「THE EMPiRE STRiKES START!!」EMPiRE
少し前にテレビ番組「YOUは何しに日本へ?」で、日本のアイドルグループBiSHの大ファンだという外国人女性2人組がライブに参加する様子が放送されたが、BiSHが日本国内でもそれほどメジャーな存在ではないということを考えると、国籍を超えた情報のフラット化/ロングテール化が加速度的に進展している現実に驚嘆せざるを得ない。
2015年に「楽器を持たないパンクバンド」をキャッチフレーズにエイベックストラックスからデビューしたBiSHは、石を投げればアイドルに当たる地下アイドル戦国時代にあっても極めてキャラの立った個性的な存在で、ハードコアパンクやスラッシュ、グラインドコア、グランジ等を大胆に取り入れたサウンドはコアな音楽マニアの間で注目されてきた。ハードでノイジーなサウンドとアイドルの融合という点ではBABY METALを彷彿とさせるが、セカンドアルバムにおいてメタルファンに媚び過ぎてアイドルソングとしての面白さが半減してしまったBABY METALに比べ、BiSHの方がしばりが緩く、そのサウンドもストリングスを効かせたドラマチックなロック「オーケストラ」に象徴されるようにパンクに限定されないのが特徴だ。ただ、欧米のダークな文化と日本のカワイイカルチャーとの邂逅としてとらえれば、BiSHもBABY METAL同様に外国人にとって分かりやすいアイドル音楽と言えるのだろう。そのBiSHをはじめ、BiSHに先行する形でデビューしたBiS、後発のGANG PARADEといったグループを手がけているのが音楽プロダクションのWACKなのだが、所属グループの顔ぶれを見渡してみると異色アイドルのハロプロをめざしているように見えなくもない。
今年に入ってファーストアルバム「THE EMPiRE STRiKES START!!」を発表した5人組アイドルグループ、EMPiREはそんなWACKが手がける最新プロジェクトだ。楽曲制作にはBiSやBiSHのサウンドプロデュースを務める松隈ケンタも名を連ねている。しかし、BiSHに比べるとデジタル色が強く、ロック色は薄い。エンパイアというグループ名からは、90年代にATARI TEENAGE RIOTなどのユニットにも参加して過激なデジタルサウンドを追求していたドイツ、デジタルハードコアの雄、アレック・エンパイアを連想してしまうが、デジタルハードコアに近いのはむしろGANG PARADEの方で、EMPiREはやや中途半端な感じがしなくもない。とはいえ、アルバムにはBiSHの「オーケストラ」に匹敵する「コノ世界ノ片隅デ」のような名曲も収録されており、これまでのWACKのイメージとは異なる陽性の魅力をかいま見せてくれる。
WACK所属のアーティストを聴いているとオルタナ系アイドルというジャンルで括りたい誘惑に駆られてしまうのだが、こうしたアイドルのあり方に市民権を与え、オルタナ系への流れを用意し、決定的にしたのが〈欅坂46〉であると言ったら強引だろうか。ハロウィンイベントでナチスを模倣したとして物議を醸した軍服風コスチュームやアウシュビッツの強制労働をイメージしたと思われる「大人は信じてくれない」のミュージックビデオ、「サイレントマジョリティー」や「不協和音」、「月曜日の朝、スカートを切られた」などの楽曲に見られる反逆をテーマにした歌詞世界と言った具合に従来のアイドルとは一線を画するダークなイメージを打ち出してきた欅坂46は、本来であればキワモノとしてとらえられても不思議ではないグループだ。サブカルが衰退の一途をたどる今の時代、欅坂46のようなグループがメジャーシーンを牽引していることの意味はことのほか大きいと思う。もっとも、その源流にはゴシックとロリータの要素を結びつけた日本独自の文化としてゴスロリがあることを忘れてはならない。
