フレミングがペニシリンを偶然発見してから、まだそんなに時間は経っていない。そして慧眼のフレミングが乱用に警告を発していたにもかかわらず、人類は抗生物質を多用、誤用し続けてきた。最たるものは、家畜への成長促進剤としての投与である。
そのつけが、多剤耐性菌の出現である。メチシリン耐性のMASA、バンコマイシン耐性のVREなど。そして長い間、眠っていたグラム陰性菌も、頭を持ち上げて来ている。
なにしろ地球の歴史45億年で、ヒトは僅か20万年前に現れたのだが、細菌類は35億年も生きのびて来たのだ。
いま世の中はコロナ禍だが、抗菌剤が効かない世界は、はるかにおぞましい19世紀に逆戻りすることになる。
本書は、ジャーナリストの筆になるものだが、生き生きした描写は読ませる。科学者たちが、次世代の抗生物質を探して、コモドオオトカゲの唾液を採取に行くところなど、失礼ながら笑えた。