坂下勝美氏と吉原義人氏(本焼の研ぎと刃付けの巻) | ogricat-creationのブログ

ogricat-creationのブログ

趣味の写真と、包丁を研ぐことなどを書いていこうと思います。
カメラはソニーのα7Ⅲを使用しています。

前回京都の向井酒造「益荒猛男」を紹介しました。知人に贈ったのですが、お返しに山形県朝日川酒造の「響光」を頂きました。日本酒らしい味わいのお酒でした。ブレンド酒との事です!
前回から包丁の刃付けに付いて考えています。下の包丁は本焼の一竿子忠綱豪作の柳刃包丁です。
刃先に付いてカンナの刃と包丁の刃の違いに付いて考えている事を書いた事が有ります。カンナの刃をルーペで見ると傷なしです。完全にベタ刃だと言えると思います。一方包丁の刃ですが、包丁の形が影響してカンナと同じに研ぐ事は難しいと考えています。以前、日本包丁研ぎ協会の藤原理事長と会食した際に「研ぎとプレッシャー」に付いて話題にした事を書きました。その時は盛り上がらなかったとも説明しました。カンナと同じ様に包丁の刃を付ける事で刃先の研ぎを完性させたいと考えています。勿論答えなんて分からないかもしれません。
image

クレアのご飯に鯛のお刺身を切りました。

私「クレア、今回は薄造りですよ」

左側が「豪作」、右側が「一竿子忠綱」で切ったお刺身です。

私も味見をしたのですが、これくらい薄いと何時もとは違う味わいがある事が分かりました。鯛の味を濃く感じます。フグが美味しいのは薄造りが関係しているかも知れません。

私「随分、フグを食べていませんね」

妻「食べたいねフグ!」

下の写真は豪作で切ったものです。

 

こちらが一竿子忠綱で切った刺身です。

さて、切れ味ですがとても良いと思います。個人的には本焼きの切れ味が好きですが豪作も同じくらい切れます。

本焼きの包丁の場合切り刃全体がハガネで出来ています。硬い天然砥石の合せ砥を使った場合に反応が悪い事が有ります。

逆にハガネに反応する石も有ります。

では、反応が悪いから研げていないかと言えばそうとも言えない事も有るので不思議な感じです。持っている硬い石(通称)ではトクソがほぼ出ません。しかし糸刃を見ると綺麗な刃が付いている事が有りました。何度も書いていますが、

「バカと天然砥石は使いよう」だと思います。

下の写真は豪作のカスミです。地金が有るため比較的に簡単にトクソが出て来ます。

天然砥石の仕上砥石での研ぎですが最近思う事があります。

私「研磨力が小さい事は承知の通りですが、研ぐと言うよりも研磨すると言えるのでは無いでしょうか」

と思います。以前から考える事が有ったのですが、本焼きを研ぐ事で改めて頭を過ります。では研磨すると、研ぐではどう違うのでしょうか?

研ぐと考えていると目的は削り取ると成ります。減らす事が仕事です。その為にドロをコントロールします。しかし、研磨の場合は目的は磨くに近いイメージです。(合せ砥の話です)

目的が変われば使いかたも変わってきます。要するに使いかたが大切なのです。難しいのは合せ砥と言っても石によって千差万別なため石の個性を知る事が大切と成ります。

下の写真は本焼きですが天然砥石で研ぐ事でほぼ傷は無く成りました。

今日の本題です。

その本焼きを丸尾山の三本で研いでみたいと思います。同じ山ですが全て個性が違います。

右端の敷内曇は巣板系になる様です。硬めの石でステンレス系に強いイメージです。本焼きを当ててもドロは余り出ません。カンナでは使い易いのですが、包丁ではどうでしょうか。丸尾山の場合硬めと言っても私の持っている石の場合硬すぎるものは有りません。使い易いと言っても良いと思います。

真ん中の石は戸前系ですが、この中では中間の硬さです。研ぐと本焼きでもトクソが出ます。左端の石ですが戸前系でも柔らかい石です。本焼きを当てるとトクソがドンドン出て来ます。

色々と試していく事とその情報を残す事が大切だと思います。

この日は重房の尺一も研ぎ直しました。結果的には良い刃が付いたと思います。トクソが出るという事は本来綺麗になる事と思います。しかしそうとも限らない事が天然砥石の面白さです。砥石の構成は、研ぐ役割の砥粒と、柔らかい基質とで成り立っています。反応が良いとは「基質」が柔らかいために削り出されると言えます。しかしその成分や大きさなどからきめの細かさが変わるのだと思います。石によっては地を引く事も有ります。トクソが出る事が良い石の条件と成れば柔らかい石が有利と言えそうです。でも大切なのは、結果だと言えます。仕上がりの良い石が「良い石」と言われると思います。恐らく成分の構成と硬さなどは千差万別、百有れば百違うと思います。

Aさん「この石が良い石だね」

Bさん「こっちの石が好きだね」

目的と好みでも変わるのかも知れません。しかし一つだけ言える事が有ります。

弟子「何ですか」

私「万人受けする石も有るという事です」

弟子「どんな石でしょうか」

私「反応が良く綺麗な刃が付く石です」

弟子「え、、、当たり前じゃないですか?」

私「中山、丸尾山など其々に違いが有るのですが人気なのも理解出来ますね」

中山と丸尾山では石のタイプが違います。しかし万人受けするタイプでは同じだと思います。

弟子「どうしてタイプが違うのに万人受けするのでしょうか」

私「使い易いからです。中山は良い刃が付きます。丸尾山も反応が良く良い刃が付きます」

さて、その良い刃が難しいと何度も書いていると思います。

本日のまとめ

吉原義人氏をご存知でしょうか。刀鍛冶では日本を代表する方だと思います。

 

この前の記事で「坂下勝美氏」を紹介しました。坂下勝美さんの研ぎを見ていて感じた事が有ります。刀の研ぎと良く似ていると感じました。砥石の使いかたやサンドペーパーを使った研ぎですが、その背景には刀の研ぎが有るのでは無いでしょうか。刀の研ぎを知る事が包丁を研ぐカギになる様に感じました。今回の重房では刀を意識して研いで見ました。その結果、カンナの刃付けにも影響した様に思います。

弟子「ではサンドペーパーなぞ使って研いだのですね!」

私「そこが違うのじゃよ。平らな砥石を離れる事はまだ出来ないね」

弟子「そうなんですか」

プライドを捨てる勇気、捨てない勇気。

以前、糸刃はズルと考えていたことを書きました。同じ様にサンドペーパーや丸い砥石を使う事を恰好良いとは思えません。

弟子「恰好に拘るなんて師匠らしく無いですね」

私「素人の強みじゃよ。気長に出来るからね」

さて、平面の砥石を使い理想の刃は作れるでしょうか。

カンナの刃先ですが、過去最高と言えそうです。
弟子「切れ味最高ですね!」
私「とは言えないかもしれませんね」
見た目では最高ですが、理想の刃を今もこう考えています。

「表と裏が合った状態が最高の刃です。しかしその状態を作るためにどうするか、まだ分からない事が沢山有るのでは無いでしょうか」

その為に、研ぎ方を研究中です。