~ 鞭を持つ女性 ~ | おはなしてーこのお話

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黒い長いドレスの腰に赤い布のベルトをし、
黒髪を頭の上高く結い、手には長い黒い革の鞭を持ち、
その手を大きく振り上げ
白い服に水色の布のベルトをした、
少年を打ち続けている女性がいた。

鞭を打たれ続ける、その少年は、何度も鞭を体に受け
ズタボロになりながら、何度も倒れこんでは立ち上がっていた。
振り下ろされる鞭をよけようともせず、
その鞭を受けるために立ち上がっているように

何度も立ち上がり、鞭打つ女性の顔を見て
彼女の振り下ろす鞭を受ける少年の姿が
彼女には、「大丈夫だよ」と言っているように見えた

何度も何度も立ち上がる少年。
立ち上がるたびに、少しずつ、鞭打つ女性に近づいていく。

女性には、それが怖かった。
彼女は、憎しみや恨み、妬み、怒りを
どうすることもできず、その鞭にこめて打ち付けていた。

でも、本当はやめたかった。
こんな形で自分を存在させたくない。

そう思いながらも、

どうしてもやめることができなかった。
次々に現れる、憎しみや恨み、妬み、怒りを
どうすることもできず、鞭を打っていた。

そして、本当は彼女の中にあるものは悲しみだった。
たくさんの裏切り、絶望から生まれた悲しみ
その悲しみを隠すために鞭を打っていたのだ。

だから、少年が近づく度に、
その悲しみを見つけられるのではないかと恐れていた。

この悲しみを見つけられたとき
彼女は、自分自身を失うと思った。
その悲しみだけが、自分を支えていると思っていた。

それが、見透かされたとき
鞭を振り上げることも、鞭を持つことも
そこに立っていることすらできなくなるだろう。

本当は、やめたいと望みながらも
そうなってしまうことがとても怖かった。