舞台女優のアートな備忘録【本★映画★ミュージアム】 -5ページ目

ワイルド・スワン(上)

ワイルド・スワン〈上〉/ユン チアン
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激動の中国近代史を背景に清朝末期の祖母の誕生からユン・チアンの1978年 のイギリス留学までの一族の苦難の歴史を冷静な目でとらえた傑作。文化大革命 の混乱と狂気なかに青春を過ごし一族への迫害に耐え毛沢東 の真実に目覚めていく自分自身を描いている。



中国史専攻でーす得意げというくせに、ワイルド・スワンも読んでませんでした。

穴を掘って隠れたいくらいです。教授、やっと上巻を読み終わりましたぁぁ。 ガチャピン(実は『大地』も読んでません!教授~っ)



 さて、不肖の中国史専攻学生が唯一覚えている教授の教え。

「ワイルド・スワンを歴史史料だと考えてはいけない。」

 これはあくまで、著者の家族が体験したことの聞き語りでしかない。著者が膨大な知識で裏づけした事実を加筆してはいても、それは著述の補填であり、科学的な事実である史料とは言えない。

 というものであります。


 特に、上巻は著者の祖母(清末から国民党時代)、母(国民党時代から文化大革命の始期)であり、著者が複合的に思い出を収集した内容となっているため、ノンフィクションとは厳密に言えない = 物語 、なのです。

 そこを十分に承知した上で読み進める必要があります。


 とはいえ、補填された密度の高い情報のため、非常に参考になります。特に、20世紀初期の中国の支配勢力の変遷は急激ですが、ここで「満州国→ソ連→国民党→共産党」(東北地方の場合)を具体的に把握することができます。

 中国の一般庶民がその中をどのように生きたかという人間ドラマもね。



 読めば、中国現代史の必須語句の数々がとてもよくわかります。

 もっと早くに読んでおけば、中国マニアと話すときに恥をかかなくてもすんだでしょうし、大学に残って学究の徒を選んだかもしれませんが、すべて後の祭りですねぇ。

 せめて、これからは大きな顔をして長征や大躍進について語りたいと思います。


ワイルド・スワン〈下〉/ユン チアン
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「大名から侯爵へ - 鍋島家の華」展


鍋島侯爵の大礼服
 @泉屋博古館分館。


 住友コレクションに寄贈された、佐賀の鍋島藩に代々伝わる由緒ある品を展示。大名家から侯爵家へと時代を越えて受け継がれてきた、鍋島家の文化を紹介。

 鍋島藩と言うと、化け猫か葉隠れ。・・・ってのも、メジャーじゃないんですかね?(佐賀生まれ)

http://www.sen-oku.or.jp/tokyo/program/index.html


 初・泉屋博古館分館だったのですが、きれいですね!!

 直前に大倉修古館に行った分、その落差にちょっとびっくり。しかも、ロビーにお茶のサーバーがある~ドキドキ

 

 快適さを追求したせいか、展示室は狭いですね。ま、民間蔵だとこんなもんですかね。

 その狭さゆえか、展示は期間中、1回の入れ替え制です。しかも、半数以上を入れ替えてしまう。

 パンフレットに掲載されていた大礼服も入れ替え後の展示だった・・・。

 目玉が見たければ、2月14日以降にもう一度来いってことね~。



 全体的に、代々の装束の展示です。おもに18世紀以降で、幕末から明治のものが半数。

 残念なのが、説明文が少ないんですね。

 だから、年代から類推するに、何代目の●●さんのものかな・・・という感じで見ることになります。


 だけど、「これって、鍋島さんに嫁いで着たときの嫁入り道具でしょ?」という展示品がほとんどなんです。

 衣装に実家の家紋をデザインされていますからね。

 だけど、素人の私には何家の紋章なのかわからない。

 展示の脇に「●●家から嫁いだ室のもの」って解説をつけてくれるだけで、鍋島氏の政治力の版図が知れて、ぐっと展示が面白くなったにちがいない。

 ロビーに家系図を貼ってるだけじゃもったいないよーと思いました。


 個人的には、11代(侯爵家になった初代)の直大氏&その妻栄子さんは、ちょうど鹿鳴館時代というのもあり、コスプレ衣装をたくさん遺しているんですね。その着衣写真も。

 しょうがないんですが、当時の日本人の体型には洋装は無理無理なので、仕事とはいえ、なかなか勇気がいったコスプレだっただろうな。。。と苦笑してしまいました。


幕末への序章 鍋島佐賀藩/田中 耕作
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葉隠の名将鍋島直茂/童門 冬二
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悠久の美――中国国家博物館名品展

@東京国立博物館。


北京市の中国国家博物館の所蔵品を、新石器時代から五代までの各時代の文物をピックアップして展示。

http://www.asahi.com/china07/intro/index.html

この日は、1日で4つの博物館・美術館をまわったので、ちょっと疲れました。

しかも、展示がちょっとカブってたんだよなー。

だから、この日ほどたくさん饕餮文(とうてつもん)を見た日はありません。


饕餮

とはいえ、これほど大きく、かつ様々な様式の饕餮文を見たこともなかったわけです。

饕餮は牛や羊の体に虎の牙を持つグルメな怪物で、主に殷・周時代に青銅器の意匠として用いられました。

青銅器時代の展覧会というのは地味ですから、数多い中国文物の展示でも、どちらかと言うとマイナーです。

ですから、今回の展示はかつてない規模で青銅器の名器を見るチャンスだったわけですね。


展示は、各時代からまんべんなく名品を抽出しています。

メジャーな目玉としては、兵馬俑1体と、金縷玉衣。

しかしこのへんは単独でも展覧会を行いますので、やはり見るべきは秦以前ですね。


さて、これはなんと読むでしょう。【青銅器の箱の底に刻まれた文字】


  帚

女子女 ・・・・答え:「婦好」 商王の妃の名


青銅器には製作者・所有者の名前が刻まれていることが多いようです。

「持ち物には名前を書きなさい!」ってところでしょうか。

しかも、バリバリの象形文字です。(上の「婦好」も、一見、落書きです。)

しかも、時代や地域でまったく異なった文字。


それが、時系列で展示品の文字を追っていくと、ある時代からぐっと読みやすくなるのです。

そう、秦で「漢字」に統一されるのです!!

 ~~ やっぱ、あんたエラいよ、始皇帝!!

文字の統一って、なんて文明的で画期的な行為だったんだろう。

強引で乱暴な改革だったかもしれない。けれど偉業である、と改めて思い知りました。


犀尊(さいそん)

このほか、「てん」の優れた青銅器文化など面白い展示盛りだくさんでした。

それよりもなによりも。

中国国家博物館は、中国歴史博物館と中国革命博物館が2003年に統合して生まれました。

・・・なんとっ。

なくなっちゃったのですか、歴史博物館&革命博物館。

留学中は天安門広場からよく見上げたものだけど、さみしいねえ。

ま、両方とも、抗日の温床だったから、日本人にとっては政治・教育的に無くなってもいいかもしれない?