『PUNK』CHAI
ねごとやSHISHAMOをはじめ、近年の日本のガールズバンドには、音楽的にも、ヴィジュアル的にもチャットモンチーの影響下にあるバンドが多いような気がする。サイレントサイレンやSCANDALなど毛色の異なるのバンドもいるが、彼女たちはアイドルグループと同様、ルックス重視の寄せ集めバンドであり、もともと作詞はしても作曲は行っていなかった。セルフプロデュースに力を入れているSCANDALは、徐々にメンバーが作曲も手がけるようになってきているが、音楽性ありきのチャットモンチー系とは明らかに成り立ちが異なる。
そうした中にあって、CHAIのオリジナリティは群を抜いている。ニューウェーブを基調に、ファンクやギターポップ、ディスコ、ハウス、ヒップホップをごった煮にしたファーストアルバムの『PINK』には度肝を抜かれた。曲によっては2005年頃に大流行したブラジル発のダンスミュージックであるバイリファンキを導入したことで有名なM.I.Aの「 Bucky Done Gun」や2000年代後半に注目されたブラジル出身のニューレイヴバンド、CSSなどにも似ているが、それはあくまでも一部の楽曲に過ぎず、多くの楽曲の出自が不明で、何の影響を受ければそうなるのかが全く分からないところが彼女たちのサウンドの最大の魅力だ。謎めいているけどポップなのでとっつきやすい。メンバーたちは不美人であることにコンプレックスを抱いているようで、やや自虐的に「ネオかわいい」というバンドコンセプトを掲げているようだが、〈かわいいひとはすぐに見飽きてしまうものよ。ちょっとブスなひとの方がかわいい部分を見つけるのに時間がかかるから見飽きない〉というような紋切り型の歌詞があったりもして、せっかくの個性を卑近なものにしてしまっているのがやや残念だ。
セカンドアルバムである本作のタイトルは『PUNK』。前作が『PINK』だったので、なんとなく『PUNK』にしたと本人たちが語っているように、パンクロックをテーマにしているわけではない。とはいえ、何でもありのミクスチュアーサウンドが際立っていた前作に比べるとアレンジがシンプルでロック色が強めのアルバムになっているのも事実だ。②「GREAT JOB」のイントロなど、「ワンオートリックス・ポイント・ネバーのヴェイパーウェイブテクノか!」と思わず突っ込みを入れたくなるようなひずんだシンセサウンドが脈絡無く飛び出すところは相変わらずだが、CHAI流のチャットモンチーをめざしたといえなくもないキャッチーさが本作の特徴だろう。それを日和ったと見るか、脱皮と見るかは聴く人の感性にゆだねられるだろう。私はこの変化はありだと思う。
前作の流れを汲む⑤「THIS IS CHAI」は、CHAIのテーマとも言うべき1曲で、ブラスをフィーチャーした中毒性の高いお祭り的なサウンドがCHAIワールドへと一気に引き込む。③「アイム・ミー」の歌詞で〈似合わないわ〉を猫語風に〈にゃあーわないわ〉と歌うところなどは、日本語の可能性にほっこっりとさせられた。⑨「Feel the BEAT」のようにコーラスが印象的な美しい曲もある。⑩「フューチャー」はブロークンジャパニーズイングリッシュが愉快な楽曲で、ラストにふさわしい郷愁が彼女たちの成長を物語っている。
あえて苦言を呈するなら、CHAIのプロモーションにおいて、その“かわいくなさ”にスポットが当たってしまう日本の音楽シーンは貧しいと思う。彼女たちにはそこを逆手にとるのではなく、堂々と音楽性のユニークさで勝負して欲しいと思う。でも、難しいんだろうな。








