1990年頃だったと思うが、シャープの全面広告が新聞に踊った。「100インチショック」ということで、テレビを100インチのスクリーンに投影して見られる液晶プロジェクター(商品名は「液晶ビジョン」)の登場である。
仕事明けにほぼ毎日のようにビデオで映画を見ていた私はこれに飛びついた。当時は最新型の5.1chプロロジック・サラウンドの音響システムを使ってはいたのだが、画面は20インチのブラウン管。壁一面のスクリーンというのは当時の夢だったので、休日にさっそくこの液晶ビジョンを買いに行った。
そこで勧めてもらったのが、シャープからOEM供給されていたという三菱の液晶プロジェクター。型番を今調べてもわからないのだが、上の写真のシャープの液晶ビジョンとほぼ同じようなカタチをしていたと記憶する。購入価格は20万円ぐらいだっただろうか。キクチのスプリング巻き上げ式のビーズスクリーンも同時に購入したのは、さすがに6畳の自室には100インチが入らず、80インチをチョイスした。テレビがハイビジョンになる前の時代だったので、解像度はNTSCのアスペクト比4:3。部屋に入れるとほぼ壁一面がスクリーンとなった。
実際に投影してみるともうひとつ問題が起こった。画面サイズはズームレンズで変更できるのだが、部屋の奥行きが足りずに80インチまで画面が広がらないのだ。さんざん考えたあげくに、レンズの前に45度の角度で鏡を置いて、プロジェクターをスクリーンに対して横置きにすることで投影距離をかせいで無事80インチの画面を実現した。背面投射を想定して、プロジェクターに左右反転機能が付いていたのが良かった。
NTSCなのでなかなか荒い解像度ではあったが、映画を見るのが楽しくて仕方なくなった。映画は映画館で、と当時はよく言われたが、古い映画や劇場未公開作品も、スクリーンで見られるというメリットが大きい。また「2001年宇宙の旅」や「シャイニング」など、大画面での鑑賞を前提として作られた映画ではこのスクリーンで見てもその意図を感じられるのは大きかった。結婚した1994年まではこの大画面で映画を楽しみ、結婚したあともペースは減ったが週末などに大画面でホームシアターを楽しんだ。
子供ができてからはほとんどスクリーンで映画を見なくなり、そのうちにプロジェクターが寿命を迎えて廃棄した。スクリーンによるホームシアターはすっかり忘れていたのだが、2006年に自宅を新築したのを機会にリビングに電動スクリーンを入れることにした。サイズは、当初に入れられなかった100インチを飛び越えて120インチ。写真はスクリーンを降ろしたところだが、奥に置いた55インチのテレビと比べたらサイズ感をわかってもらえるだろうか。縦横比はハイビジョン対応の16:9となった。
その時に購入した映写機はパナソニックのTH-AE900という機種で、パナソニックがプロジェクターから撤退した今でも現役だ。720pの解像度で最新のフルハイや4Kプロジェクターには見劣りするかもしれないが、NTSC時代を知る身としては十分に美しい画面を楽しめる。
映像ソースもプロジェクター投入時はVHSビデオやレーザーディスクだったものが、DVDやブルーレイへと変わり今はネット配信が主流となった。左のトレイの中にはAmazon Fire TV Stickと音声のセパレーターが組み込んである。サラウンドアンプも寿命が来たので現在は2chのオーディオアンプと天吊りスピーカーだけで楽しんでいる。次から次へと新しい音響システムが登場するので、追いかける気もなくなった。
映画を見るのはいくらテレビの画面が大きくなったとしても、部屋を暗くして見るスクリーンにはかなわないのではないか、と勝手に思っている次第である。




