CHELMICO〜恋バナとパーティーとモラトリアムの日々 | Future Cafe

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「POWER」Chelmico

 

 

 ふだん日本のラップは余り聴かないのだが、KREVAのシングル「存在感」を聴いて、日本語ラップも捨てたものではないと思った。“存在感がある”というコトバがひたすら繰り返されるのだが、そぎ落とされたミニマムな表現の中に、俳句のように深遠な世界が広がっている。そのリリックには幾ばくかの青臭さを感じてしまうことも否めないが、そうした点を補って余りある個性がこの楽曲の魅力だ。

 そしてもうひとつ、最近気になっているのが、MC RACHEL(渡賀レイチェル)とMC MAMIKO(鈴木真海子)によるラップユニット、Chelmicoだ。フィーメルラップグループといえば、リリカルスクールを思い出すが、リリカルスクールはあくまでもアイドルユニットであり、Chelmicoの方がトラックの完成度が高く、ラップのスキルも勝っている。それでもChelmicoとリリカルスクールには共通点が多く、たとえばKREVAのトラックに込められているような主義主張やメッセージは彼女たちのラップにはない。恋バナとパーティーとモラトリアム。メッセージ性の欠如こそが彼女たちの魅力であり、それは、「源氏物語」において政治性を無視して恋バナを展開した紫式部や、「枕草子」において現代なら差し詰めインスタ映えするものばかりをピックアップした清少納言など日本の女流文学の伝統と共鳴し合う。もっとも、メッセージ性の欠如は女子に限ったことではなく、スチャダラパーやリップスライム、ケツメイシなどの特徴でもあり、日本語ラップの主流といえるのかも知れないのだが・・・・

 セカンドアルバムとなる「POWER」では、彼女たちは残念ながらリリックを手がけるのみで、トラックはサウンドクリエーターにおまかせのようだけど、アップテンポなラテンドラムンベースが楽しい②「Player」、コモンにも劣らずメロウでジャジーな⑧「E.P.S」、トラックとラップの絡みが圧倒的に格好いい⑪「Highlight」など、バラエティ豊かな楽曲が揃っていて飽きずに聴ける。