若い頃に梅田に勤めていたことがあり、仕事明けによく映画を見てから帰宅した。北野劇場や三番街シネマなど梅田は映画館の密集地だったが、その中でもとりわけ思い出深いのが当時でも日本で2か所しかなかった「シネラマ」のスクリーンを持つOS劇場である。
本来のシネラマといえば、3台のカメラで撮影した映像を3台の映写機で湾曲した横長スクリーンに投影する方式で、ハリウッド全盛期に登場したアメリカならではの物量にものを言わせたシステムである。「これがシネラマだ」からはじまり、最も有名な作品がヘンリー・ハサウエイ、ジョン・フォード、ジョージ・マーシャルが監督した伝説的大作「西部開拓史」。さらに「グラン・プリ」「2001年宇宙の旅」「偉大な生涯の物語」なども有名だが、これらは3台のカメラで撮影されたものではないらしい。
OS劇場(シネラマ)の特徴としては、極端に湾曲した縦横比 2.88 : 1の超横長スクリーン。ブルーレイのソフトで「スマイルボックス」というシリーズがあるのだが、こちらはシネラマ(または70mm)で撮影された作品を、シネラマスクリーンで見た臨場感を得るために湾曲させて収録したコンテンツ。例えば「西部開拓史」はこんな画面となり、家庭用プロジェクターで見るとシネラマの劇場で見た気分にさせられます。
ただし私は映画館では極端に前の席が好きだったので(画面の端が見えない包み込まれ感が良い)このOS劇場のスクリーンは前列で見ると映像の真ん中が垂れ下がって見えて逆に違和感がありました。こんな感じです。
最近の巨大スクリーンフォーマットであるIMAXが正方形に近いアスペクト比(1.43:1)ってことなので、この違和感を解消してくれるシステムかなと思います。残念ながら日本で正方形IMAXが見られる映画館は東京の池袋と、大阪のエキスポシティにしかありません。エキスポシティは1回だけ行ったことがあり、クリストファー・ノーラン監督の「インターステラー」を大迫力で楽しんできました。しかしこんなアスペクト比、ホームシアターのスクリーンで実現しようと思えばよっぽど天井の高い部屋がないと無理ですね。
閑話休題、OS劇場は残念ながら1991年に閉館してしまいましたが、その時のさよなら上映で何本かの大作映画を見させていただきました。覚えているのは以下の2本。
■2001年宇宙の旅(1968) スタンリー・キューブリック監督
これは確かにこの映画館で見るべき映画でした。古代の地球が、宇宙船の描写が、そして異空間へ突き抜けていく感覚に身震いすることしきり。ところでこの映画、70mmカメラ1台で撮影されているはずなのに、上記SMILE BOXの予告編に画面のつなぎ目が見えるのはなぜ?
■ベン・ハー(1959) ウィリアム・ワイラー監督
「テレビで何回も見てるよ」「仕事明けにこんな長い映画見てられない」と嫌がる友人を無理やり連れてOS劇場さよなら上映へ。見終わったあとに「戦車競走凄い」「あのシーンだけでも見る価値があるな」と非常に感心していた。ベン・ハーといえば戦車競走なんだけど、個人的には前半のクライマックスとなる奴隷船のシーンの方が好きだったりする。またラストの奇跡のシーンよりも、ベン・ハーがキリストに水を差しだして恩返しをするシーンの方が泣けたなあ...
日本でシネラマが復活することは恐らくないと思うんだけど、コンテンツが存在する限りはデジタル技術なども駆使して、いつかどこかで本格的なシネラマ上映が復活することを願ってやみません。




