ウイスキーなどのお酒業界では、特別に数量限定商品として一部の皆さんにだけ販売しますという謳い文句で出回る“プライベートストック”なるものがあります。要するにウイスキー業者が、自分たちが作ったものの中から特に出来が良い樽だけは売りに出さずに“自分たちが飲むため用”に確保したもののことをいいます。製造者が隠すくらいだからよほど美味しいのだろうと高額な限定商品に誘われるのは思う壺のような気もしますが、人間の欲などそんなものです。そもそも製造者が出来が良いから客に回さず自分たちで飲むために隠そうなどという発想が本当ならいかがなものかと思うし、そこまでしてガメったものが何故世界中の市場に堂々と出回っているのか考えれば単なる広告宣伝戦略なのはすぐにわかるのですが、一部の選ばれた者だけがコッソリ手に入る、いわゆる“レア物”という言葉には弱い人もいることでしょう(わたしもその1人です)。
こういったプライベートストックなるものはどの業界でもどの商売でも必ずあるものです。レストランなどでもメニューに載っていない常連だけしか知らない裏メニューがあったり、魚屋さんなどでも本当にイキがよい魚は店頭に並ばずに隠してありますよね。不動産屋さんも本当に家賃が底値の物件を隠し持っていますよね。当然、人材派遣会社にも隠し案件はあります。皆さんは“非公開求人”という言葉を見聞きしたことがありますでしょうか。
基本的にプライベートストックの目的というのはどの業界でも、
①常連やお得意さんのために特別に隠しておくいわゆる忖度が目的
②自身や親族が特権で入手し優越を享受することが目的
③表に出したくても出せない訳アリ商品であるため
④単なる広告宣伝で集客や価格釣り上げが目的
の大体4パターンに分類されます。
人材派遣会社や人材紹介エージェント系の会社の場合ですと④が殆どです。隠す必要性がそもそもないですから。クライアント企業が水面下で秘密裏に採用行動して欲しいという要望(いわゆる③のケース)も勿論ありますが、非公開求人が70%ですとか80%ですとかいう謳い文句をWEBでよく見かけますが、普通に考えてビジネスでそんなことはありえないでしょう。
しかし、派遣会社のホームページを見て気に入ったお仕事がないなと思ったときに、非公開求人がたくさんありますと言われれば期待しますよね。もっと条件がいいお仕事が隠されているのではないかとワクワクしてしまいますよね。掘り出し物に出会えるのではないかと甘い想像をしてしまいますよね。とりあえず登録してみようかなとなりますよね。それがまさに、どの派遣会社・紹介エージェントもが謳い文句にしている「非公開求人」の正体であり思う壺というわけです。実際は非公開求人なんて殆ど所持していないのが一般的です。そもそも一般公開していないで大事に隠している案件がそんな簡単に手に入るなんて虫の良い話が世の中あるわけはないということです。
非公開案件がたくさんありますと謳うメリットは他にも、少ない仕事数しか所持していないときにたくさん所持していると誤魔化せる効果だったり、不人気案件にレア感を出したり、他にも色々効果・メリットはあるのですが業界裏側を暴露したいわけではないので、あとは秘密にします。
オフィスタの内情も話さないとフェアじゃないので少々申し上げると、オフィスタは非公開求人は有るか無いかと言われれば「あります」。割合的には全体の10~15%くらいではないでしょうか。所持している案件は、ほとんど公開しているということですが、そんな中で非公開案件にしている理由は、
①クライアントから水面下で動いて欲しいと頼まれた案件。これは前任者がまだ就業中で、その者のことも考えて、表立った人材採用活動ができない場合が多いです(例えば、3カ月後に辞めてもらうつもりだが、今社内で求人広告を出したり面接などしていたら怪しまれるためとか)。
②やはり、公開されている求人広告以外にも隠れたお仕事があると期待して欲しいので、いくつかはストックしてあります。ただ、上記①と被っている案件が多いのも事実。実際にはストックなんて殆どないのに「非公開求人たくさん」とか嘘の謳い文句で集客する悪質な手法が業界内で蔓延っていますが、オフィスタでは有るものはある、無いものはないとしか謳いませんのでご安心(?)ください。(嘘とは決めつけないが、“たくさん”と謳うからには最低でも全体の50%以上は非公開が占めていなければ広告倫理上いかがなものかと思ってしまうのだが…)
③広告費を抑えるために公開案件を絞ることはあります。時期にもよりますが、求人媒体などに公開すれば費用が発生しますので敢えて非公開に回したり、連休前に公開すると応募多数が見込まれる場合などは作業対応を考えて、敢えて公開せず時期をずらして公開ということはあります。
④急募で広告を出さずにスピード重視で早い者勝ち制のときなど。1~2時間以内に希望者を募りたい場合などは広告を出している時間もありませんから、非公開のままで一部の特定の人にだけ情報を伝えるという、(いわゆる忖度なのだろうか?)手法を使うことはあります。この場合に情報を受け取れる一部の優遇を受けられる人達というのは、もちろんオフィスタの「お仕事メール便」を読んでいる方のことです。
⑤最近、非公開案件を徐々に増やし始めたもう一つの理由はコロナの影響です。少しでも早く就業しないと困るという方も世の中には大勢います。星の数ほどある求人の中から自分に合ったお仕事に出会えるかどうかなんて運次第です。見つけたときには運悪く終わってしまっていたなんてときに、「何かお仕事はないでしょうか」という問い合わせも日々増えてきているのを実感します。そこで、こういう方々のために多少はストックしておく必要性があるため、というのが理由です。
基本原則として、オフィスタはできるだけお仕事情報は包み隠さずオープンにしていこうとは思ってはいますが。
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