薄暗い部屋の中で二度目の対面を果たしたバイオリンベースは、圧倒的な実在感を放っていた。
届いた楽器がどういう状態なのか、運送による傷みはどうか、などといった事を気にかける余裕もないほどだったが、初めて目にするベースという楽器がどういうものであるのか、隅々まで目に留めようとした。
ペグのところに巻き付けてある弦の、赤い糸が軟弱な感じがして妙に気になった。
しかし、改めてe弦の太さを見てニンマリする。
楽器の知識が全くなかった僕にとっては、色々なサイトで散見される情報を、中途半端に記憶しているだけのものしかなかったので、弦は太いほど良いと思い込んでいたのである。
今にして思えば、ショートスケールのこの楽器にそんなに太い弦が張られている筈もないのだが、当時は初めて見る100サイズの弦がひどく魅惑的に見えていたのである。
そこで、ハタと気付いた事があった。
一緒に注文した筈の、アーニーボールのゲージ50ー105の弦が入っていない。
どこを探しても見当たらなかった。