「isolation」KALI UCHIS
参加メンバーの多彩さとジャケットの怪しさに心を揺さぶられ、久しく遠ざかっていたR&Bのアルバムをダウンロードして聴いてみた。コロンビア出身、ロサンゼルスを拠点に活動する、カリ・ウチースのメジャーデビュー作となる「isolation」がそれだ。まず、トルコあたりのローカル歌手のアルバムかと思ってしまうほど、エキゾチックかつチープなジャケットワークが目を惹く。ダウンロードして聴いているのだからジャケットなどは所詮アイコンに過ぎないのだが、やはり気になってしまうのは私が旧世代だからだろうか。赤い下着を纏った女性がアンニュイなしぐさを決めるモンドなセンスにはいやがおうにも期待が高まってしまう。
まず1曲目、イントロと表記された「Body Language」に意表を突かれた。「WE COULD BE FLYING」の頃のカーリン・クローグのような声音で歌われるミステリアスなボッサチューンで最高だ。私はこの1曲で心を持っていかれ、ジャケットのセンスと相まって傑作アルバムであることを確信したのだが、この1曲目のようにあからさまにメロウでノスタルジックな楽曲は、じつは他にはインタールードと表記された12曲目「Gotta Get Up」しか存在しない。「Gotta Get Up」もまたデビッドボウイの「スペース・オディティ」のようなミステリアスでスペイシーなサウンドではじまるトラックなのだが、このアルバム、イントロとインタールードにジャケットのイメージ通りのモンドテイストのチューンを配置し、全体の流れにアクセントを添えているのだ。アルバム全体は、R&Bからファンク、ポップス、レゲトン、スパニッシュラップ、ポエトリーリーディングまで、さまざまなスタイルを取り入れた構成で、ノスタルジックな感触の楽曲の中にコンテンポラリーな時代の空気が凝縮されている。
本アルバムの白眉ともいうべきは、13 曲目の「After the Storm」だろう。プロデューサーにはトロントのジャズヒップホップバンド、BADBADNOTGOODを迎え、ヒップホップグループ、 OFWGKTAのリーダーであるテイラー・ザ・クリエイター、R&Bバンドのジ・インターネットでギターを担当しているスティーヴ・レイシー、さらにはPファンクのレジェンドの一人であるブーツィーコリンズが参加している。豪華な共演陣に目を奪われがちだが、ここで聴けるのは流行りのサウンドではなく、普遍的な価値を纏った良質なポップスだ。さらに、7曲目の「Dead To Me」と14曲目の「Feel Like a Fool」はポップな中にサウンドプロダクトの巧みさが光るトラックだ。9曲目の「In My Dreams」はまるでノイ!のようなクラウトロック調の楽曲で、ひときわ異彩を放っているが、アルバム全体を支配するドリーミーなムードに軽妙な息吹を吹き込んでいる。他にもサンダーキャットを始め、フランク・オーシャンのプロデューサーであるオンマス・キースやケンドリック・ラマーのプロデューサーのサウンウエイヴ、アデルのプロデューサーのグレッグ・カースティン、サム・スミスのプロデューサーのトゥー・インチ・パンチ、TV・オン・ザ・レディオのデヴィッド・シーテックなど、どこに誰がどう関わっているかも判別できないほど、さまざまな才能がこれでもかと言わんばかりに集結しているのだが、オールスター的に派手な中身を期待すると肩すかしを食らうことになるかも知れない。これだけ多くのゲストが関わっていても、アルバムはひとつのトーンで統一されており、まごうかたなきカリ・ウチースの音楽になっているからだ。
