ユセフ・デイズ ~黒いカレイドスコープ | Future Cafe

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「Black Classical Music」Yussef Dayes

 

 南ロンドン発UKジャズのフロントランナー、ドラマーにしてマルチ・インストゥルメンタリスト、ユセフ・デイズによるソロ・デビュー・アルバムの『Black Classical Music』がリリースされた。

 

 デビュー・アルバムというものの、2016年にはユセフ・カマール名義でリリースした『ブラック・フォーカス』が話題になり、2020年にはジャンルの壁を越えたトム・ミッシュとのコラボレーション・アルバム『What Kinda Music』がスマッシュヒット、同じ2020年にはチャーリー・ステイシーやロコ・パラディーノとともに本格ライブ盤『Welcome tothe hils』も発表している。本アルバムには『Welcome tothe hils』で共演したベーシスト、ロッコ・パラディーノをはじめ、イライジャ・フォックス(キーボード)、ヴェンナ(サックス)、アレックス・ボート(パーカッション)が参加して、厚みのあるサウンドを聴かせてくれる。

 

 『Black Classical Music』というアルバム・タイトルからはルーツ回帰的な音をイメージしがちだが、実際はマッコイ・タイナーばりのスピリチュアル・ジャズからディーゴ顔負けのブロークンビーツまで、過去と未来を癒合させた大作だ。もちろ、んストラタイーストやブラックジャズのようにどす黒いサウンドもあるが、ユセフ・デイズを聴いていると、つくずくジャズにおける多様性や進化の中心はドラムなんじゃないかと思う。ロック、テクノ、ヒップホップ、パンク、ハウスミュージック。ドラムは、あらゆるジャンルをどん欲に飲み込みながら、ジャズの概念を拡大していく。サックスやトランペットは、時として拡張し過ぎてしまったジャズに輪郭を与え、ジャズの圏内に踏みとどまらせるためのたずなとして機能しているに過ぎない。ロックかエレクトリックか分からない怪しげな音楽がジャズ足り得ていたのは、そこに、マイルスのトランペットがあったからだ。

 

 本作には、随所に親子と思しき会話が挿入されており、もうひとつのテーマである家族を伺わせる。『Black Classical Music』というテーマとあまりにかけ離れている気もするが、ユセフ・デイズにとっては両者はイコールなのだろう。どちらもルーツであり、中心でもあるという意味で。ユセフ流クラシックは、新しく、カッコいい。