはとても善良な人々だ。
それは、彼もとてもよく分かっていた。
けれど、それが彼を傷つけた。

差別を受けたことのない白人の彼らにとって
今だに差別を受け、働くところも自由に選ぶことも出来ない。
そんな思いを想像することもなく、幸せな姿を見せる。
その姿が、青年の心を傷つけた。

それは、白人の彼らのせいではない。
それも、よくわかっていた。

それでも、その姿をうらやみ、妬み。神をうらんだ。
彼らだけが、神の祝福を受けていると思った。

青年も神を信じ、毎日の祈りを欠かすことはなかった。
教えを守り、心に誇りを捨てないでいればいいんだと思っていた。

けれど、白人を見るたびに、そんな気持ちに自信がなくなる。
そして、心の中は真っ暗になる。