Holy Tongue ~闇の祝祭 | Future Cafe

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「DELIVERANCE AND SPIRITUAL WARFARE」HOLY TONGUE

 

 

 暗がりに目を凝らしていると、前方に幽かな光らしきものが見えてきて、さらに凝視を続けると、やがて明滅する複数の光へと分裂し、集散離合を繰り返しながら、視線の先にアブストラクトな相貌を形づくっていく。

 

 Holy Tongueの『DELIVERANCE AND SPIRITUAL WARFARE』はまず、そんな視覚的な体験として我々の元へと届けられ、その暗闇体験に没入し、目を凝らした者だけに、祝祭のごとき快楽がもたらされるだろう。

 

 Holy Tongueは、イタリア人ドラマーValentina Magalettiによるプロジェクト。最小限の音で一つの世界を構築する手法は、アンディ・ウェザーウォールのユニット、セイバー・オブ・パラダイスの『ホーンテッド・ダンスホール』(1994)を思い起こさせる。『ホーンテッド・ダンスホール』もダークでダビーなアルバムだったが、漆黒がゆえに映像がくっきりと見えてくるところが互いに似ている。

 

 全体的にダビーな曲が多いが、ミニマルダブ風であったり、インダストリアル風であったり、アンビエント風であったり、ダニー・マキャスリン風であったり手数が多く飽きさせない。⑦「Joachim」、⑩「I am Here in Place Beyond Desire or Fear」ではイギリス人の Steve Beresfordがプリペアードピアノで参加。トランペッターAbraham ParkerとDavid Woottonの参加など、ジャズ的な要素もあり、コンテンポラリーなエクスペリメンタル・ミュージックとしての顔を見せてくれる。